黒柳悦郎は走ったり走らなかったりする

織姫ゆん

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19章 十九日目

19-2 前はいつもだった歩きの通学路

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「いてててて……なんでこんなとこ痛いんだ?」
「あれだよほら、昨日のプール掃除。いつも使わない筋肉、使ったんじゃない?」
「あー」

いつもの時間に家を出た俺と咲は、合流した自転車の緑青とともに、いつものようにランニングをしながら学校へと向かうはずだった。
だが……。

「もしかしたら日焼けもあるんじゃない? プールの底磨いてるとき、上脱いでたでしょ、男子全員」
「いやでもこれ日焼けの痛みか?」
「日焼けプラス筋肉痛ってところかな」
「うー」

いつものようにジャージで家を出て、緑青にカバンを預けて走り出そうとした。
だが、背中の張りと痛みがそれを許さない。
もちろん無視して走ろうと思えばそれもできただろうが、普段そんなとこが痛かったりすることがないため、ビビってしまった。

「咲はなんともないのか?」
「ほら、私達は基本的に荷物の片付けとか、ホースで水かけとかだったから」
「そういえばそうか」

昨日のプール掃除。
男子と女子で明確な役割分担がなされていた。
頭を使わずに身体だけ使えばいい作業と、頭を使って連携した方が効率的に行えるような作業と。
前者に男子の大部分。
後者に残りの男子と、女子のほとんどが投入されていた。

「っていうかあの割り振りしたの、春日部だよな? あいつそんな役割とか考えて頭使うタイプだったんだな」
「なんか、アメフトとかやってたんだって。司令塔だったらしいよ? 噂だからホントかどうか知らないけど」
「ぐふふ。私はラグビーって聞いた」
「どっちだよ」

アメリカンフットボールとラグビー。
確かによく混同されることはあるが、どうしてそこがごっちゃになってしまうのかが俺にはよくわからない。
あんなに見た目で違うのに。
まあ、春日部の噂については別の理由があるだろうけど。

「っていうかもしかして咲」
「ん?」
「あの脳筋に見える春日部も、もしかしたら高学歴なんじゃないか? 美沙さんみたいに」
「それはそうでしょ。曲がりなりにも先生なんかやってるんだから」
「あ、そうか」

炎天下の中で駅に向かって歩きながら、俺たちはそんな話をしていた。
そのとき……。

「あ!」

俺はあることに気づき、思わず声を上げてしまった。

「な、なによ急に」
「駅通り過ぎてる」
「え?」

ここ最近の走っているときのクセで、俺たちは最寄り駅を通り過ぎて線路沿いに次の駅に向かって歩き始めてしまっていた。

「もしかして、気づいてなかったの?」
「え?」
「ぐふふ。知ってて通り過ぎたんだと思ってた」

咲も緑青も、いまさら何を言ってるんだろうという顔で俺を見ている。

「もしかして……2人とも気づいてたのか?」
「当たり前でしょ?」
「今日はこのままウォーキングで学校まで行くのかと思ってた。ランニングの代わりに」
「いやいや、間に合わないから」
「それもそっか」
「次の駅で電車に乗ろうぜ」
「ちーちゃん自転車どうする?」
「悦郎に乗っていかせる」
「は?」
「背中痛くても、自転車なら平気」
「いや確かに平気かもしれないけどよ」
「じゃあ任せた」

緑青は自転車から降りると、それを俺に押し付けてきた。

「お、おいっ」

倒れないようにそれを支える俺。

「可哀想だから荷物は持ってってあげるね」

咲が前カゴに入っていた俺と咲のカバンを持って走り出した緑青のあとを追っていく。

「そういえばそうか……走るとツラいのは俺だけだったか」

ピリピリと痛む背中。
肩周りも熱を持った感じで、動かすと痛い。

「ちぇっ。しょうがねえか」

自転車にまたがり、ペダルを漕ぎ始める。
ぶつくさ文句を言っていたものの、肌に感じる風はなかなかに気持ちが良かった。
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