勇敢へいたるキッカケ~この僕がクビ?スキル「怯み無効」のありがたさが分からない奴らなんて、こっちから願い下げです!……って思ってました。

鯨井イルカ

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第二章

帰り道

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 まだ少し調べものがあるというベルムさんを残して、僕とリグレは図書館を後にした。

「フォルテちゃん、じしょ借りられてよかったね!」

「うん、そうだね」

「図書館、大っきかったね!」

「うん、そうだね」

「ベルムちゃんと、ちゃんと仲直りできたね!」

「……うん。そうだね」

 別れぎわに、ベルムさんは「ダンジョンでの立ち回りを覚えたければ、カフェとサーフショップの手伝いがないときなら、トレーニングに協力する」と言ってくれた。
 この間の一件で、見限られたと思ったのに……。

「よかったね! フォルテちゃん!」

 リグレがこっちを見上げて、満面の笑みを浮かべた。

 ベルムさんに走り寄っていったときは、なんてことするんだって思ったけど――

「リグレ」

「なぁに? フォルテちゃん!」

「さっきは、ありがとうな」

 ――その行動がなければ、今日の結果はなかったはずだ。

 いや、今日だけじゃなくて……、ヒューゴさんも、ルクスさんも、リグレがいなかったら、二度と口をきくことさえなかったんだろうな。

「うん! どーいたしまして!」

 リグレは相変わらず、無邪気に笑って答えた。
 
  お前がちゃんと
  守ってやらないとな

 ……僕が守る、か。

「それじゃ、フォルテちゃん、お家までかけっこだね!」

「うん。でも、このあたりは人が多いから、海辺の道まで出たらね」

 正直なところ、誰かを守れる自信なんてない。
 でも、人ごみで迷子にならないように手を繋ぐことくらいなら、できるはずだ。

「フォルテちゃん……」

 手を握るとリグレは目を輝かせた。
 
 そして――

「私たち、やっぱりラブラブだね!」

 ――なんとも、反応に困る言葉を言い放った。

 当然、周囲の人たちはこっちに注目する。その中には、警官の姿もある。
 警官は困惑した表情で、こっちに近づいてきた。

 えーと……、多分、子供の冗談だと分かってくれると思うけど――

「あー、お兄さん、ちょっとお話を聞かせてもらえますか?」

 ――やっぱり、職務的に質問をされることになるよね。

「このお嬢さんとは、どういうご関係で?」

 警官が微笑みながら首をかしげた。でも、気迫はすさまじい……、あらぬ誤解が解けないと、かなり厄介なことになりそうだ……。

「えーと、ですね。僕はこの子の魔術の家庭教師をしていまして……」

「うん! それで、一緒のお家に住んでて、ラブラブなんだよ!」

「うん、リグレはちょっと黙っててくれるかな」

「なんで!? 私のことは遊びだったの!?」

「そういうセリフをどこで覚えてくるんだよ……。ともかく、今は……」

「ゴホン!」

 突然の咳ばらいが、会話をさえぎった。顔を向けると、警官の微笑みと気迫が、さらにすさまじくなっている……。

「この子とのお話、交番で詳しく聞かせてもらえますね?」

「……はい」

 ……ひょっとしたら、何かからリグレを守る力より、リグレから自分を守る術を身につけた方がいいのかもしれないな。
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