黒柳悦郎は走ったり走らなかったりする

織姫ゆん

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18章 十八日目

18-8 いつもと違うレジ

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「いらっしゃいませー」
「あ。えーっと……若竹のとこの子」
「んもー、いい加減名前覚えてよ」

学校帰りにいつものコンビニに寄ると、レジに立っていたのはいつもの若竹ではなく、若竹のところのグループの子だった。
名前は忘れたが、ちょっとタレ目気味で俺のことを上目遣いで見つめてくるのが妙に印象的な子だ。
あんまり視力がよくないのかもしれない。

レジの子はまだ何か話したそうにしていたが、ちょうどお客さんが来たので俺はその場を離れる。
そして商品を物色していた咲と麗美に合流した。

「はい荷物係」

当然のごとく、カゴを渡される俺。
俺の方もなんの抵抗もなくそのカゴを受け取る。
とはいえそこに商品が次々に放り込まれたりとか、そういうのはない。
なぜなら、別に何か目的があってコンビニに来ているわけではないからだ。
なにかいいものないかな、くらいの意識しか俺にも咲にも麗美にもなかった。
まあ、そのいいものの基準は個々でだいぶ違うだろうとは思うが。

「あ! 新商品出てました! 試してみないと!」

麗美が複数のアイスをカゴに入れていく。

「ふふふ。これ、美味しそうですね。バターサンド味のアイスって、どういう感じなんでしょう」

某ガキ大将っぽいアイスはまた無茶な味で勝負してるみたいだな。
でも、これは意外に美味いかもしれん。
一方の咲は新商品には目もくれず、ド定番なお菓子をいくつかカゴに入れていた。

「咲は新しいのには手を出さないのか?」
「私は誰かが試してみてからかなー。ちーちゃんとか」
「あー、緑青も新商品好きだよな」
「ふふふ。私もよく咲さんに聞かれますよ」
「うん。そうやっていろんな人の感想聞いてから、私は買うかどうか考えるの」
「で、そうしてるうちにいつの間にか棚に並ばなくなってると」
「あははー。よくある」

そんなことを話しながら、俺たちはレジ前へと戻ってきた。
すでに先程のお客さんは会計を終えて店を出ていて、名前を覚えてない若竹のとこのグループの子は手持ち無沙汰のように頬杖をついて俺たちのことを待っていた。

「話の途中だったのに行っちゃうなんて悦郎くんいじわるー」

低い位置から上目遣いで俺のことを見上げているあず……あっ、思い出した。
たしか、なんとか小豆さんだ。
頬杖をついたまま俺を見上げているなんとか小豆さんの顔にぶつからないように、半分こちらにはみ出しながらレジカゴをカウンターに乗せる。

「レジお願いしまーす」

いつもより若干刺々しい感じがする咲の口調。
逆サイドに立つ麗美からも、どこか重々しいオーラが漂ってきているような気がする。

「はーい」

身体を起こしたなんとか小豆さんが手慣れた様子で商品のバーコードを読み取り、レジを通していく。

「771円になりまーす」

財布からお金を出そうとした俺を麗美が遮る。

「今日はコレを使わせてください。一度やってみたかったんです」

そう言って俺に見せたスマホの画面には、なんとかペイの支払画面が表示されていた。

「あー、キャッシュレス決済か。俺もそのうち試してみないとなー」

いろいろ規格が乱立してて、正直どれを使えばいいのかがよくわからない。
まあ、わかるものに手を出してみればいいのだろうが。

「こちらでお願いします」
「はーい」

麗美が提示したスマホの画面を、なんとか小豆さんがバーコードリーダーでピピッと読み取る。
たったそれだけで終了。
確かに便利だったが、なんとなく買い物した気がちょっとだけしなかった。

「あとこれどうぞー」

なんとか小豆さんが何かを差し出してきた。
くじ引きとかキャンペーンでもやってたかな? と思いつつそれを手に取ると、それは何かのイベントの通しチケットだった。

「え?」
「それ、私たち出るから見に来てね」

パチっとなんとか小豆さんがウインクをしてくる。
左隣に立つ咲が拳を握ったように見えたが、気のせいかもしれない。
そしてそのチケットを麗美がちらっと覗き込んで、行く気の失せるひと言を言ってくれた。

「あ、それ香染さんも楽しみにしてるみたいです。光る棒を何本も用意して、高まる~とおっしゃってました」
「そうか……香染もか……」

コンビニを出ながらそのチケットの文面を確認する。
スーパーアイドルフェスティバル、か。
確かにアイツが気合を入れそうなイベントだ。


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