黒柳悦郎は走ったり走らなかったりする

織姫ゆん

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12章 十二日目 不審者情報

12-5 いつもと違う振り付けな体育の授業

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「ワンエンツーエンスリーエンフォーエン」

パンパンと手を叩きながら、クラスメイトの津下(つげ)くるみが拍子を取る。
今日最後の授業は体育だった。

「はい、じゃあ今のところをもう一回ね」
「ちょ、ちょっと待った。津下。少しでいいから休憩」
「えー、まだ全然じゃん。っていうか黒柳クン、全然踊れない系? 振り全然入ってないでしょ?」
「ぐふふ、さては悦郎。朝から咲にしごかれてるからスタミナ切れてるでしょ」
「はあ、はあ。わからん。だが少しは影響あるかもしれん?」
「んー? 白鳥チャンにしごかれてる? どういうこと?」

授業の内容は創作ダンス。男女一緒の授業でいくつかに班分けされた俺たちはその中でも一番踊れる津下に指導を任せていた。

「あ、うん。女の子に腕相撲で負けたから、ちょっと鍛えようと思って」
「あははっ。なにそれなにそれ。超興味ある。教えて教えて」

咲と緑青、津下の3人で女子トークがはじまってしまう。
トークテーマは俺。
結果的に休憩にはなったからいいが、俺をチラチラ見ながらクスクス笑うのはやめて欲しい。

「はい、じゃあそろそろ復活した? もっかいはじめからいくよ? まずは私が踊るから、ちゃんと見ててね」
「うーっす」

俺たちの手本になるように、津下が一人で最初から一通り踊ってみせる。
それほど背は高くないが、長い手足がその動きを綺麗に見せる。
ツーサイドアップにした髪が左右に揺れ、毛先に入れた緑のインナーカラーが体育館の照明を浴びてキラキラと輝く。

「うまいよね、つしたちゃん。イベントとか出てるらしいよ?」
「イベント? なんだそれ。ダンスバトル的な?」
「そういうのじゃなくて。んー、なんだろう。ほら、若竹さんのライブみたいな感じなのがあるんだって」
「へー」

俺と咲、ヒソヒソと話しながらも目は津下から離さない。
なにしろあいつが踊り終われば、今度は俺たちがそれをやらなければいけないんだから。

「はい、おしまい」

ピタリと動きが止まり、綺麗なポーズを決める津下。
俺たちは思わず拍手をする。

「おー」
「さすがつしたちゃん」
「かっこいいな」

さすがに体育の授業中はなにも食べていない砂川も素直に津下のうまさを認める。

「じゃあ今度はみんなの番ね。できなくても全然気にしないで、最後までとにかくやりきってみて」
「了解」
「じゃ、はじめるよ」

パンパンと手拍子でリズムをとりはじめる津下。
そして俺たちは、津下の号令に合わせて身体を動かし始めた。

    *    *    *

「うーん、なんでそうなっちゃうかなあ」

津下が頭を抱えていた。

「申し訳ない」

その原因は俺の踊り。
何度やっても、なぜかよさこいっぽくなってしまうのだ。

「リズムの問題かなあ」

俺も理由はわからなかったし、津下にもわからないようだった。
そして皮肉なことに、このグループは俺以外はみんなそこそこ踊れるようだった。

「砂川クンはリズム感いいよね。さすがドラマー」
「まあね。振りはイマイチ入ってないけどね」
「緑青チャンはなんか面白いね。動きに妙な溜めとかあるっぽいのは、わざとやってる感じ?」
「体格の違いからくる旋回半径の差があるから、そのあたりを合わせるためにはああするのがいいと思った。まずければ直す」
「ううん。いい感じだよ。全然OK」

グッとサムズアップする津下。
緑青との相性は良さそうだ。

「ソルフェリーノチャンは動きが優雅だよね。なんか、同じ動きなのに違うジャンルのダンスっぽい」
「バレエやってたからでしょうか」
「あ、そうなんだ。それ以外は?」
「あと、社交ダンスを少し。付き合いとかありましたので」
「なるほどー」

っていうか、麗美を名字で呼ぶやつはじめて見た。

「咲ちゃんはまあ……普通だよね。いい意味で」
「あははー。そうだよね。自分でもそう思う」
「で、問題は……」

津下が再び俺を見る。

「んー、なんで黒柳クンはああなっちゃうのかなあ。全部合ってるはずなのに、なぜかよさこいなんだよねえ」
「俺にも謎だ」
「いっそのこと、それを味にしちゃおうか?」
「なるのか?」
「ならないかあ……」
「だよなあ」

そうして、体育の時間は過ぎていった。
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