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第2章 夏

10. (Rena side)

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子どもの頃から、
世界は音で溢れかえっていた。

自然の音、
機械の音、
時を刻む音、

鳥のさえずりや動物の声、誰かの喋る声さえも
全てが『音』として私の中に入ってくる。

しんとした部屋でも、
風の音や空調の音など何かしら音がつきまとう。

不快な音で泣いていると、
パパが言った。

『自分の心で聴くようにすれば、好きな音だけを選んで聴けるようになるよ。全てを聴こうとしなくていいんだよ』

その言葉を、
私は長らく忘れていた。



目の前にある、大きなお屋敷の前で伶と2人、佇んでいた。
いつもここにくると、緊張する。
それで目の前の門の脇にある、インターホンを押せずに固まっていた。
「…よし、そろそろ行くか」
2人で気合を入れて、伶がそのインターホンを押してくれた。
『伶様、玲奈様、お待ち致しておりました』
そんな声が聞こえて、門が自動で開いた。
屋敷に入る前から居心地の悪さを感じて、玄関まで向かう足取りが重たい。
それは伶も同じようで、ものすごく微妙な表情をしていた。
ようやく玄関にたどり着く…というところで、ドアが勢いよく開いて、驚いて立ち止まってしまった。
「伶くん!玲奈ちゃん!!よくきたねー!!」
中から飛び出してきたオジサンが、私と伶にガバッと抱きつく。
「おっ伯父さん、お久しぶりです…」
伶が挨拶してくれる。
「2人とも、たまには遊びに来てくれたらいいのに!さあさあ入って」
家の中に招き入れられると、執事さんと数人の使用人たちが私達に頭を下げてくれた。
「まずはお茶にしよう!」
伯父さんにそう言われ、応接間に通される。
ふかふかのソファに座ると、すぐさまお茶とお菓子が準備された。
「外も暑いし、冷たい飲み物を用意したけれど、よかったかな?」
それにうなずいて、お茶を一口頂いた。
「…!おいしいっ」
「だろう?きっとそう言うと思ったんだ!瑠華もコレが好きだから」
そう言って、テーブルを挟んで向かい側に座っている伯父さんが笑った。

ここは、ママの実家。
日本に来るまで知らなかったんだけど、ママはどうやらいいお家柄のお嬢様だったらしい…。
高校生時代に私達を身籠って、駆け落ち同然でドイツに渡ったと、日本に来てから初めて聞いた。
目の前にいるのは、ママの腹違いのお兄さん。
何だか事情が複雑そうで、ママもあまり話したがらないから詳しく聞いたことはない。
ただ、伯父さんとママは歳も離れているからか、とても仲良し。

「旦那様、準備が整いました」
世間話をしていると、執事さんがやってきて、伯父さんにそう告げる。
「じゃあ、お願い」
伯父さんがそう言って頷くと、使用人たちがさっと室内に入ってくる。
「では、伶様はこちらへ。玲奈様はあちらへ」
伶と私は、それぞれ別々の部屋に連れて行かれた。

コトの始まりは、私がお誕生日プレゼントに浴衣が欲しいなって言ったこと。
既製品でよかったのに、ママがせっかくだから仕立てましょうと言い出して。
それで仕上がったのが数日前だったらしいんだけど、ウチに届けてもらっても着付けができないから…と、ママが実家へ届けるよう頼んでいたらしく。
それで花火大会の当日は、ママの実家へ行ってねと言われていた。
私たちはごく普通の庶民の生活をしてきたから、ママの実家は苦手で…。
緊張してされるがままになっていたら、あれよあれよという間に、髪も着付けも、全部キレイにしてもらっていた。
「まあ~、お似合いですこと!」
姿見でどうなっているのか見せてもらったら、ママがいつも"ばあや"と呼んでいる、睦さんが私にそう言ってくれる。

初めて着た浴衣は少し苦しいけれど、ママが選んでくれた帯とも合っていて、すごくキレイ…。
鏡に映る自分が、いつもの自分と別人みたいに見えた。
睦さんに、着崩れしてきた時の簡単な直し方を教えてもらう。
「さあ、参りましょう」
そう言われて、もといた応接間へ戻った。

…伶、なんて言うかな。
少しドキドキした。
応接間のドアを開けてもらって、中に入る。
そこには浴衣姿の伶がいて…。
「あ、玲奈」
気づいて私を呼ぶ、その表情と声にドキンと心臓が音を立てた。
「れ…伶も着るんだったっけ…?」
何を言っていいか分からず、それだけを口にする。
「ああ~…。母さんが手配していたらしくって」
「玲奈ちゃん!!かっ、かわいいね!キレイだね!」
伯父さんが飛んできて、私のまわりをぐるぐる回る。
「伶くんも似合ってるね!よし!写真を撮ろう。瑠華に送らないとっ」
伶に見とれて二の句を継げなくなっていたから、伯父さんが騒いでくれるのは、心を落ち着かせるのに有り難かった。

「…そうだ。今日はお友達と合わせて6人でよかったんだよね?」
散々写真を撮られた後、伯父さんにそう聞かれる。
「うん、そうだけど」
伶が答えると、伯父さんがにっこり笑った。
「僕から2人への誕生日プレゼントで、屋形船を貸し切っているから!時間までにみんなで桟橋にきてね」
「……え?」
私も伶も固まる。
ヤカタブネ?ってナニ。
「あっ、メールを送っておこうね。僕も時間にはそこにいるから」
意味が分からずポカンとしている間に、私と伶のスマホが鳴って、伯父さんからメールが送られてきた。
「ではホラっ、2人をお友達との待ち合わせ場所まで送って行って!」
「かしこまりました。さあお二方、どうぞ」
伯父さんに見送られて、車に乗せられる。
そしてママの実家を後にした。

車が出発してから、少しして伶が口を開いた。
「とりあえず、透と紗弥に連絡しないと…」
そう言って、伶が透に電話をかける。
その間、私はさっき伯父さんが送ってくれたメールを開いた。
ヤカタブネ…船、クルージングのこと?
船で花火を見れるって事??
伶の方を見ると、ちょうど電話を切ったところだった。
「なんか透、喜んでた。紗弥には透が連絡してくれるって」
「ねえ、伶、コレ見て。さっき伯父さんが送ってくれたメール」
2人でスマホの画面を覗き込む。
「…すごいプレゼントもらったみたいだな…」
伶がそう呟いた。
「そーだよね」
そう答えたところで、伶と目が合う。
一緒にスマホ覗き込んでたから、距離が近くて。
「ひゃあっ」
慌てて離れた。
「…そんなに驚かなくても」
「だ、だって…」
さっきまで他のことに気を取られていたけれど、急に伶を意識してしまった。
いつもと違う格好だし、浴衣って…なんかすごくドキドキするんだけど!?
「玲奈」
伶が名前を呼ぶ。
でもその顔は、私とは反対の窓の外を向いている。

「言いそびれてたけど。…すごく、可愛い」

どんな表情なのかは見えないけれど、伶、耳まで赤い。
嬉しい…!
そう思うと、心臓がドキドキうるさい程に鳴る。
伶にまで聞こえるんじゃないかなってくらい。
でも。
でも今、すごく伶に触れたい…。
シートの真ん中、そこに置いてある伶の手をそっと握った。
窓の外を見ていた伶が私の方を見て、目が合う。
伶が優しく微笑んで、手をきゅっと握り返してくれる。
あとは2人とも何も喋らず、ただお互い別々に窓の外の景色を眺めた。
真ん中で繋いでる手だけが、温かくて。
心臓はずっとドキドキしていた。


みんなとの待ち合わせの場所まで送ってもらって、車を降りる。
少し歩くと、透とマユちゃんを見つけた。
「伶!玲奈!!」
透が気づいて手を振ってくれる。
「ごめん、待った?」
「いや、オレたちも今着いたとこだよ」
伶と透が喋ってる間、マユちゃんはサッと透の後ろに隠れてしまう。
「透も浴衣着たんだね」
「篤士のだけど、奈々子に着てけって言われて。玲奈、浴衣姿チョー可愛いねっ」
「ありがとう」
透に褒められて、嬉しくて笑った。
「ねー、マユちゃん」
透の影に隠れるマユちゃんに声をかけると、透が困ったように笑う。
「さっきから、やっぱり帰るって言うんだ。ねぇマユカ、隠れてないで出てきてよ」
「恥ずかしい」
「何で?こないだ伶と玲奈には会ったじゃん」
「アタシ似合わないカッコしてる…」
「すっごい似合ってるし。マユが1番キレイだよ。ほら…」
透に優しく背中を押されて出てきたマユちゃんは、透が言った通り、浴衣がものすごく似合ってて、びっくりするくらいキレイだった。
しかも、その照れてる表情がすっごい可愛い。
「かわいいいぃぃ…」
たまらず、心の声が漏れてしまう。
それと同時に。
「キャー!!!」
そんな声が聞こえてきて、思わずそっちを見る。
「こんな絶世の美女が透のカノジョなの!?」
「あ、紗弥」
私がそう言うと、マユカさんが隣に立つ透を見上げる。
「学校のお友達?」
「うん。前に話した、紗弥だよ」
透の返事を待ってから、マユちゃんは私と紗弥の方へ寄ってくる。
「アタシ、紗弥もスキ」
紗弥と一緒にマユちゃんに抱きしめられた。
玲奈も紗弥も浴衣カワイイ、ってマユちゃんに褒められる。
女子トークをしていると、伶が口を開いた。
「そういえば、紗弥、何で1人なの?」
今日は、私と伶、透、マユちゃん、紗弥、紗弥の旦那さん(仮)の6人のはず。
紗弥はまだ籍は入れてないって言ってるから、彼氏と呼ぶべきか、でも子どももいるし旦那さんと呼ぶべきか……。
「一緒に来たんだけど」
そこまで言って、来た方を振り返る。
「あ!爽ちゃん!こっち!!」
紗弥にそう呼ばれた男の人は、近づいてくると、私達に深々と頭を下げた。
「いつも紗弥がお世話になっています。いつも皆さんと楽しく過ごさせてもらっているようで、話を聞くだけで僕も嬉しいんです」
「爽ちゃん、恥ずかしいよっ。そんなかしこまらなくていいよ!」
焦る紗弥が可愛い。
爽さんのことを見る紗弥は、『好き』が溢れていて、すごく幸せそうで見てるこっちまで伝わってくる。
少しの間、そこで自己紹介しあったり、立ち話をした。
それから、屋台見に行こうって6人で歩き出す。

私と伶が、日本のお祭りに行ったことがないって言ったから、少し早い時間からみんな集まってくれて、屋台とか色々楽しもうよって言ってくれていた。
「人、すごく多いのね…」
どこから来たの?ってくらい、そこら中に溢れかえっている。
ザワザワしたのが苦手だから、思わずそう漏らす私。
すると、透が振り返って私に注意する。
「玲奈!今日は一人でどこかに消えるのナシね。伶にしがみついとくよーに」
しっ、しがみつく…!?
確かに紗弥は腕組んで歩いてるし、マユちゃんも透にべったりくっついてる。
「…ほら」
私がキョロキョロしていると、伶が私に手を差し出してくれた。
「今日はいいでしょ?」

———キョウダイデ キモチワルイ

あの3年前に言われた言葉。
それがどうしても頭から離れなくて、知り合いがいそうな場所では、あまり伶に触れないようにしていた。
伶には何も言ったことなかったけど、分かってくれていたんだ…。

差し出された手を、握り返す。
「うん…!」
こうやって、いつでもどこでも、手を繋げたらいいのに。
昔は、そうするのが普通だったのに。
どうしてダメなんだろう…。

「玲奈!何か欲しいものとか、やりたい事とか、食べたいものは!?どれ?」
先頭を歩いていた紗弥が、振り返って私に聞いてくれる。
…そうだ。
昔のことを考えて落ち込んでる時じゃない。
今日は、しっかり楽しまないとね…!
「紗弥、玲奈に食べたいもの聞くと、片っ端から食い荒らすから」
「伶、ひどい!」
「あはは。いいじゃん人数いるし。みんなで全部食べればいいよ~」
笑いながら歩く。
「あ!あれ何?あれほしい」
早速、欲しいものを見つけて、伶の手を引っ張る。
赤くて丸くて可愛い…。
「ハイハイ、じゃそれ買おう」
「リンゴ飴だね~。マユもいる?」
「いる」
私と紗弥とマユちゃんは、それぞれ買ってもらって、それを食べながらまた歩いた。
「ひとくちちょうだい」
伶は私にそう言うと、リンゴ飴を持っていた私の手を掴んで自分の口元へ持っていく。
「あま…」
そういえば、お皿で分けっことかじゃなくて、一つのものをそのまま共有して食べるのも久しぶりかも…。
伶が食べたあとのものに口をつける。
だったそれだけでもドキドキしてしまう…。
「…!!リンゴでてきた…!」
驚いていると紗弥が笑う。
「だからリンゴ飴だよ」
「リンゴ味のリンゴみたいなカタチしたアメだと思ってた」
「アメの部分、リンゴの味してない!」
言われてみれば。
そういうことなんだ、っておかしくなる。
「あ、ねえ、みんなで金魚すくいしません?」
爽さんに言われて、よく分からないままその金魚すくいの屋台へ行った。
小さな金魚がたくさん泳いでいて、かわいい。
「とれたらウチで飼うので」
「そーだね。莉緒喜びそう」
紗弥たちがそう言ってくれたから、みんなでチャレンジすることに。
ハイ、と渡された金魚をすくうものが、網じゃなくて紙ってことにビックリする。
「すくえるの!?コレ」
伶がそう言っていると、爽さんが教えてくれる。
「コツがあるんですよー」
スイスイって何匹もすくっていく。
紙なのに…水に濡れて破れないの?
6人でわーわー騒いで、結局みんなで15匹もとれた。
それから少し歩いたところで、マユちゃんが透の浴衣の袖を引っ張る。
「アタシ、あれ殺る」
「射的やりたいの?てか殺るって物騒だな…」
そう言ってた通り、マユちゃんは片っ端から撃ち落として、たくさんお菓子をもらってきた。

楽しくて。
嬉しくて。
幸せな気分だった。

買いたいものがあるけど並ぶから、近くの屋台だし二手に分かれようってなって。
私と紗弥とマユちゃんと、それから爽さんの4人で並んでいた。

笑いながら話をしていた時、不意に聞こえた。
あの、声…。

———キモチワルイ…

「…ぁ……」
急に体が固まる。
何で、今日なの…。
楽しい気分から、一気に冷たい世界に放り込まれたような気持ちになる。
そして、自分だけ時間が止まったような感覚。

ここから今すぐ逃げ出したい…。

でもダメだ。
伶とも透とも約束した。
"ひとりで勝手にいなくならないで"
それに、そう。
みんなに迷惑がかかる。
どうしたらいい?
キーン…と耳鳴りがする。

「玲奈?玲奈!どうしたの?」
その声にハッとすると、紗弥が私の手を掴んでいた。
「声…が……」
周りを見回す。
あの声、どこから……。
「……っ」
うそ。
私がいちばん聞きたくない声。
いちばん会いたくない人たち。
伶と透と話してる……。

私の大事な人たちと話さないで。
あの不快な声を2人に浴びせないで。

私の視線の先を、マユちゃんが見て呟く。
「あれ、透と伶と話してるの…」
紗弥もそれを見て、ピンときたらしい。
「分かった、玲奈。アレね!?首の骨へし折ってきていいヤツ!!」
紗弥が私の手をギュッと握って、力強い声でそう言ってくれる。
泣きそうになるのを我慢して、小さく頷いた。
「待って紗弥。アタシも行く。玲奈をこんなに傷つけたクソ女、一緒にぶち殺したいわ」
「爽ちゃん!玲奈見ててね!!」
「はいはい~。ふたりとも、ほどほどにね~」

紗弥とマユちゃんが、伶と透のところへ行ってくれて、私は爽さんと2人になった。
「ねえ、玲奈ちゃん」
俯いて動けない私に、爽さんが優しく話しかけてくれる。
「僕は子供の頃すごくいじめられた事があったし、紗弥との間に子供ができた時も周りから色々言われたけれど」
その優しい声に、私は顔を上げた。
「外野の声は気にするな。周りは知らないから、何とでも言うんだ。大事なのは、自分が大切に思っている人の声と、自分の心の声を聞くこと。周りに流されて自分を失うのは1番勿体無いよ。…って、経験者からのアドバイス」

優しい声、優しい笑顔。
その言葉で、
胸のあたりの重苦しいつかえがとれて、体が軽くなる。
自然と涙が溢れた。

「ちょっと!爽ちゃん、玲奈のこと泣かしちゃったの!?」
「えっ、いやっそんなつもりは…」
戻ってきた紗弥が、爽さんのことを怒る。
「紗弥、紗弥ちがうの!爽さんはすごく良いことを言ってくれたの。それで…」
「玲奈の可愛い顔が台無しになるから、泣かないで」
スッとハンカチを出して、涙をぬぐってくれるマユちゃん。
なんだかセリフも男前。
「おまたせ~!さっ行こう」
透が気を遣って、何事もなかったように接してくれた。
…どうしよう、みんな優しい。

大事なのは、
自分が大切に思っている人の声と、
自分の心の声。

…そうだ。
昔、パパにも言われた。


「玲奈」
伶が私を呼ぶ。
顔を上げて、伶を見ると少しだけ悲しそうな表情をしている。
「おいで」
伶の手が背中に触れたと思ったら、そのまま抱きしめられていた。

…えっ、え!?
パニックになっていると、耳元で伶の声がする。

「…ごめんね玲奈。あの日、守ってあげられなくて。玲奈が一番必要としてた時に、そばにいれなくてごめん」

伶はそれだけ言うと、すぐに私を放した。

あ………。
3年前のあの日の話。
あの話をしてから、伶はずっとそんな風に思ってたんだ。
伶はなにも悪くないのに。

他の人に見られて恥ずかしいとか、そんな気持ちはどこかにいってしまっていた。

今すぐ伶に触れたくて…。
自分から、伶に抱きついた。
ぎゅって力を入れると、伶は背中を撫でてくれる。
「どーしたの?むかしみたいに甘えん坊に戻った?」
ふふっと笑いながら、そう聞いてくる伶の声が優しくて温かい。

ごめんね、伶。
私がいつも守られてばかりの弱虫だったから、伶にあんな思いをさせたよね。

『外野の声は気にするな』

もっと、強くならなくちゃ。
誰に何を言われても、平気にならなくちゃ。
伶に守られてばかりで、伶だけが傷つくのは嫌だ。

「伶、だいすき」
抱きついたまま、伶の顔を見上げてそう言った。
伶は一瞬、驚いたような顔をして。
すぐにいつもの優しい顔に戻った。
「俺も玲奈が大好きだよ」
それから、伶は私の頭を撫でる。

「さ、行こう。みんなに置いてかれた」
手を握られて、歩き出す。

もう、
周りの人の視線も
音も
全然気にならなかった。



———もし、
もし願いが叶うなら。

私が住む世界は、
伶の声と、伶が奏でるピアノの音。
それだけが聴こえる世界にしてほしい。

他に気を取られたり
惑わされたり
不快な音は何も要らない。

子どもの頃パパに言われたように
好きな音だけを選んで聴けるようになるのなら、
その2つだけあれば充分なの。
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