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19.隊長は楽しそうに笑った
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隊長との行為はとても気持ちが良かった。
お互いを求め合うようにキスをして、身体に触れた。
でも、実際隊長が求めているのはリリーさんだ。隊長の不能が治った今、私はもう用済みだった。
終わった後に私が触れると、隊長は眉間にシワを寄せて早く事後処理しようとした。
酷いなとも思ったけど、隊長も十年振りの事で、私の事を気遣うどころでは無かったんだろう。
隊長のものは出した後もまだ元気そうで、ひょっとしたらリリーさんとの事を考えていたのかもしれない。
そう思うと私の胸はじくじくと痛み、それ以上隊長の顔を見ていられなかった。
私は適当な理由を言って、女子寮に逃げ込んだ。
女子寮にこもって何日か経つと、嫌でも思い知らされた。
なぜ隊長の顔を見たくないのか。
なぜリリーさんにも会いたくないのか。
なぜ二人の事を考えると、胸がムカムカモヤモヤするのか。
そんなの答えは一つしか無い。
私は恋心を自覚すると同時に、失恋してしまった。
「会いたかった」
往生際悪く隠れた私を、隊長はあっという間に見つけてしまった。
「私は会いたくなかったです」
優しく微笑む隊長の顔を見ても辛くなるだけだ。
折角女子寮に来たなら、リリーさんとよろしくやればいい。私はもう用無しなんだから、そっとしておいて欲しい。
私は殻に閉じこもるように顔を伏せた。
「先生、話がしたい」
隊長もしゃがんだのか、さっきより近くから声が聞こえた。
「このままどうぞ」
「いや、ちゃんと聞いて欲しいし、話して欲しいんですが……」
「仕事の話ですか?」
「いえ、そう言う訳では……」
なら聞く必要はないな。私は顔を伏せたまま隊長の声がする方に背中を向けた。
「困ったな」
「おい、ババ……ユイ、隊長の話はちゃんと聞け!」
隊長の声が高い位置から聞こえ、立ち上がったんだなと思った瞬間、レインが耳元で叫んだ。
「うるさいな。仕事の話じゃないんだから、聞く必要は……」
レインに文句を言おうと後ろを振り返ると、いつの間にか隊長とすり替わっていた。
「なぜ、急に戻って来なくなったんですか?」
「隊長に、会いたくなかったからです」
私の言葉に隊長は狼狽えていた。
失恋したからと言って、隊長が悪い訳ではない。ちょっと言い方が酷かったかもしれない。
「いや、そうじゃなくて、私はもう用済みですから」
「用済みって、何の事ですか?」
「隊長だってもう私にベタベタされたくないですよね?そっとしておいてください」
隊長に背を向けて、もうこれ以上話すことはないと無言のアピールをした。
「業務隊長、そろそろ晩飯の時間なんで、皆を連れて食堂に行きます。どうぞごゆっくり。あ、あと良かったら、これ使ってください」
レインが隊長に向かって何か言っている。
「これは?」
「ユイが好きな焼き菓子です。顔の近くで振ったら出てくるんじゃないですか?」
私は犬か。
食堂に向かうざわめきが収まると、隊長が私の顔の近くでお菓子を振った。
「お願いですから出てきてください」
だから犬じゃあるまいし、そんなので釣られて出ていく訳が無い。
「隊長は私を何だと思っているんですか」
「恋人だと思ったんですが、逃げられてしまったので、何でしょう」
「え?何?」
思わず振り返って隊長を見てしまった。
「片想いの相手、でしょうか」
「違うと、思います、よ?」
隊長はリリーさんが好きなのに、何を言っているのかさっぱり意味が分からない。
私の知らないスラングか方言的何かなんだろうか。
「なら、やはり両想いなんですね」
隊長は嬉しそうにニカッと笑うと、私を抱き上げた。
「な、な、何をするんですか!」
いきなりのお姫様抱っこに、私は動揺が隠せない。
「このまま連れて帰ってもいいですか?」
「良くないです!」
私は隊長の胸元をバシバシと叩いて抗議した。
子供達が食堂に行きガランとした部屋で、隊長と私はテーブルに向かい合わせに座っている。
折角なので私はレインが置いていったお菓子を頬張った。
木の実がぎっしり詰まった焼き菓子は、いつ食べても美味しい。例え目の前に隊長がいても。
「先生は、ここで何をしていたんですか?」
「……子守りです」
もぐもぐしてから答えると、隊長は少し顔をしかめた。
「そうでは無く、ここに男達が来て、その、何かしてましたよね?」
「ああ、隊長もそれで来たんですね。いいですよ、やりましょう」
やはりさっきの意味不明な発言は、私の知らない別の意味があったんだろう。
隊長もシャツに漢字を書いて欲しくて来ただけだ。ひょっとしたらリリーさんに会いに来るついでなのかもしれない。
業務日誌を運んでくれていたレインが『唯』の字が書かれたシャツを着て隊舎をウロウロしたせいで、何人かが俺にもやってくれと押しかけてきた。異世界でも漢字は大人気だ。
他の字も勧めたけど、皆『唯』がいいと言うので、親衛隊のメンバーは増える一方だった。
「準備するんで、シャツを脱いでおいてください」
皆、中の肌着に書いてくれと言ってきてたから、隊長も同じでいいだろう。
さっさと書いてさっさと帰ってもらおう。
「シャツを、脱ぐ?」
「そのままの方が良かったですか?」
「いや……」
隊長がシャツを脱いでいる間に、筆と絵の具を取りに行く。
戻って来たら隊長は上半身裸になっていた。
「肌着は着たままでも良かったんですが、まあいいです」
隊長の肌着を真っ直ぐ伸ばすと、私は筆を構えた。
なぜかここの人達には『唯』の字が人気だけど、隊長のシャツに自分の名前は書きたくない。
私はしばらく考えてから、大きく『百合』と書いた。
なんだか女の子同士のキャッキャウフフが好きな人みたいになってしまった気もするけど、私が言わなければ問題ないだろう。
「何ですか?これは」
「私の国の字で、リリーを表す文字です」
「先生にやって貰うって、これ、ですか?」
「私もやりたくてやってる訳ではないですよ?何人かの人が、どうしてもと言うから」
私が道具を片付けて戻ってきても、隊長は上半身裸のまま頭を抱えていた。
「終わったんで、どうぞ」
シャツを差し出して、暗に早く出てけと言うと、隊長は私の手を掴んできた。
「そうだ、なぜ、リリーなんですか?」
「なぜって、好きだからですよ」
「誰が、誰を?」
私にそれを言えというのか。
「……隊長は、リリーさんが好きなんでしょう?」
心が悲鳴をあげそうだ。隊長も酷い事をする。
「もう、用が済んだなら早く出ていってください」
私は隊長の手を振り解くと、立ち上がって隊長側に回り、その身体をどしどしとどついた。
「なぜそんな風に思ったのか分かりませんが、私が好きなのは先生です」
私の攻撃に動じることなく、隊長は真剣な眼差しで私を見つめている。
「え、だって、リリーさんのために、我慢して、色々頑張っていたんじゃ……」
「色々って、何の事ですか」
「私と、色々、したじゃないですか」
「だから、なぜそこでリリーが出てくるんですか?」
「え?どう言う、事ですか?」
「それは私が聞きたいです」
隊長と私は顔を見合わせてしばらく固まってしまった。
「つまり、先生は私が不能で、練習の為に先生とあんな事をしたと」
なぜか私はテーブルの同じ側で隊長と向かい合って座り、見下ろされている。
腕組みをする隊長はまだ上半身裸で、剥き出しの筋肉が私に威圧感を与えている。
私は説教されているんだろうか。
「なぜそんな勘違いをしたんですか」
隊長は大きなため息をついた。
「女の人は抱けないって言っていたから、そうなのかなって」
隊長はまた大きなため息をついた。
「それに、ほら、いつもしかめっ面して、本当は嫌だったんじゃないですか?」
「我慢していたからです」
「やっぱり」
「そう言う意味ではなくて、先生を無理にでも自分の物にしてしまいそうだったので、我慢していたんです」
隊長にじっと見つめられ、私もなんと言っていいか分からず、黙って隊長を見つめた。
「ビラシュッドの街で、好きと言われたと思ったんですが、違うんですか?」
隊長の問い掛けに私は首をひねる。そんな事を言った覚えはない。
「言ってない、と思いますが」
私の言葉に隊長はあからさまにがっくりしていた。
「でも、好きです」
「え?」
「隊長が、好きです」
いざ口にすると、恥ずかしくて顔から火が出るかと思った。
「私も、先生が好きです」
隊長は嬉しそうに笑い、私に手を伸ばした。
「言っておきますが、私は好きでもない女性とあんな事はしません」
座ったまま抱き寄せられて、私は隊長の足にまたがるような格好になった。
「私だって……いや、どうかな」
力を使った後の私は欲望に極めて弱い。しないとは言い切れない、かもしれない。
「そこは我慢してください。私が先生を満たすと約束するので」
隊長はそう言うと、私の頭を大事そうに抱えてキスをした。
「んんっ、んっ……ふっ、んっ……」
舌が差し入れられ、角度を変えて何度も何度もされるキスに、私の身体からは力が抜ける。
隊長が言った通り両想いなんだなと思うと、嬉しいような、恥ずかしいような、蕩けるような気持ちでいっぱいになった。
「うわー!お姉ちゃんが裸のおじちゃんとチュッチュしてるー!」
部屋の扉が開く音と共に子供の叫び声が聞こえて、思わず隊長を突き飛ばした。
「おっ始めるにしても、場所を選べよ」
呆れた顔のレインはそう言うと、そっと扉を閉じた。
「おかーさーん!お姉ちゃんとおじちゃん、エッチなコトしてたー!」
「え、ちょっと待って!」
慌てて大声を出した私の後に、扉の外で走りながら叫ぶ声が続く。
「裸で抱き合ってたー!」
「ブチューってしてたー!」
「エッチー!」
段々小さくなる声に泣きそうになりながら、私は隊長の上から降りた。
「あの、これ、どうしたら」
オロオロする私を見て、隊長は楽しそうに笑った。
「折角だからエッチなコト、しましょうか」
私は隊長のお腹にパンチを入れた。
お互いを求め合うようにキスをして、身体に触れた。
でも、実際隊長が求めているのはリリーさんだ。隊長の不能が治った今、私はもう用済みだった。
終わった後に私が触れると、隊長は眉間にシワを寄せて早く事後処理しようとした。
酷いなとも思ったけど、隊長も十年振りの事で、私の事を気遣うどころでは無かったんだろう。
隊長のものは出した後もまだ元気そうで、ひょっとしたらリリーさんとの事を考えていたのかもしれない。
そう思うと私の胸はじくじくと痛み、それ以上隊長の顔を見ていられなかった。
私は適当な理由を言って、女子寮に逃げ込んだ。
女子寮にこもって何日か経つと、嫌でも思い知らされた。
なぜ隊長の顔を見たくないのか。
なぜリリーさんにも会いたくないのか。
なぜ二人の事を考えると、胸がムカムカモヤモヤするのか。
そんなの答えは一つしか無い。
私は恋心を自覚すると同時に、失恋してしまった。
「会いたかった」
往生際悪く隠れた私を、隊長はあっという間に見つけてしまった。
「私は会いたくなかったです」
優しく微笑む隊長の顔を見ても辛くなるだけだ。
折角女子寮に来たなら、リリーさんとよろしくやればいい。私はもう用無しなんだから、そっとしておいて欲しい。
私は殻に閉じこもるように顔を伏せた。
「先生、話がしたい」
隊長もしゃがんだのか、さっきより近くから声が聞こえた。
「このままどうぞ」
「いや、ちゃんと聞いて欲しいし、話して欲しいんですが……」
「仕事の話ですか?」
「いえ、そう言う訳では……」
なら聞く必要はないな。私は顔を伏せたまま隊長の声がする方に背中を向けた。
「困ったな」
「おい、ババ……ユイ、隊長の話はちゃんと聞け!」
隊長の声が高い位置から聞こえ、立ち上がったんだなと思った瞬間、レインが耳元で叫んだ。
「うるさいな。仕事の話じゃないんだから、聞く必要は……」
レインに文句を言おうと後ろを振り返ると、いつの間にか隊長とすり替わっていた。
「なぜ、急に戻って来なくなったんですか?」
「隊長に、会いたくなかったからです」
私の言葉に隊長は狼狽えていた。
失恋したからと言って、隊長が悪い訳ではない。ちょっと言い方が酷かったかもしれない。
「いや、そうじゃなくて、私はもう用済みですから」
「用済みって、何の事ですか?」
「隊長だってもう私にベタベタされたくないですよね?そっとしておいてください」
隊長に背を向けて、もうこれ以上話すことはないと無言のアピールをした。
「業務隊長、そろそろ晩飯の時間なんで、皆を連れて食堂に行きます。どうぞごゆっくり。あ、あと良かったら、これ使ってください」
レインが隊長に向かって何か言っている。
「これは?」
「ユイが好きな焼き菓子です。顔の近くで振ったら出てくるんじゃないですか?」
私は犬か。
食堂に向かうざわめきが収まると、隊長が私の顔の近くでお菓子を振った。
「お願いですから出てきてください」
だから犬じゃあるまいし、そんなので釣られて出ていく訳が無い。
「隊長は私を何だと思っているんですか」
「恋人だと思ったんですが、逃げられてしまったので、何でしょう」
「え?何?」
思わず振り返って隊長を見てしまった。
「片想いの相手、でしょうか」
「違うと、思います、よ?」
隊長はリリーさんが好きなのに、何を言っているのかさっぱり意味が分からない。
私の知らないスラングか方言的何かなんだろうか。
「なら、やはり両想いなんですね」
隊長は嬉しそうにニカッと笑うと、私を抱き上げた。
「な、な、何をするんですか!」
いきなりのお姫様抱っこに、私は動揺が隠せない。
「このまま連れて帰ってもいいですか?」
「良くないです!」
私は隊長の胸元をバシバシと叩いて抗議した。
子供達が食堂に行きガランとした部屋で、隊長と私はテーブルに向かい合わせに座っている。
折角なので私はレインが置いていったお菓子を頬張った。
木の実がぎっしり詰まった焼き菓子は、いつ食べても美味しい。例え目の前に隊長がいても。
「先生は、ここで何をしていたんですか?」
「……子守りです」
もぐもぐしてから答えると、隊長は少し顔をしかめた。
「そうでは無く、ここに男達が来て、その、何かしてましたよね?」
「ああ、隊長もそれで来たんですね。いいですよ、やりましょう」
やはりさっきの意味不明な発言は、私の知らない別の意味があったんだろう。
隊長もシャツに漢字を書いて欲しくて来ただけだ。ひょっとしたらリリーさんに会いに来るついでなのかもしれない。
業務日誌を運んでくれていたレインが『唯』の字が書かれたシャツを着て隊舎をウロウロしたせいで、何人かが俺にもやってくれと押しかけてきた。異世界でも漢字は大人気だ。
他の字も勧めたけど、皆『唯』がいいと言うので、親衛隊のメンバーは増える一方だった。
「準備するんで、シャツを脱いでおいてください」
皆、中の肌着に書いてくれと言ってきてたから、隊長も同じでいいだろう。
さっさと書いてさっさと帰ってもらおう。
「シャツを、脱ぐ?」
「そのままの方が良かったですか?」
「いや……」
隊長がシャツを脱いでいる間に、筆と絵の具を取りに行く。
戻って来たら隊長は上半身裸になっていた。
「肌着は着たままでも良かったんですが、まあいいです」
隊長の肌着を真っ直ぐ伸ばすと、私は筆を構えた。
なぜかここの人達には『唯』の字が人気だけど、隊長のシャツに自分の名前は書きたくない。
私はしばらく考えてから、大きく『百合』と書いた。
なんだか女の子同士のキャッキャウフフが好きな人みたいになってしまった気もするけど、私が言わなければ問題ないだろう。
「何ですか?これは」
「私の国の字で、リリーを表す文字です」
「先生にやって貰うって、これ、ですか?」
「私もやりたくてやってる訳ではないですよ?何人かの人が、どうしてもと言うから」
私が道具を片付けて戻ってきても、隊長は上半身裸のまま頭を抱えていた。
「終わったんで、どうぞ」
シャツを差し出して、暗に早く出てけと言うと、隊長は私の手を掴んできた。
「そうだ、なぜ、リリーなんですか?」
「なぜって、好きだからですよ」
「誰が、誰を?」
私にそれを言えというのか。
「……隊長は、リリーさんが好きなんでしょう?」
心が悲鳴をあげそうだ。隊長も酷い事をする。
「もう、用が済んだなら早く出ていってください」
私は隊長の手を振り解くと、立ち上がって隊長側に回り、その身体をどしどしとどついた。
「なぜそんな風に思ったのか分かりませんが、私が好きなのは先生です」
私の攻撃に動じることなく、隊長は真剣な眼差しで私を見つめている。
「え、だって、リリーさんのために、我慢して、色々頑張っていたんじゃ……」
「色々って、何の事ですか」
「私と、色々、したじゃないですか」
「だから、なぜそこでリリーが出てくるんですか?」
「え?どう言う、事ですか?」
「それは私が聞きたいです」
隊長と私は顔を見合わせてしばらく固まってしまった。
「つまり、先生は私が不能で、練習の為に先生とあんな事をしたと」
なぜか私はテーブルの同じ側で隊長と向かい合って座り、見下ろされている。
腕組みをする隊長はまだ上半身裸で、剥き出しの筋肉が私に威圧感を与えている。
私は説教されているんだろうか。
「なぜそんな勘違いをしたんですか」
隊長は大きなため息をついた。
「女の人は抱けないって言っていたから、そうなのかなって」
隊長はまた大きなため息をついた。
「それに、ほら、いつもしかめっ面して、本当は嫌だったんじゃないですか?」
「我慢していたからです」
「やっぱり」
「そう言う意味ではなくて、先生を無理にでも自分の物にしてしまいそうだったので、我慢していたんです」
隊長にじっと見つめられ、私もなんと言っていいか分からず、黙って隊長を見つめた。
「ビラシュッドの街で、好きと言われたと思ったんですが、違うんですか?」
隊長の問い掛けに私は首をひねる。そんな事を言った覚えはない。
「言ってない、と思いますが」
私の言葉に隊長はあからさまにがっくりしていた。
「でも、好きです」
「え?」
「隊長が、好きです」
いざ口にすると、恥ずかしくて顔から火が出るかと思った。
「私も、先生が好きです」
隊長は嬉しそうに笑い、私に手を伸ばした。
「言っておきますが、私は好きでもない女性とあんな事はしません」
座ったまま抱き寄せられて、私は隊長の足にまたがるような格好になった。
「私だって……いや、どうかな」
力を使った後の私は欲望に極めて弱い。しないとは言い切れない、かもしれない。
「そこは我慢してください。私が先生を満たすと約束するので」
隊長はそう言うと、私の頭を大事そうに抱えてキスをした。
「んんっ、んっ……ふっ、んっ……」
舌が差し入れられ、角度を変えて何度も何度もされるキスに、私の身体からは力が抜ける。
隊長が言った通り両想いなんだなと思うと、嬉しいような、恥ずかしいような、蕩けるような気持ちでいっぱいになった。
「うわー!お姉ちゃんが裸のおじちゃんとチュッチュしてるー!」
部屋の扉が開く音と共に子供の叫び声が聞こえて、思わず隊長を突き飛ばした。
「おっ始めるにしても、場所を選べよ」
呆れた顔のレインはそう言うと、そっと扉を閉じた。
「おかーさーん!お姉ちゃんとおじちゃん、エッチなコトしてたー!」
「え、ちょっと待って!」
慌てて大声を出した私の後に、扉の外で走りながら叫ぶ声が続く。
「裸で抱き合ってたー!」
「ブチューってしてたー!」
「エッチー!」
段々小さくなる声に泣きそうになりながら、私は隊長の上から降りた。
「あの、これ、どうしたら」
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