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2章 感動の再会から王都を死守するまで

47話 行方不明者の捜索

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 シャロの案内で王都の外へ出た。辺りは言うまでもなく真っ暗だ。火属性魔法で周囲を照らして探索する。

「やっぱり森かな。行方不明者がいるところ」
「恐らくそうだと思います」
「……なら、スライムを斥候として送り込もう」
「それがいいと思います」

 俺たちは森まで近づき、スライムに森の中を探らせる。
 別にそのまま森に入ってもよかったが、女、子どもをさらった邪龍教の信者が何人いるか分からない。

 まずは相手の戦力を把握することにした。

 俺はあらかじめスライムとは感覚を共有しており、スライムが見聞きしているものを情報として処理する。
 やっぱり森なだけあって辺りを捜索しづらいな。流石に火属性魔法を使うわけにもいかないし。

 邪龍教に見つかったら面倒だ。

「……どうですか?」
「……まだ人影一つ見つからない。もっと奥なのかも」
「そうですか」

 と言っても、仮に人影があったとしても見落としかねないな。この暗さだと。
 ミストならスキル【夜目】で辺りが暗かろうと昼間と変わらないぐらい見えるらしいけど。

 流石は猫獣人って感じ。

「…………」
「…………」

 お互い無言のまま時間は過ぎていき、スライムは開けた場所に出た。
 そこには小屋がポツンと建っていて、辺りに人の気配はなさそうだ。

「シャロ。小屋を見つけた。行ってみよう」
「分かりました。向かいましょう」

 俺たちはその小屋がある場所に真っ直ぐ進む。
 一応、辺りを警戒していたが、何事もなかった。てっきり何か仕掛けてくると思ったけど……。

 もしかして邪龍教はここにいない?

 ……そんなわけないな。王都の周りで隠れられそうな場所は森以外にはない。

 そうこうしているうちに小屋にたどり着く。

 が。

「……物音一つ聞こえないな」
「そうですね。もしかしたら小屋には地下があるのかもしれません」
「なら、小屋に入るか」
「そうしましょう」

 一応【魔力感知】で探ってみたけど反応はない。
 やっぱり小屋の中には誰もいないみたいだ。

 俺たちは小屋の中に入る。

「何もないな。でも」
「はい。やはり地下がありそうです」

 小屋の中には俺が言った通り何もない。ここは住むために作られたわけじゃないみたいだ。
 恐らく、何かを隠すために作られている。その証拠に地下へ続く階段を見つける。

 しかも、出入りした痕跡があった。
 というのも、小屋の中には至る所に埃が溜まっているのに、その階段付近には埃が少ないのだ。

「……どうしますか?」
「行くしかないだろ。そのために来たわけだし。だけど、これは……」
「はい。どうやら結界が張られているようです。恐らくこれを越えると、邪龍教の信者に気づかれるでしょう」

 ……厄介だな。よっぽど隠したいものがあるんだろう。

 それは結界の種類にも表れていた。

 というのもこの結界、目に見えない。
 恐らく地下に入らせないために張られているのではなく、見つからないようにするために張っている。

 それはシャロが言っていた通りだ。
 俺たちに見つかるよりも先に、俺たちの存在に気づき、自分たちは姿を隠す……そんな感じだろう。

 だが。

「結界が張ってあるということは、そうしなければならない理由があるってことだからな。だから行くしかないな」
「分かりました。でしたら最短距離で制圧しましょう」
「そのつもりだ」

 俺はシャロの提案に乗った。逆にそれ以外に取る選択肢はないだろう。
 どうせ気づかれるなら強行突破して、最短かつ迅速にさらわれた女、子どもを助ける。

 それが俺とシャロが出した結論だ。

「準備はいいか?」
「はい」
「なら、行こう!」

 俺たちは地下に繋がっている階段を全速力で駆け下りる。

 そして――。
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