そんなに嫌いで好きで怖いなら…… 《シリーズ番外編》

Rohdea

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後日談・番外編

ブラックコーヒー事件 ~アリーチェ&エドワード

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  その日の夜会で私は遂に見つけた!

「エド様!  ありましたよ」
「……あったってコーヒーか?」
「そうです!  甘い恋人達の雰囲気にのまれた参加者達が苦いものを求めて行列を作るという噂のブラックコーヒーです!  やっと出会えました」

  私が嬉しそうに語るとエドワード様は呆れたような表情になる。

「……これってつまり、アレだよな?  えっと、ルフェルウス殿下、もしくは縦ロール令嬢が巻き起こしてるんだろ?」

  エドワード様はコーヒーを見ながら「何なんだよアイツらは……」とブツブツ文句を言っている。

「そう言えば、エド様って」
「ん?」
「王太子殿下はともかく、噂の縦ロール令嬢とも面識があったのですよね?」
「……まぁ、学園でな」

  記憶喪失になる前もそうだったけれど、記憶を取り戻したエドワード様はあまりその頃の事を語りたがらない。

  (何を聞いてもアリーチェは知らなくていいって言うんだもの!)

「……どんな方なんですか?」
「誰がだ?」
「噂の縦ロール令嬢です。私は縦ロールが凄い、婚約者の王子様の愛が重いという話しか知りません」
「……それだけ知ってれば充分じゃないか?  その噂まんまだよ」
「もう!」

  それだけだとよく分からないから聞いているのに!

「……ぶぉん!  って音がするんだよ」
「え?」
「縦ロール令嬢の髪だよ」

  私の不満を感じ取ったエドワード様が渋々、話をしてくれる。

「ぶぉん?」
「そう。ぶぉん!  髪の毛がだぞ?」
「……」

  うーん。エドワード様ったら、私が何も知らないと思って私の事をからかっているのかしら?
  人間の髪の毛は、例え風に靡いたとしても、ぶぉん!  なんて音はしないと思うわ。

「あぁ!  ほら、そんな顔をすると思ったから言いたくなかったんだよ!」 
「……えぇ?」

  そう言われて私は思わず自分の顔を押さえる。
  私ったら今、どんな顔をしているのかしら?

「アリーチェ、隠すな。可愛い顔を見せて」
「エド様?」

  エドワード様が顔を覆っていた私の手を取って、まじまじと私の顔を見つめて来る。

  (ド、ドキドキするわ!)

「頼むからアリーチェの可愛い顔は隠さないでくれよ」
「エ、エ、エド様!?」
「勿体ないだろ?」
「あ……う……」

  そう言って迫って来るエドワード様がクイッと私の顎を持ち上げ──……

  チュッ

  軽く私の唇にキスをする。

  (!!  ここは夜会よーー!?  人前ーー!!)

「エ、エ、エドエドワード様!!」
「ごめん、アリーチェが、可愛すぎて我慢出来なかった。でも大丈夫。殿下達とは違う。俺達だぞ?  注目を集める存在ではないから誰も見てはいなー……」

  きゃーーーー!  見たぁ、今の?
  キスしていたわよぉーーー!

  エドワード様の予想に反して会場はザワザワしていた。

「……」
「……」
「エド様」
「すまない」

  エドワード様はバツの悪そうな顔を私に向ける。

「こう、アリーチェを見ていると……その……ムラムラが止まらない……と言うか……うん。とにかく無理なんだよ」
「……ムラムラ!?」

  エドワード様が変な事を口走るので、私の顔はますます赤くなる。

  (本当にエドワード様ったら!)

「……エド様は、本当に私の事が大好きなんですね?」
「あぁ、大好きだ!!!!」
「っ!」

  間髪入れずに即答するエドワード様。
  照れさせようと思ってそう口にしたのに、私の方が照れてしまう。
  本当にあの記憶を失くす前の冷たかったエドワード様が嘘のよう。

「アリーチェ……」
「ん……エド様」

  エドワード様が手を伸ばして優しく私を抱き寄せる。

「大好きだ。ずっと」
「ふふ、知ってます。もう、誤解したりしませんよ?」
「……」
「そんな顔しないで下さいな?」

  きっとあのすれ違った時間は私達に必要な時間だったはずなのだから。
  そんな思いを込めて私もギューっと抱きしめ返す。

「私も大好きです!  エド様!」
「アリーチェ……あぁ、もうダメだ!  我慢出来ない!!」

  すると、突然エドワード様が叫び出す。

「ダメ?  エド様??」

  何事かと思って驚いていると、真剣な顔をしたエドワード様が私に向かって言った。

「アリーチェ!  俺達の結婚式の予定は変えられないが、籍だけは早く入れよう!  一日でも早く!」
「え?」

  突然、何を言い出したの?

「こうしてはいられない!  父上達に相談だ!!」
「きゃっ!  エド様……!?」

  何かを決意したエドワード様は私を横抱きにして抱き抱えると、そのまま会場を後にした。

「コ、コーヒー……」
「ん?  どうした?」
「コーヒー飲みたかったのに……」

  だって、あれはリスティ様と王太子殿下もしくは、噂の縦ロール令嬢が来る夜会に出るって聞いてたからやっと飲めると思っていたのにー!

「大丈夫だよ、また、遭遇する事もあるさ!  アイツらはどこでもイチャイチャしてるんだからさ」
「うぅ……」

  そうしてその日のブラックコーヒーは泣く泣く見送る事になった私だったけれど……




「……あれ?  今日もブラックコーヒーがあるわ」
「最近は毎回当たるな」
「この間、私達が参加した夜会にもありましたけど、噂のカップルはどちらも出席者では無かったんですよね」
「そう言えばそうだったな……どういう事なんだろうな?」
「不思議ですね」

  私とエドワード様は揃って首を傾げた。


  ───私達は知らない。
  私とエドワード様も、自分達が出席するパーティーや夜会ではブラックコーヒーを用意しなくてはならないカップルへと昇格していた事を───……


  
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みんなの感想(21件)

sanzo
2025.07.18 sanzo
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hyperclockup
2022.07.04 hyperclockup
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碧.y
2022.06.03 碧.y
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