忘れさられた孤独な王子は冷酷皇帝に攫われる

Koyura

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10 花祭り

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「あ痛ぁ、止めて、お願い」
「何故私の言う事を聞かなかった!」
「あうっ、ごめんなさい、許してぇ」
「魔力を止められるとは、思わなかった!」
「だって、いやぁ、痛い!」
「勝手な事をして、お前の為だったのに、台無しだ!」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
僕はエカリオンに初めて逆らったせいで、『お仕置き』された。
裸にされた後、血が出るほどあちこち噛まれ、跡がつくほど皮膚を吸われている。
合間に僕のを扱かれては、イキそうになると止められ、自分で触らせてももらえない。
後口は指3本を誘うように咥え込んで締め付けているのに、一番気持ち良くなるところは掠るだけだ。

「ほら、悪いと思ってるなら、私に奉仕しろ!」
僕は顎を捕まえられてエカリオンの股間に顔を持って来られた。
「口に入れるの?」僕は入りそうに無いエカリオンのモノを恐々眺めた。
「知らないのか?」
「やった事ない」と言うとエカリオンは暗い笑みを浮かべた。

「何回かキスして先を舐めろ。そのあと、できるだけ深く咥えたまま舌を使え」
僕は半ば目を瞑って竿先にキスした。何かねっとりしたモノが唇に付いたが、そのまま何回かしてよく見たら口と先の間に糸が伸びていた。
「全部舐めとって、咥えて?」
吸い付いて咥えるとその硬さと弾力に、これが僕の中に入って来るんだと思うと、体の奥が熱くなる。

夢中でしゃぶってると、頭を両手で押さえられた。
「可愛いね、ルカス、でも全然口に入ってないよっ」
と、喉まで突き入れられた。
苦しくて離れようともがいたが、遠慮なく頭を動かされ喉奥まで入ってくる。
流石に吐きそうになって涙を流してえずいているのに、エカリオンは頭を離してくれず、一層抽送を早くした。

「ルカス、私を見ろ!」見上げるとエカリオンの表情が慈愛に満ちているのに狂気も感じられて、息をするのも忘れそうだった。
「もう、出すよ、思い切り!でも全部飲んで?」
えっと躊躇する間も無く、口の中でイッたエカリオンに精液を出された。
喉をなかなか通っていかない変な味の液体に、思わず一部飲み込めずに出してしまった。
「うえ、ごめん、なさい、飲み込め、無かった」必死に謝ると、意外に上機嫌で、「口をゆすいでおいで」と許してもらえた。

クラクラしながら洗面所で口を思い切りゆすいでから、やっとの思いで帰ってくると、早速押さえ込まれる。
「今度は私がやってあげるから、よく覚えておくんだ」
僕は自分のが固く大きくなっているのに驚き、それが呆気なくエカリオンの熱い口の中へ消えていくのを見た。
が、その後は巧みな口使いに翻弄され、結局よくわからないままイッてしまった。
その余韻も消えないまま、今度は後ろに一気に挿れられ、衝撃で悲鳴を上げた。
慌てて口を押さえたら、エカリオンに防音魔法をかけているからいくら騒いでも良いよ、と微笑まれた。
本当かどうかわからなかったが、先程嫌と言うほど解されていた所がやっと満たされ、もう、声を抑える余裕はなかった。

色々な体勢で攻められ、無理矢理な抽送で痛くなってきて訴えると、尻や背中を平手打ちされ、あちこち血が出ても噛みつかれて起こされた。
「いいか、二度と私に逆らうな、先生の言う通りに良い子でいるんだ。そしたら、ずっと傍にいて、優しく愛してあげるからね?」

ごめんなさい、ごめんなさい、先生。
先生の言う通りにします。
だから、捨てないで。
僕から離れないで。
僕を一人にしないで。

誰か僕を愛して。
小さな僕は一人泣き続けた。



「ルカス、起きないか?紅茶を入れて貰った。昨日買った物も食べよう」
優しい声で、髪を撫でながら先生は声を掛けた。
目が腫れて開かない。昨夜泣きすぎた。夜じゃなくて、もう朝方だったかもしれない。
先生の手が目元を包み、冷んやりしてきた。
「腫れてるから冷やしてあげよう」
目は気持ちいいが、身体を少し動かしたら、あちこち痛くてうめいた。

「治癒魔法とかできたら良かったのに。まあ、空想の産物だが。それに、できたとして、せっかく付けた跡がすぐ消えても面白くない」

夢じゃなかった、若しくは悪夢を体感した。
エカリオンの優しさと、残酷さは知っていた。僕の為にと、意に染まない全ての人間を躊躇無く殺して回った。
だが、僕にまでその残酷な一面が、こんなに酷く向けられるとは考えなかった。

痛みを堪えて、やっと上半身を起こすと、あちこち噛みつかれたり、吸われたりした跡が見えた。
「身体は拭いたんだが、寝たままだった」
ぼんやりしていてされるがまま服を着せられた。

ベッドの端に座らされると小さなテーブルが引き寄せられ、小花柄のカップに紅茶が注がれる。
並べられた食べ物を見ていると片一方に椅子を寄せて座った先生に促された。
全く食欲は無かったが少しずつ口にするが、味がわからない。

「これはルカスが食べて」
ため息をついた先生に、買った時はふわっとしていたが、時間が経って固まったバタークリームから出されたイチゴを、口に突っ込まれた。
先生は僕がイチゴを好きなのを覚えてくれていた。
ようやく酸味と甘味を感じ、咀嚼して飲み込んだ。

「紅茶を飲むか?」
僕は差し出されたカップに、恐る恐る手を伸ばして受け取った。
一口飲むと温かさが染み渡るようだった。
「美味しい」
「ここの紅茶もあの店が扱っている商品だからな」
先生を窺うと美しい笑顔を浮かべていた。
「うん、これも美味しいな。今度は家で飲むのをこれに変えてみようか」

「今日家に帰るんだ」
何気無く呟いた。どこに帰るんだっけ?
「帰るんじゃない、新しい国での家だ。花祭りを見たいのならもう出た方がいいが、しんどいならもう少し寝るか?その間に私だけで買い物を済ませてくるが」
「僕も一緒に行く、置いてかないで!」
僕は一人で部屋に残されると思うとゾッとして、掠れた声ながら、行く事を強調した。
「そうか?じゃあ、ゆっくり見て回ろう。広場で何か演目があるそうだから、少しは観ようか?」
「うん、観たい!ありがとう先生、大好き」

僕は優しい先生が大好きだ。
「ふふ、現金だなあ、さあ、支度しよう」


僕達は宿に別れを告げ、街の花祭りの様相を改めて見て回った。
造花も含め、街は花だらけで、沿道沿いの家はもれなく壁に花の咲き誇る植木鉢を掲げていた。

女の人は子供からおばあちゃんまで頭に花冠を被っていたり、花をあしらった白い服を着ていた。男の人は帽子やポケットに花を飾っている。酒瓶を片手に、すでに出来上がっている人もいる。

あちこちで一本の花や花束を、あげたり貰ったりしている。
食料品の店に来て、先生がお金を払う間、買った物を持って先に出て行くように言われたので渋々従った。少しも離れたくないな、と脇を見ると露天で低いテーブルに花の形をしたブローチを乗せて売っていた。
5つの花弁が放射状に広がって一つ一つの形に色ガラスがシルバーの縁に嵌め込まれている。
僕はその一つに吸い込まれるように見入った。

他のは赤や青の鮮やかな色なのに、それは黄色やオレンジ色では無い。
「おじさん、この色…」
「お、渋いねえ、これだけは琥珀を使ってるから、少々お高いのに地味なんだが、これはこれでおしゃれな…」
琥珀色の銀の縁の花だ。この色、見た事がある。
「これがいい、これ欲しい!」
「え、女の子相手なら、もっと明るい色が」
「僕が欲しいんだ」

僕の分だと渡された金を全部出した。
「これしか無いけど、駄目?」
「え、おや、坊主、意外と金持ってるな」
商人はしどろもどろになり、チラチラと金とブローチを見比べていたが、にっと笑った。
「じゃあ、全部貰いたいが、文無しにするのもなんだから、こんだけで」
とブローチを取って金の一部を取ろうとした。

「何やってるんだ!」
怖い声がして、横から手が伸びて金を出した手首を掴まれた。
怖い顔した先生が横に立ち、片手で品物を持ち、片手で僕の手首を絞めていた。
「こんな物を買う為に渡したんじゃ無い」

僕は震えながらも、どうしても手に入れたくて、
「でも、欲しい物を買いなさいって」と言い訳した。
「生活する上での話だ。しかも、よりによって、こんな色…」

僕の掴まれた手首に、より強い震えが伝わってきた。
「まだ、忘れられないのか?あの男が!」
「あの男って?」
「気付いてないのか?」
先生は真っ青な顔をしていた。
「う、うん。単に欲しいだけで…先生が駄目って言うなら、諦める」

「え、買わないの⁈」
「ああ、要らない。邪魔したな」
先生は僕の金を取り上げて先生の財布に入れ直した。
「そんなあ」
商人は悲しそうに言ったので、ごめんなさいと謝った。

「浮かない顔しないで、ブローチが欲しいなら、もっといい物を買おう」
そうじゃ無いんだけどな、と思ったけど、何が違うのか考えるとわからなくなってしまった。

先生が向かった先は街の中心の広場だった。舞台が作られて、踊りと演奏が始まっていた。
人がいっぱいで端の方から伸び上がって見ていたが、どちらも少女で少々拙いが、可愛いし、ほのぼのする。


『ああ、あの二人には誰も敵わないだろう。もう一度観たいなあ』
唐突に懐かしさでいっぱいになった。
???の歌と演奏は心を存分に揺らしたし、????の踊りは心をワクワクさせて惹きつけられた。
練習でも、素晴らしかった。

「ルカス?」

『ミ??はあの人が居なくて眠れない時に、子守唄を歌ってくれて。小さい子じゃあるまいし、とか思いつつも、寝ちゃうんだよ絶対』

「ルカス、何を言ってる?」

『でも、あ?がいると寝かせてもらえないから、今度居る時でも、呼んじゃおうかな。いい夢見れそう』

「ルカス⁈しまった!!」
『見つけました!』

ぐわん、と頭を揺らされた気がした。酷い魔力干渉だ。
頭が痛くなってしゃがみ込んだ。
「大丈夫でしたか?かなり強く掛かっていたので、無茶しました」
両肩に手を置かれて少しだけ頭を上げると目の前にしゃがんでいたのは…
「誰?」

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