そんなに嫌いで好きで怖いなら…… 《シリーズ番外編》

Rohdea

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後日談・番外編

ブラックコーヒー事件 ~ミュゼット&ラファエル~

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「……ミュゼット」
「ラファエル様?  どうなさいましたの?」

  ……ぶぉん?

  お父様が残した余計な縁談話のせいで、未だに残っているわたくしへの求婚者を蹴散らす為にもラファエル様とイチャイチャすると決めた夜会!
   その夜会への会場入りをしたわたくし達も最初こそ注目を集めておりましたが、さすがに皆様も興味を失ったのかようやく不躾な視線も今は落ち着いて来たようですわ。

  (それでも、イチャイチャは決行しなくてはなりません!)

「……あぁ、駄目だ。ミュゼットが可愛すぎて目が離せない」
「ラファエル様??」

  ぶぉん、ぶぉん?

  ラファエル様がそんな事を口にしながらわたくしを抱き寄せて来ましたわ。

  あぁぁ、せっかく落ち着いていた視線もぶり返しているではありませんか!
  全く、ラファエル様ったらなんて事を仰るのかしら。 縦ロールも動揺していましてよ!
  しかし。
  はっ!  これは!!  と、わたくしの頭の中で名案が浮かびましたの。

  (皆様の見ている前で、このままわたくしがラファエル様にギュッと抱きつけばイチャイチャの見せつけとなりますわ!)

「ラファエル様!」
「え!?」

  わたくしはそのままラファエル様の首に腕を回してギュッと彼に抱き着きます。
  イチャイチャ開始ですわよーー!

  ぶぉん、ぶぉん、ぶぉぉぉん!

  ふふふ、縦ロールも気合満タンでしてよ!

「ミュ、ミュ……ミュゼット!?」
「どうしてそんなに驚くんですの?  ラファエル様、わたくしを目が離せないと仰ったのに!」
「そ、それはそうなんだが……縦ロールでは無く、照れ屋のミュゼットからこんな分かりやすく愛を示してくるなんて……!」

  あら?  ラファエル様がオロオロするなんて珍しいですわ。
  ふふふ、なんて楽しいのかしら?
  いつもは、わたくしばかり翻弄されているんですもの。

「わ、わたくしだってラファエル様の事をあ、愛してます、もの」

  わたくしは頬を染め照れながらそう伝えます。

  ぶぉぉん、ぶぉん……

「あー……何だこの生殺し……ミュゼット。もしかして君は分かっててやっている?」
「何がですの?」
「……だよな」

  ラファエル様は一瞬黙り込みまして、なんとそのままわたくしに顔を近付けて参りました。

  (……ん?)

  ぶぉん?

  ───チュッ!

「!?」

  きゃぁぁーーー!?
  うぉぉぉーーーー!?  
  見ちゃったァァァァーー!!

  な、な、何と言うことでしょう!
  ラファエル様ったら皆様の前で、く、く、唇にく、く、口付け……を!
  おそらくですが、この様子をばっちり目撃したと思われる方々の悲鳴のような叫びも聞こえましたわ。

  ぶぉぉぉん、ぶぉん、ぶぉん、ぶぉぉん!

  あまり驚きに縦ロールがラファエル様にペチペチ攻撃を開始します。

「痛っ、こら、ミュゼット!  頼むからペチペチは程々にしてくれよ」
「で、で、ですが!  ラファエル様がっっ!」

  さ、さすがにく、皆様の前での口付けは恥ずかしいですわ!

  ぶぉん、ぶぉん、ぶぉぶぉーーん!

「ん?  あぁ、そうか。皆の前で口付けたからか?  ははは、本当に照れ屋で可愛いなぁ、ミュゼットは」
「か、か、か……」

  ぶぉ、ぶぉん、ぶぉーん!

「え?  可愛いとかそういう問題じゃない?  いや、何を言っているんだ?  ミュゼットは可愛いだろ?  そんなにプルプルしながら顔を真っ赤にさせて」
「だ、だ……」

  (誰のせいだと思っているんですのーー!)

  ぶぉぉぉーーん!

  ペチペチ攻撃ですわよ!

「くっ……地味にペチペチが効くな……いいか?  ミュゼット。俺はこの夜会でミュゼットは俺のミュゼットだと皆に示さなくてはならないという大事な使命があるんだ」
「し、使命……!  そ、そうなんですの?」
「そうだ」

  驚きですわ!
  まさか、ラファエル様までもがわたくしと同じ様な使命があったなんて!

「そうしないと不安なんだ。俺の可愛いミュゼットは、魅力がありすぎて大変だから」
「ラファエル様……」
「だから、ここは俺とたくさんイチャイチャして欲しいんだ」
「イチャイチャ……」

  ──チュッ!

  ラファエル様は今度はそう言いながら、わたくしの頬に口付けを落とします。

  ぶぉん、ぶぉん、ぶぉん!

「そうか!  イチャイチャしてくれるのか!  ありがとう、ミュゼット!」
「お待ち下さい、ラファエル様!?  わ、わたくしはまだ何も……」

  ぶぉーん、ぶぉんぶぉん!

「でも、唇への口付けは二人きりの時がいい?  俺は気にしないんだが……そうか照れ屋さんだもんな。仕方ないか」
「っ!」

  ぶぉーーーん!

  (ちょっと縦ロールわたくし!  何を勝手に答えているんですのーーー!!)

  わたくしの自慢の縦ロールは相変わらずラファエル様へ勝手に返事をしてしまいます。

「うん。だが、頬へは許してくれるだろう?」
「え? あ……」

  ぶぉん……

「ミュゼット、愛してるよ」
「!」

  そんな愛の言葉を囁くラファエル様のわたくしの頬への口付けは止まる事を知りません。

  チュッ、チュッ……

  ぶぉん、ぶぉん、ぶぉーん!!

  ラファエル様からのたくさんの口付けに答えるかのように縦ロールも元気に荒ぶります。

  (あぁ、もう……やっぱりラファエル様には逆らえませんわ……)

  そう観念したわたくしは、再びギュッとラファエル様に抱き着きました。

「……っ!  ミュゼ!」
「え?」

  ──ぶぉん?

  この行為が更にラファエル様に火をつけた事は明らかでして、ラファエル様はわたくしをギューッと抱きしめ返しながら耳元で愛を囁きます。

「可愛い可愛い俺のミュゼット……」
「ん……」

  (耳元は反則ですわーーー)

  きゃぁぁぁぁー!!!
  うわぁぁ、甘いぃぃぃぃーー!
  口がぁぁぁぁーーーー!!

  何やら会場が騒がしいです。

  (甘い?  口が?  何の話でしょう??)

  ぶぉん?  ぶぉん?

  一体皆様に何が……?

「……ミュゼット、余所見なんかしないで俺だけを見て?」
「あぅ……ラファエル……様」  

  周囲が気になってしまったわたくしをラファエル様は許しません。
  独占欲が強いですわ!!

   
  チュッ、チュッ……

  ぶぉん、ぶぉん!

 
  ───こうして、わたくしは狙い通り……いえ、少し思っていたよりも激しかったですが、ラファエル様とイチャイチャを無事に開始しました。
  えぇ、これが開始です!
  つまりは、この後も続くのですわ!  
  だって、まだこの時は会場入りしてすぐの話でしてよ?  
  夜会は始まったばかりですもの。

「ミュゼ……」
「きゃ!  ラファエル様、どこ触って!?  ……んむっ」
「愛してるよ」
「~~!」

  ぶぉん、ぶぉんぶぉん!

  
  ───こうして、ひたすら甘い甘いわたくし達と苦さを求めて悶える会場の方々と荒ぶる縦ロールは伝説になりましたわ!


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