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第3章 獣人族の町〈ヒュユク〉

第39話:依頼の旅【後編Ⅱ】

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「いやー、すまない。息子の前だと、常に国王であることの荷が下りないんだよ」

急に軽くなる国王。だいだい言っている事は理解できる。

皇太子は次期国王である。その故、皇太子の前では国王と言う物を国王自身が教えなければならない。

「それはさておき、本当にあれに乗るのか?」

国王が顔を青くして指しているのは豪速に走っているコースターだった。

まあ、初見だとそうなるよな・・・・・・。

「はい、大丈夫です。死にはしませんから」

何回も試運転を重ね、実際に俺が何度も乗っているので問題はないだろう。

俺はジェットコースターの安全性に自信を持ち、二人の背中を押して、コースターに乗せたのだ。

数十秒後。

もの凄い甲高い悲鳴とまるでサンタがソリに乗って走っているのかと思うくらい愉快な声が聞こえてくる。

コースターに何回も乗った俺が言えることは、その絶叫の程度とそこに映る景色のみ。

ジェットコースターが一番最初の頂点に達した時には、ヒュユクの隣にある、小国の街並みを見ることが出来る。

そして下降した後、次の頂点にはイルーヴァタールの町とその背後にある鉱山。そこでその鉱山の禍々しさがさらに恐怖をそそらせる。

最後は、アルフの大樹とそれに並ぶ木々、自然あふれる絶景だ。さらに自然を感じてもらうとアルフの方角つまり東に下降した後すぐにヒュユクの北側にある森を走るのだ。もちろん、魔除けを付与してあるので安全性は完璧だ。

恐怖と絶景の二つのコンビが恋愛に発展させるのにはちょうどいいのだ。

しかし、海が見えない事が残念な点だ。北側の森は広く観測されていない場所もなくはないそうだ。

東には俺とロビンが出会った海があったが、大樹で見えなくなっている。

南も同様で鉱山で海が見えない。そもそも鉱山の先に海があったとしても色は鮮やかではないとトーリンさんが言っていた。

西には俺たちが行くべき場所が沢山あるのだ。海なんて見えるわけがな。

それを解決するのがあの鉄の乗り物。メインは最後に取っておくとしよう。国王たちの中もあれでさらに深まるだろう。

とあれこれ考えているうちに国王と王女が帰ってきた。

「お疲れ様です」

「実に素晴らしかった。次は何を紹介してくれるのだ?」

ウキウキが溜まらない国王だった。

「次は女性に火が付くと自信がある物です」

そこに案内したのはビニールハウスのような建物内。そこに広がっているのは色鮮やかな花畑や何の変哲もない木や希少な植物、数多くの種類が咲いているのだ。

しかし、この世界の人には初めて見る花が多くあるだろう。

なんせそれは日本の固有の花があるからだ。代表的なのは桜、菊、梅、藤など沢山の木々から花を咲かせているのだ。

「見たことのない花があります」

当然、王女は子供みたくハウスに作った道を先先と行ってしまう。

そして、このハウスで売っているのが梅ジュースである。お土産として梅干しもあるのだ。

梅ジュースは梅酒に近い飲み物で子供から広い範囲で飲んでもらえるのが利点である。もちろん、梅酒も売っている。

梅の酸っぱさが体中にしみわたり、その場で元気が溢れるだろう。なんせ俺のばーちゃんから教わった方法で作っているからだ。

王女もおいしそうに飲み干していた。梅自体が健康食品だからいくら食べても大丈夫。

国王からもいい評価を貰った。

それから各場所を案内する。

そして俺の魔法で作った幽霊が潜むお化け屋敷の後、最後のメインに行こうとしているとき王女に手招きをされた。

どうやら来る時が来たようだ。

「どうかしましたか?」

「そ、その、陛下がいつもより、輝いて見えるの。何かしたの?」

あ、この人、極度の鈍感だ・・・・・・。

自分がおかしいのではなく国王がおかしいと思うあたり鈍感としか言いようがない。

「それはたぶん、国王陛下を異性として意識しているからだと思いますよ」

沈黙が流れる。

王女の顔を窺う限り思い当たる節があるようだ。例えばジェットコースターとか、お化け屋敷とか。

そうこれらは全て俺の計算通り。日本でもよく知られている吊り橋効果というものだ。

さぁ、仕上げと行きますか。

「最後はこれです!」

目の前に広がるのは鉄の乗り物。その乗り物は数多く。ゆっくりと回っている。そう観覧車だ!

もう、日が暮れてそろそろいいタイミングであれが顔を出しそうだ。

俺は急いで二人のゴンドラに乗せてドアを閉めて送り出す。

俺は観覧車の下で、望遠鏡で二人の様子を窺う。
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