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第一章
持つべきものは
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マルスのパーティーに入団してから、一週間が過ぎた。
今日は次の依頼についての、作戦会議があるらしい。あいつら、僕に期待をしてるみたいだから、ちゃんと活躍してやらないとな。
そんなことを考えながら、身支度をして事務所に向かった。
予定よりかなり早く着いてしまったけど、事務所の扉の鍵は開いていた。僕と依頼に出るのが待ちきれなくて、みんなして速く来てるのかもしれない。
「みんな、おはよう……あれ?」
でも、事務所の中には、誰もいなかった。あいつら、どこに行ったんだ?
「ね……本当……丈夫……?」
「仕方ない…………うこれ……方法がな…………ら」
「でも、ほんの…………可哀想です……」
……ん? どこかから、声が聞こえる……。これは、多分、会議室の方、かな?
会議室の扉に近づくと、さっきよりもハッキリと、あいつらの声が聞こえた。
「なんだ、アメリア、本当にアイツに惚れてたのか?」
「よしてくださいよ。そんな訳ないじゃないですか」
「まあ、顔だけはちょっと可愛いけど、中身がアレじゃあちょっとね……」
一体何の話をしてるんだろう? ひょっとして、時間を間違えてたかな……。
「おーい、みんな。もう作戦会議始まってるの?」
ノックをしながら声をかけると、ガタッという音が一斉に響いた。何か、みんな慌ててる?
「お、おう。フォルテ、早かったな」
扉が開くと、笑顔のマルスが顔を出した。
「あ、うん。初日だから、ちょっと早めに来ておこうと思って」
「そうか! じゃあ、さっそく会議をはじめようぜ! ほら、早く入った入った!」
「うん……」
なんだか、笑顔がひきつってたようなきがするけど……、気のせい、かな?
「あ、フォルテ、おはよー! こっちこっち!」
「おはようございます。フォルテさん、こちらの席へどうぞ」
「あ、うん。ありがとう」
誘われるまま、ヘレナとアメリアの間の席に着いた。
そして――
「アメリア! 今日はフォルテに、あざとくちょっかいかけないでよね!」
「ヘレナさんこそ! そのハレンチな格好で、フォルテさんに色目を使わないでください!」
――早くも、僕をめぐってのイザコザが始まってしまった。
「ふ、二人とも、落ち着いて。会議の前に、ケンカはだめだよ」
「うー、フォルテがそう言うなら……」
「申し訳ございません、フォルテさん……」
良かった、二人と納得してくれた。これでひとまず、会議室が大乱闘でスマッシュなことになる心配はなくなったみたいだ。
でも、いつかは二人のうちの、どちらかを選ばないといけないのか。そのときはやっぱり、僕も大乱闘でスマッシュな事態に、巻き込まれてしまうんだろうか……。
「じゃあ、作戦会議を始めるか……ん? フォルテ、深刻そうな顔して、どうしたんだ?」
「あ、いや、なんでもないよ! それよりも、早く作戦会議を始めよう」
「そうか。なら、始めるぞ」
マルスはそう言いながら、机の上に置かれた紙を手に取った。
「今回の依頼内容は、『魔の森』で大量発生した中型モンスター、テラストリアルワイバーンの殲滅だ」
……よりによって、最初の依頼が魔の森か。
「……フォルテ、顔色が悪いけど大丈夫か? 大丈夫、お前がいてくれたら、全部上手くいくからさ!」
「そうだよフォルテ、心配しないで! テラストリアルワイバーンなんて、ちょっと牙が生えてて、ちょっとデッカくて、ちょっと強いだけのニワトリみたいなもんだから!」
「そうですよ! あんなモンスターなど、フォルテさんの敵ではありません!」
三人は口々に僕を励ましてくれた。
やっぱり、ここは本当に良いパーティーだな……。
「ゴメン、みんな。別に依頼内容について心配してるわけじゃないんだ」
「では、なぜ黙り込んでいたのですか?」
アメリアが、心配そうな表情で首を傾げた。
あんまり思い出したく無いけど、心配したままにさせておくわけにもいかないか。
「前のパーティーにいたときに、『魔の森』関係でちょっと嫌なことがあったんだ」
「嫌なこと、ですか?」
「うん。えーと、なんというか、手柄を横取りされたっていうか……」
「まあ! それは酷いですね!」
本当にそうだよな……。本来なら、あの大型モンスターにとどめを刺した僕は、パーティーの重役になったって良かったのに。それどころか、クビにするなんて……。
「ははは! 安心しろよ、フォルテ! 俺たちは絶対にそんなことしないから!」
「そうそう! それに今回の作戦は、フォルテがいないと始まらないんだから!」
「僕がいないと、始まらない?」
問い返すと、マルスとヘレナは笑顔で頷いた。
「ああ! 今回は、お前の超高火力な魔法で、テラストリアルワイバーンの群れを一気に殲滅してもらおうと思ってるんだ!」
超高火力で一気に殲滅か……。テラストリアルワイバーンの群れくらいなら一撃で倒せる呪文はいくつもあるけど、詠唱にちょっと時間がかかる。
ベルムさんなら絶対に、そんな危険な作戦はとれない、なんて逃げ腰なことを言いそうだけど――
「もちろん、向こうの攻撃は俺が全て引きつける!」
「マルスが処理しきれない分は、アタシが引き受けるよ!」
「もしもモンスターの攻撃がそちらに流れても、私がすぐに回復術をかけますから!」
――こいつらなら、そう言ってくれると信じていた。
「分かった。みんな、ここは僕に任せてくれ!」
「ああ、助かるよフォルテ!」
「フォルテ、カッコいい!」
「フォルテさん、素敵です!」
やっぱり、持つべきものは、僕のことをちゃんと理解してくれる仲間なんだな……。
今日は次の依頼についての、作戦会議があるらしい。あいつら、僕に期待をしてるみたいだから、ちゃんと活躍してやらないとな。
そんなことを考えながら、身支度をして事務所に向かった。
予定よりかなり早く着いてしまったけど、事務所の扉の鍵は開いていた。僕と依頼に出るのが待ちきれなくて、みんなして速く来てるのかもしれない。
「みんな、おはよう……あれ?」
でも、事務所の中には、誰もいなかった。あいつら、どこに行ったんだ?
「ね……本当……丈夫……?」
「仕方ない…………うこれ……方法がな…………ら」
「でも、ほんの…………可哀想です……」
……ん? どこかから、声が聞こえる……。これは、多分、会議室の方、かな?
会議室の扉に近づくと、さっきよりもハッキリと、あいつらの声が聞こえた。
「なんだ、アメリア、本当にアイツに惚れてたのか?」
「よしてくださいよ。そんな訳ないじゃないですか」
「まあ、顔だけはちょっと可愛いけど、中身がアレじゃあちょっとね……」
一体何の話をしてるんだろう? ひょっとして、時間を間違えてたかな……。
「おーい、みんな。もう作戦会議始まってるの?」
ノックをしながら声をかけると、ガタッという音が一斉に響いた。何か、みんな慌ててる?
「お、おう。フォルテ、早かったな」
扉が開くと、笑顔のマルスが顔を出した。
「あ、うん。初日だから、ちょっと早めに来ておこうと思って」
「そうか! じゃあ、さっそく会議をはじめようぜ! ほら、早く入った入った!」
「うん……」
なんだか、笑顔がひきつってたようなきがするけど……、気のせい、かな?
「あ、フォルテ、おはよー! こっちこっち!」
「おはようございます。フォルテさん、こちらの席へどうぞ」
「あ、うん。ありがとう」
誘われるまま、ヘレナとアメリアの間の席に着いた。
そして――
「アメリア! 今日はフォルテに、あざとくちょっかいかけないでよね!」
「ヘレナさんこそ! そのハレンチな格好で、フォルテさんに色目を使わないでください!」
――早くも、僕をめぐってのイザコザが始まってしまった。
「ふ、二人とも、落ち着いて。会議の前に、ケンカはだめだよ」
「うー、フォルテがそう言うなら……」
「申し訳ございません、フォルテさん……」
良かった、二人と納得してくれた。これでひとまず、会議室が大乱闘でスマッシュなことになる心配はなくなったみたいだ。
でも、いつかは二人のうちの、どちらかを選ばないといけないのか。そのときはやっぱり、僕も大乱闘でスマッシュな事態に、巻き込まれてしまうんだろうか……。
「じゃあ、作戦会議を始めるか……ん? フォルテ、深刻そうな顔して、どうしたんだ?」
「あ、いや、なんでもないよ! それよりも、早く作戦会議を始めよう」
「そうか。なら、始めるぞ」
マルスはそう言いながら、机の上に置かれた紙を手に取った。
「今回の依頼内容は、『魔の森』で大量発生した中型モンスター、テラストリアルワイバーンの殲滅だ」
……よりによって、最初の依頼が魔の森か。
「……フォルテ、顔色が悪いけど大丈夫か? 大丈夫、お前がいてくれたら、全部上手くいくからさ!」
「そうだよフォルテ、心配しないで! テラストリアルワイバーンなんて、ちょっと牙が生えてて、ちょっとデッカくて、ちょっと強いだけのニワトリみたいなもんだから!」
「そうですよ! あんなモンスターなど、フォルテさんの敵ではありません!」
三人は口々に僕を励ましてくれた。
やっぱり、ここは本当に良いパーティーだな……。
「ゴメン、みんな。別に依頼内容について心配してるわけじゃないんだ」
「では、なぜ黙り込んでいたのですか?」
アメリアが、心配そうな表情で首を傾げた。
あんまり思い出したく無いけど、心配したままにさせておくわけにもいかないか。
「前のパーティーにいたときに、『魔の森』関係でちょっと嫌なことがあったんだ」
「嫌なこと、ですか?」
「うん。えーと、なんというか、手柄を横取りされたっていうか……」
「まあ! それは酷いですね!」
本当にそうだよな……。本来なら、あの大型モンスターにとどめを刺した僕は、パーティーの重役になったって良かったのに。それどころか、クビにするなんて……。
「ははは! 安心しろよ、フォルテ! 俺たちは絶対にそんなことしないから!」
「そうそう! それに今回の作戦は、フォルテがいないと始まらないんだから!」
「僕がいないと、始まらない?」
問い返すと、マルスとヘレナは笑顔で頷いた。
「ああ! 今回は、お前の超高火力な魔法で、テラストリアルワイバーンの群れを一気に殲滅してもらおうと思ってるんだ!」
超高火力で一気に殲滅か……。テラストリアルワイバーンの群れくらいなら一撃で倒せる呪文はいくつもあるけど、詠唱にちょっと時間がかかる。
ベルムさんなら絶対に、そんな危険な作戦はとれない、なんて逃げ腰なことを言いそうだけど――
「もちろん、向こうの攻撃は俺が全て引きつける!」
「マルスが処理しきれない分は、アタシが引き受けるよ!」
「もしもモンスターの攻撃がそちらに流れても、私がすぐに回復術をかけますから!」
――こいつらなら、そう言ってくれると信じていた。
「分かった。みんな、ここは僕に任せてくれ!」
「ああ、助かるよフォルテ!」
「フォルテ、カッコいい!」
「フォルテさん、素敵です!」
やっぱり、持つべきものは、僕のことをちゃんと理解してくれる仲間なんだな……。
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