23 / 34
第23話 “夢”を操る力を持っている人
しおりを挟む「え? 夢関連の力を持った人?」
「はい。どんな形でも構わないけれど、そういう力を持った方がいれば……と」
シグルド様が悩んだ様子で聞き返してくる。
「…………ルキアはどうしてそう思ったの?」
「外で倒れていた看守が、眠らされていて今も目覚めないからです」
人を眠らせる攻撃は普通にあるけれど、そんなに持続はしないもの。
なので今も目覚める気配の無い彼が何らかの特別な力を使われた事は明らかだった。
「もし、夢に関連する力を使える人がいたなら、私の悪夢も同じ人の仕業かしれないわ」
てっきりあの時見せられた悪夢は呪術の一つだと思っていたけれど、特別な力を持った人であれば、呪いや黒魔術などという禁忌の力を使わなくても悪夢を見せる事が可能かもしれない。
ただ、そうなるとやっぱり、どう考えても私にはミネルヴァ様にそこまでの力があるようには思えなかった。
そうなると浮かび上がるのはミネルヴァ様の協力者となる。
「夢か……私が知っている中に一人だけいるにはいるよ」
「では、その人が!」
怪しいのでは? と言いかけたのだけど、シグルド様はうーん考える様子を見せる。
「何か問題のある方なのですか?」
「いや、問題と言うか……ティティ男爵令嬢との繋がりが見つけられない」
「……? どういう事です?」
私が聞き返すと、シグルド様はそっと私の頭を撫でながら言った。
「……叔父上だ」
「え?」
「私の知っている“夢”関連の力を持った人物は叔父上……ハーワード公爵なんだよ」
(───えぇええ!?)
さすがの大物登場に私は驚きを隠せない。
「まさか、公爵様がミネルヴァ様に協力を?」
「と、思いたくなる気持ちは分かるのだけど、さっきも言ったようにティティ男爵令嬢との繋がりが見つけられないんだよ」
「え?」
「ルキアは今、叔父上が何処にいるか知っている?」
「……あ!」
シグルド様に言われて、そう言えば……と思い出す。
ハーワード公爵様は、現在、領地に戻っていて今、王都にいない。
それも、まだ、私が力を失くす前……つまり、ミネルヴァ様が現れる前に、突然引退宣言のようなものをして奥様と共に領地に戻って生活をしている。そこから表舞台には現れていない。
だからこそ、騎士団の責任者は息子のブラッド様に引き継がれていたわけで……
「確かに接点が、感じられないし私の悪夢はともかく看守の件は絶対に違う」
「そうなんだよ」
こっそり王都に来ていない限りは有り得ない話。
だけど、あんな大物がこっそり王都に入ってこそこそした行動なんて出来るかと言われれば……
(絶対に無理ね)
「少なくとも私の知っている限りだけど、ハーワード公爵夫妻が現在、王都に来ているなんて話は聞いていない」
シグルド様がそう言うのだからその通りなのだろう。
「そう……」
違ったのかと私はがっくり肩を落とす。
(せっかく何らかの手がかりが掴めたと思ったのに……)
「ルキア、そんな顔をしないでくれ」
「……シグルド様?」
「ルキアの可愛い顔が曇っている」
「……! も、もう!!」
シグルド様ったらいつもそんな事ばかり言うのだから───……
と言いたかったのに、シグルド様の唇が私の唇を塞いでしまったので何も言えなくなってしまった。
(あ、これはただのキスだわ)
何かの力を流しているわけではない。
ただ“好きだ”からするキス。
シグルド様のそんな想いが私に伝わって来る。
「あぁ、ダメだと分かっていても……このまま、ルキアと朝まで過ごしたい……」
「っっ!?」
シグルド様がキスの合間にとんでもない発言をする。
「へ、変な事はしないって! 言っ…………ん、」
「言ったけど! “今から寝るところです”というルキアを初めて見たから、こう、気持ちが……」
シグルド様の興奮が止まらない。
「ルキア、好きだよ」
「シグ、ルド様……」
「父上がなんと言って来ても、あの女が何を企もうとも……どんな奴が協力者となっていても私の最愛はルキアだけだ」
(……あ、今度は力が流れ込んでくる)
甘い甘いキスと力の供給をされながら、王宮での夜は過ぎて行った。
****
「ミネルヴァ様はどこにいるの!」
「落ち着いて? ルキア」
「……」
あれから3日経ったけれど、ミネルヴァ様の行方は分からないままだった。
ただ、殴られて昏倒していた方の看守は目を覚ました為、彼からの話は聞くことが出来た。
しかし──
『最初に、外で物音がしました。“うわぁ”という悲鳴と人が倒れる音です』
何だろうと扉を開けると同僚が倒れていた。
『どうしたんだ!? と、駆け寄ろうとした所でガツンと頭を殴られました』
その殴って来た相手の姿は見たのか? という問いには首を横に振ったと言う。
『一瞬だけ姿が見えましたけどフードを深く被っていて顔は全く分かりませんでした。また、この時、牢屋にいたはずの男爵令嬢は騒ぐこともなく静かでした』
この証言を受けて、ミネルヴァ様の逃亡には協力者がいた事がはっきりした。
そして、やはり計画的なものだったようにも思えた。
「ついでに言うなら協力者は魔力の強い人だと思うよ」
「どうしてですか?」
「だってさ……」
シグルド様が言うには、牢屋の看守に選ばれる人達はそれなりに魔力も多く鍛えられている人が多い。
殴られていた方の看守はともかく、未だに目覚めない方の看守を眠らせるという事は、その彼よりも強い力を持った人であるという証拠──
「…………そうなると、自ずと絞られては来るんだけどね」
「シグルド様?」
「いや? 何でもないよ、ルキア」
シグルド様は優しく笑って私の頭を撫でて、額にキスをした。
この時、シグルド様が呟いたその声を私がちゃんと聞けていたのなら。
そして、その呟いた内容をもう少し追求していたのなら。
この後やって来る未来は違っていたかもしれない────
59
あなたにおすすめの小説
【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」
仙冬可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。
「で、政略結婚って言われましてもお父様……」
優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。
適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。
それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。
のんびりに見えて豪胆な令嬢と
体力系にしか自信がないワンコ令息
24.4.87 本編完結
以降不定期で番外編予定
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
大好きな婚約者に「距離を置こう」と言われました
ミズメ
恋愛
感情表現が乏しいせいで""氷鉄令嬢""と呼ばれている侯爵令嬢のフェリシアは、婚約者のアーサー殿下に唐突に距離を置くことを告げられる。
これは婚約破棄の危機――そう思ったフェリシアは色々と自分磨きに励むけれど、なぜだか上手くいかない。
とある夜会で、アーサーの隣に見知らぬ金髪の令嬢がいたという話を聞いてしまって……!?
重すぎる愛が故に婚約者に接近することができないアーサーと、なんとしても距離を縮めたいフェリシアの接近禁止の婚約騒動。
○カクヨム、小説家になろうさまにも掲載/全部書き終えてます
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました
22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。
華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。
そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!?
「……なぜ私なんですか?」
「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」
ーーそんなこと言われても困ります!
目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。
しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!?
「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」
逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?
転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?
朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!
「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」
王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。
不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。
もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた?
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)
聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました
さら
恋愛
王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。
ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。
「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?
畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる