癒やしの巫女と業務隊長

白玉しらす

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24.赤い顔でむくれる先生はとても可愛い

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 赤い顔のまま告げられた言葉に、心臓が止まるかと思った。
「隊長さんも……セオもとてもステキです」
 先生の口から出た俺の名は、甘く俺を痺れさせた。
「思わずキスしたくなるぐらい」
 先生が嬉しそうに俺の言葉を真似ると、もう我慢ができなかった。
「んっ……ふっ……」
 先生の口を貪るように味わえば、先生からは欲情を誘うような吐息が漏れる。
 スカートの中に手を差し入れ、上に向かって手を滑らすと、先生は慌てた様子で俺を止めた。
「ここ、外ですよ?」
「そうだな」
 それだけ言うと、俺の荒い息遣いを聞かせるように先生の耳を舐めた。
「ああっ、んっ……やめっ、んっ……」
 太ももに挟まれた手はそのままに、もう片方の手で舐めている耳とは反対側を塞ぐ。
「あっ、やっ……んんっ……だ、めっ……ああっ……」
 音を立てるように耳にキスをして、ねっとりと舌先で舐めると、先生は身体をビクつかせて感じていた。
「……はあっ……ユイ……」
「はっ、うっ……やっ、ああっ……」
 思わず漏れた名前に、先生は大きく反応した。
「ユイ……好きだ……愛している」
「んっ……ああっ、あっ……セ、オっ……んんっ……」
 先生は軽く身体を震わせると、くったりと身体を弛緩させた。

「隊長さん……ドレスが汚れたらどうするんですか」
 顔を赤くして荒い息を吐きながら、先生は不満を漏らした。
「すまない。濡れてしまったなら舐め取……」
「だから、ここは外ですってば」
 先生が俺の腹にパンチを入れてきた。全く痛くない。
「冗談だ。誰にも先生の乱れる姿は見せたくない」
「もう十分乱されました」
「確かに、耳を舐めただけでイクようだと心配だな」
「だって、隊長さんが……いやらしいから……」
 赤い顔でむくれる先生はとても可愛い。もっといやらしい事をしたくなってしまう。
「とにかく、先生はなるべく一人にならないように。あいつがいる間は女子寮に籠もっていてくれ。前みたいに子供達に混じって寝起きしていれば、誰も手を出せないだろう」
 欲望を押し込めて俺がそう告げると、先生は申し訳なさそうな顔をした。
「なんだか、色々ごめんなさい」
「あいつの事で謝らないでくれ。先生の問題は俺の問題でもある」
「隊長さん……セオ、ありがとう」 
 先生は目を細めて笑うと軽く唇にキスをした。
「大好きです」
「俺もだ、ユイ」
 俺からもキスをすると二人で笑い合い、俺達は何度となく口づけを交わした。


「砦の騎士が戦場に出て活躍した時代もあったそうですが、大した事ないんですね」
 翌日、訓練場で訓練を眺めていたラドフォードは、興味なさそうに呟いた。
「人と戦う訳ではないので、剣の使い方が違うのでしょう。それに、我々が得意とするのは弓です」
「そう言えば、あなた達は王都では騎士では無く、狩人と呼ばれていましたっけ」
 こいつは、俺達に喧嘩を売っているのか?
「呼び名は何でも構いません。魔物から人々を守る。それが私達の役割です」
「魔物ですか……そうだ、折角だから見せてくださいよ。魔物を倒すところ」
 軽い口調に苛立ちが隠せない。
「魔物を倒すにはそれなりの準備が必要なので」
「今ではグロースの災厄を知る者はほとんどいない。狩人が必要なのか、疑問に思う人も少なくないんですよ」
「倒した魔物の数は報告しています。実際、討伐後は毛皮や肉が市場に出ています。間引いているから災厄が起こらないんです」
「だからですよ。国が狩人を養う必要があるのかと言っているんです。要はただの獣でしょう?自由に狩って暮せばいい」
「自由に暮らしていけるほど、魔物を倒して得られる利益は多くはありません。それに、魔物は個人で狩れるようなものでもありません」
「それはあなた方が弱いからでは?違うと言うなら見せてくださいよ。見ない事には視察にならない」
 俺は拳を握りしめ、奥歯を噛み締めた。なんなんだこいつは。
「他に見るべき所は無さそうですし、今日はこれで失礼します。それでは明日、森への案内をお願いします」
 ラドフォードは言いたい事だけ言うと去っていった。
 俺はため息と共にその後ろ姿を見送ると、団長室に向かった。
 森に行くなら準備をしなければならない。
 団長にラドフォードの言葉を伝えたら荒れるだろうなと思うと、気が滅入った。


「くそが」
 翌朝、精鋭で班を作り門前で待機していると、団長が毒づいた。
「そんなに視察したけりゃ、魔物の胃袋の中でも視察すればいい」
「そんなこと言って、喜々として準備してたじゃないですか」
 俺の言葉に団長はニヤリと笑った。
「まあな、誰かと違って一戦力として戦うのは久し振りだからな。たまにはこう言うのもいい」
 ラドフォードの言葉を伝えると、団長は怒り狂っていたが、森に行く人員を選ぶ内楽しくなってきたようだった。
 他の仕事はそっちのけで準備に勤しんでいた。
「散々コケにされたんだ。本気出していくぞ」
 ラドフォードの言葉のどこまでが王都全体の考えかは分からない。それでも、魔物を軽く見る事だけは我慢ならなかった。

「お待たせしてしまったようですね」
 しばらく待っていると、軽装のラドフォードがひょっこり現れた。
「防具を用意させたはずですが」
「僕が所属する隊は、戦う時には防具を付けないんですよ」
 魔物と戦う時に一番大切な事は、逃げることだ。どんな重装備をした所で、体当たりを食らえば衝撃で死ぬ。
 ラドフォードが着ていた金属製の鎧では重過ぎて逃げ遅れるといけないと思い、革製の物を届けさせていた。
「戦って頂くつもりはありませんが、危険です」
 鎧と言っても動きやすさ優先なので、胸当てと手甲、足甲しか付けないが、あるのとないのとでは大違いだ。
「こんな人数がいて、まだ僕に危険があると?」
「念の為です」
「まあいいだろう。さっさと行って終わらせよう」
 団長は俺の肩を掴み話に割り込むと、小さくこんな奴食われちまえばいいと呟いた。

「ここがグロースの森……普通の森ですね」
 もう相槌する気にもなれず、俺はラドフォードを一瞥するとすぐに視線を前に戻した。
 森に入ればいつ魔物と出くわすか分からない。こんな男にかかずらっている場合ではない。
「来るぞ」
 団長が言葉を発した時にはもう、ラドフォードを除く全員が足を止め、同じ方向を見つめていた。
 言葉もなく、半円を描くように広がる。
「我々の内側には入らないでください。なるべく離れて待機を」
 前を向いたままラドフォードに声をかける。
「本当に、狩人みたいですね」
 嘲笑には耳を貸さず、弓をつがえる。
 低い唸り声と地面を踏みしめる音が近づいてくる。

 魔物が他の獣と一番違う所は、その攻撃性にある。奴らは生きる事よりも人間を襲う事を優先する。だから初手でより多くの矢を当てたい。
 一斉に弓を引く音が聞こえ、空気まで張り詰める。
「放て!」
 吠えるような団長の声を合図に矢が放たれ、魔物の身体に突き刺さった。
 唸り声をあげながら、それでも魔物は突進してくる。
 逃げる者に矢が当たらないように気をつけながら、取り囲み更に矢を放つ。
 何度目かの射撃で魔物が動きを止めると、弓から剣に持ち替える。
 じりじりと包囲の輪を縮めていくと、視界の端でラドフォードが剣を抜き緩く構えるのが見えた。
 その瞬間、考える前に身体が動いていた。
 ラドフォードは魔物に正対し、一直線に駆け寄っていく。
「くそっ」
 このままだとあいつの剣が届く方が早い。
 一撃食らわした後直ぐに逃げてくれればいいが、あの舐め腐った動きだと、それは期待できそうにない。
 そう思うのと同時に、ラドフォードは魔物を斬りつけ、あろうことか魔物の前で剣を下ろし立ち止まった。
「なんだ、大した事……」
 俺はラドフォードに飛びかかり、ぶん殴る勢いで突き飛ばした。
 次の瞬間、俺の肩口に鋭い痛みが走る。
 血飛沫が舞い、骨が砕ける音が聞こえる。
 このまま食われると思ったら、魔物は俺を離し断末魔の咆哮をあげた。

 身体が動かずそのまま崩れ落ちると、団長が俺を掴んで投げ飛ばし、ラドフォードを蹴り飛ばしていた。
 まるで水中にいるかのように、視界も聴覚も鈍くぼんやりとした中、俯瞰するように全体が把握できた。
 俺がラドフォードを突き飛ばした瞬間、皆一斉に魔物に剣を突き立てたんだろう。
 魔物が狂ったように腕を振り回し、何人かが吹き飛ばされていた。
「業務隊長!大丈夫ですか!」
 顔から血を流した騎士が、俺に声をかけながら包帯をぐるぐると巻いているのは分かるが、それに答える事はできなかった。
「邪魔だ!さっさと退け!」
 団長が、蹴り飛ばされたまま呆然としているラドフォードから剣を取り上げ、更に蹴り飛ばした。
 雄叫びを上げながら剣を投げるように突き立てると、魔物はどさりと崩れ落ちた。
「くそが!」
 団長が腹立ち紛れにラドフォードを殴るのを最後に、俺の意識は暗い闇へと落ちていった。 
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