何でも奪いたがる妹に婚約者を寝取られましたが、婚約を解消しようとしていたところなので問題ない。むしろ寝取って大丈夫?私は妹が心配です。

無名 -ムメイ-

文字の大きさ
1 / 1

1話

しおりを挟む
 何でも奪いたがる人っていますよね。
 それが今、目の前にいる妹です。

「ぷぷぷ、お姉ちゃんの婚約者のレオン様寝取っちゃった~。ごめんね~、あたしの方が魅力的で」

 と、そういう人は100パーセント自己中心的な考え方しかできず、自分が世界の中心とか思ってる。
 私はそういう人哀れだと思うんですよね。結局、自分しか見えてないから、痛い目見ますから。

 でも、私は優しいので、忠告してあげようと思います。

「ねぇマリン。悪いことは言わないから、あの人はやめておきなさい。あの人はロクでもない人間だから、関わらない方がいい。嫌でしょう? 見知らぬところで変な保証人になって、自分名義で借金されるの」

「何それ~。寝取られたからって負け惜しみするとか、お姉ちゃんみっともなさすぎ! そんなにあたしに取られちゃったのが悔しいんだ~。可哀想~!」

 ……やっぱりこうなるよね。人の不幸が三度の飯より好きなマリンが今さら人の話をちゃんと聞くわけない。
 だから、もう知らない。行くところまで行っちゃえばいい。そして、思い知りなさい。

 ――大人は怖いわよ。



 あれから数ヶ月が経過して、妹のマリンが家から勘当された。それもそうだろう。
 私はまったく気にしてないけど、姉の婚約者を寝取っただけでも罪なのに、あり得ないほどの借金をたった数ヶ月で作る馬鹿娘をこのまま近くに置いておくわけない。

 いくらだったっけ? 最終的なあの子の借金。確か……2000万ぐらいだったかな。
 2000万あれば、う~んそうだな……数年は豪遊できるんじゃないかしら?
 だって、10センあったら美味しいパンが一つ買えちゃうんだもの。

 しかし、まあよく2000万も借金したものです。いや、あんな性生活を送っていたら、こうもなるか。
 毎日最低5人と避妊もせずにやって、万が一赤ちゃんができてしまったらその分の中絶代金。
 そして、口封じのための代金。その他もろもろを含めると、まぁ妥当だろう。

 ちなみにこのことを婚約者に突きつけると、私にも口封じのお金を渡そうとしてきた。
 あの男は本当にクズである。しかも、そのお金は妹のようなお馬鹿さん名義で借りたお金。
 全員を把握しているわけじゃないけど、少なくとも妹以外に2、3人はいるだろう。

 そのことをほかの貴族に報告することも可能だけど、それで何か逆恨みでもされたら嫌だし面倒。
 そもそも私は他人に興味がないから、自分さえ無事ならそれでいい。
 妹は血が繋がってるから、やめておいた方がいいとは言ってあげたけど。

 ……で、話は戻って妹の借金だけど、あの金額はまともに働いて返せる金額じゃない。
 だから、妹はどこか遠い場所に連れて行かれてしまった。多分、良くない場所からお金を借りていただろうから、それはもう劣悪な環境だと思う。

 きっと、私と妹が話すことは……二度とないだろうな。

「私は別に何とも思わないけど」

 そうボソリと呟いて、ふわふわのベッドの上でぐーっと体を伸ばした。
 
「あの子がいなくなって、奪われてた私の安眠ベッドがようやく帰ってきたんだから、もう私の前に現れないでよ……」

 と、久方ぶりの極上の心地よさに包まれて、私は夢の中へと落ちていくのだった。

                 ~完~
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。 最後に取ったのは婚約者でした。 ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。

俺の子供が出来ためでたい?あの……婚約者の私は懐妊していないのですが?

仰木 あん
恋愛
ショートショートです

姉を婚約破棄に追い込んだ妹が、破滅を辿るようです。

銀灰
恋愛
可愛い靴に、お気に入りの色だった口紅、紅が綺麗なイヤリングに銀の髪飾り。 望むものは全てその我儘で手に入れてきた令嬢アザレア。 そして今度望んだものは――姉の婚約者。 その強欲で今度も望むものを手にしたアザレアだったが、奪い取った婚約者フロスト伯爵には、予想もしていなかった秘匿の事情があった。 アザレアはその婚約を機に、これまでの人生から一転、奈落のような不幸へ滑落していく――。

婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?

聖女は神の力を借りて病を治しますので、神の教えに背いた病でいまさら泣きついてきても、私は知りませんから!

甘い秋空
恋愛
神の教えに背いた病が広まり始めている中、私は聖女から外され、婚約も破棄されました。 唯一の理解者である王妃の指示によって、幽閉生活に入りましたが、そこには……

聖女を無能と罵って婚約破棄を宣言した王太子は追放されてしまいました

もるだ
恋愛
「お前とは婚約破棄だ! 国から出ていけ!」 王命により怪我人へのお祈りを続けていた聖女カリンを罵ったのは、王太子のヒューズだった。若くて可愛い聖女と結婚するつもりらしい。 だが、ヒューズの暴挙に怒った国王は、カリンではなく息子の王太子を追放することにした。

[完結]婚約破棄ですか? 困りましたね。え、別の方と婚約? どなたですか?

日向はび
恋愛
未来の妃となるべく必死で努力してきたアリーシャ。 そんなアリーシャに婚約破棄が言い渡される。アリーシャが思ったのは、手にした知識をこれからどう活かしていけばいいのかということだった。困ったアリーシャに、国王はある提案をする。

処理中です...