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19. 激重デレデレの愛?
しおりを挟む(あー、スッキリしましたわ!)
お父様……だった人に言いたかったことも言えましたし、仕返し……とは違うかもしれませんが、これから暫くは続くであろう苦しみを与えることも出来ましたわ!
(……これくらいは許されますわよね?)
そう思った時、クラッと軽い立ち眩みが起きました。
「……これ以上は危険ですわ、ね」
真実の瞳の能力を発動しながら、増強と呪いの力でお父様を平手打ち──
さすがに魔力を使いすぎましたわ……
きっと、昔の私ならとっくに倒れていたに違いありません。
(もう、いいですわよね?)
まだ、フィルムレド国の二人への問い質し(脅し)が残ってはいますが、あれだけ手紙の内容を暴露したのですから、もう“真実の瞳”は制御することにしました。
そうして、戦いを終えて満足していた私の元に殿下が近づいて来ました。
すごく真剣な顔をしているので、どうしたのかしら? と不思議に思いました。
そこで、ハッとします。
(……ま、まさか、呪いの魔術を使ったことに関するお咎めではありませんわよね!?)
一瞬だけそんな考えが頭をよぎりましたが、イライアス殿下はきっと怒ったりしませんわ。
殿下なら私の気持ちを分かってくれていると信じています。
「……リリー、君に話がある」
「殿下?」
ですけど、やっぱり話はあるようですわ。
なにかしら?
「どうしました?」
「リリー……僕は……」
「殿下?」
どうしたというのでしょう?
ものすごい鬼気迫る真剣な表情をしていますわ。
そして、なぜですの? ほんのり頬が赤い……
怒っている、とは違うようにも思えますが、もしかして……
(私、知らないうちに何か殿下が不快になることをしてしまっ──)
「────好きだ」
「え?」
(好き?)
殿下による突然の“告白”に最初に頭に浮かんだのは「何をです?」でしたわ。
もしかして!
あの呪いが殿下のお好みだったのかしら?
そんな阿呆なことを頭に思い浮かべていましたら、殿下は畳み掛けるように言いました。
しかも、先程より顔が赤いです。
「……っ! 僕はリリー……いや、リリーベル。君のことが好きなんだ!」
(……え?)
───キミノコトガスキナンダ?
キミ……君……私? スキ……好き……?
(…………え? え?)
ようやく、頭が回り始めます。
こ、これって──まさか! ああああ愛……あ、愛の告白というやつ……ではありませんの!?
私の心臓がバックンバックン鳴っています。
確かに私のことは大事に思ってくれているとは言ってくれていました。
ですが、殿下が私のことを好───?
(ど、どうしましょう、嬉し……)
そう思いかけた所でハッとします。
───いいえ、落ち着きなさい、落ち着くのよ、リリーベル!
私は自分に言い聞かせました。
早とちりはいけませんわ。
殿下の言うこの“好き”は、人として……という意味かもしれませんわ!
そう思ったのですが──……
殿下が腕を伸ばしてそっと私を抱きしめます。
そして、私の耳元で言いました。
「……リリー。どうか勘違いはしないで欲しい」
「勘違、い?」
「───そうだ。僕は君を一人の女性としてずっと好んでいて……愛しているんだ」
「あ……愛!」
(愛だった! 愛でしたわーーーー!)
私が盛大に戸惑っていると、殿下は腕にギュッと力を込めます。
それと同時に殿下の心臓の音が私の耳に聴こえてきました。
バクバクバクバクバクバク……!!
(………………は、早っ!?)
あまりの早さに思わず頭を上げて、殿下の顔を見ました。
「殿下のお顔、ま、まま、真っ赤ですわ!?」
「……あ、当たり前……だろう? な、長年、溜め込んだ愛を告げて、いるんだ……から」
ここまで真っ赤になって口篭る殿下を私は初めて見たかもしれません。
釣られて私の顔もどんどん赤くなります。
「な、長年の……愛?」
「そうだよ、僕はずっとずっとずっとずっと前からリリーのことを愛している」
「あ、愛……? ですが妹……」
「妹!?」
私の口からつい零れた“妹”という言葉に殿下は慌てたように言いました。
「……っ! トラヴィスのリリーへ向ける妹愛とは違うぞ! 君は僕の妹じゃないんだから!」
「お兄様とは違う……」
「そうだ! トラヴィスが夫人に向けている……あのような想いの愛だ!」
お兄様がマルヴィナお義姉様な向けるような愛……?
そう言われて私の中に、いつもイチャイチャしている二人の姿が浮かびます。
「……お兄様のマルヴィナさんへの“愛”は重たいですわ……? 激重ですの」
ゴフッ……
近くでお兄様のむせる声が聞こえました。
「そうだろうな……トラヴィスは口を開けばリリーか夫人のことしか語らない。そして、夫人のことを語る時は鼻の下を伸ばしてこれまたデレデレのデレデレだ」
「デレデレ……分かりますわ」
おい、リリー!
そんなお兄様の声が聞こえた気がしますが、それどころではありません。
今、私の頭の中は殿下でいっぱいですの。
「……僕もそんな想いをリリーに抱いているんだ!!」
「!!」
──なんですって!?
あ、あのお兄様の激重デレデレと同じ想いを!?
「で、殿下も……私にデレデレなんですの?」
「そうだよ」
間髪入れずにそう答えた殿下がそっと私の髪にキスを落とします。
「リリーは昔から飛び抜けて可愛かったけど、どんどん綺麗に成長して……でも、君の中身はトラヴィスのことが大好きな可愛いまま。ちょっと兄好きが羽目を外した時もあったけど、リリーは子供の頃から変わらない。可愛くて可愛くて照れ屋さんで……ちょっと意地っ張りな所も僕は大好きだ」
「……!」
(ど、どうしたらいいんですの!?)
先程から、私の心臓がおかしいですわ!
バクバクとものすごい早さで鼓動を刻んだかと思えば……突然、キュッとなったり、キュンッとなったりするんですの……!
「リリー」
「は、はい……」
私の動揺が伝わってしまっているからでしょうか?
殿下が優しく私の頭を撫でました。
「……僕と君が結婚するまであと二年ある」
「そ、そうですわね?」
「その二年の間に、リリーにも僕のことを好きになって欲しい!」
「え? 好……?」
それはとても長い長い提案ですわ。
ですが、そんな長い時間を貰わなくても私だって──
「そ、そんな長期戦でよろしいんですの!? 何が起こるか分かりませんわよ!? もっと他に素敵な魅力的な女性が殿下の前に……」
「うん。他の人のことは別にいい。誰がなんと言おうと僕はリリー、君を手放す気はないから」
「……」
ほら、また私の胸がキュッとなるんですの。
あたたかくて、嬉しくて……
お兄様がくれるのとは違う……愛。
そして、私が殿下に抱く気持ちもお兄様へ向けた大好きとは違う───……
(これって、私も殿下のことが好きってこと……なのかしら?)
カリーナ様やアリーリャ王女のとった行動に嫉妬したり、お父様に婚約破棄するように言われた時に感じた気持ち……
「私、殿下には他に想う人がいると……思っていましたの」
「……それは噂のせい?」
「そ、それだけではなく……アリーリャ王女が好みのタイプ……なのかしらとお、思い込んで……」
「は?」
私がそう言うと殿下は苦虫を噛み潰したような表情になりました。
その誤解が屈辱だということが伝わって来ます。
「僕の好みのタイプは今も昔もリリー……って言うより、僕の心にはリリーしかいないのに」
「変な誤解をしてご、ごめんなさい……」
私が慌てて謝ると、殿下は優しい笑顔を向けてくれました。
「いいよ、はっきり君に想いを告げていなかった僕が悪い。しかし、そうか。やっぱりあの王女たちは邪魔だな」
そう言って殿下がアリーリャ王女とアンディ王子に目を向けました。
二人はずっとこちらを見ながら固まったままです。
「──うん……そうだな。どうやらリリーの心を惑わす存在のようだしね。先に処分することにしようか?」
「え? しょ……ぶん?」
《え……!?》
《え!?》
殿下はにっこり笑ってそう言いました。
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