【完結】出来損ないと罵られ続けた“無能な姫”は、姉の代わりに嫁ぐ事になりましたが幸せです ~あなた達の後悔なんて知りません~

Rohdea

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第21話 偶然でないのなら

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「クローディア、今日はもう寝ようか。ベッドに移動しよう!」
「え?」

 ベルナルド様が何故か満面の笑みで私をベッドへと誘導する。

「ナターシャ王女の動向には監視をつけているし、あの様子なら今は何かする事もないだろう?」
「そう、ですが……」
「それなら今、俺はクローディアともっとこうしていたい」

 ───チュッ
 ベルナルド様の唇がそっと私の唇に触れる。

「さて。今夜はどんな格好で俺を誘惑してくれるのかな?  可愛い奥さん」
「!」

 ベルナルド様は私を軽く抱き上げてベッドまで運び、座らせるとそのままガウンに手をかけながら、うっとりした顔でとんでもない事を言った。

「こうして毎晩脱がすのも楽しみではあるけれど、いつか……そうだな、結婚したらガウン無しで出迎えてくれたら幸せだなぁ……」
「……っ!?」

(な、何ですって!?)

 私はその言葉に軽くショックを受ける。
 ショックを受けた理由は、そんなはしたない行動をするなんて出来ません!

 ……ではなく。

 やっぱり、いつもと同じ事ばかりでは飽きられてしまうのかも!  だった。

「……」

(侍女が言っていたもの。こうして、夜着に豊富な種類があるのは恋人や夫を飽きさせない為なのだと!  さすが考えられているわよね)

 いつもいつもベルナルド様にベッドに運ばれてガウンを脱がされて、押し倒されているだけではダメなんだわ。
 彼に飽きられないようにしなくては───

(もう、夜着だけで悩殺する作戦は古いのかもしれない。こうなったら……!)

「ベルナルド様……」
「うん?  どうした?  可愛いクロー……」
「私、あなたが大好きです」
「へ?」

 私は勇気を振り絞ってそう口にすると、ベルナルド様の首に腕を回して自分から彼に近付き……
 ───チュッ
 と、自分からベルナルド様の唇に自分の唇を重ねた。

「クロー……」
「あなたを愛しています、ベルナルド様」

 チュッ
 そう言って私はもう一度自分からベルナルド様へと口付けた。
 しかし、その際に勢い余ってしまい、なんとそのまま私が彼を押し倒してしまう。

(あ……!?)

 ボスンッと音を立ててベッドに倒れ込む私達。

(…………あ、あら?)

 さすがに、これは自分でも想定しておらず戸惑う。
 だけど、この状況をベルナルド様に説明しないわけにはいかない。

「べ、ベルナルド様!  えっと、こ、これはですね……」
「……」
「ちょっと、あ、飽きられないように私からも!  って思いまして」

 ベルナルド様の眉がピクリと反応する。

「……飽きる?  俺が?  クローディアを?」
「は、はい……だって、大好きな人には、ずっと自分を好きでいて欲しいじゃないですか。だから、私からも頑張ろうって……」
「……」
「え…………えぇっ!?  ベルナルド様ーー!?」

 どうにかしどろもどろ説明を始めたら、何故か目の前でベルナルド様が鼻から血を流し始めた。

「は、鼻血だわ……大丈夫ですか!?」
「うっ、無理……こんな可愛いのどうすればいい?  え、もう我慢しなくてもいいかなぁ?  いいよね?」
「えっと?」

 鼻血の心配をしているのに、会話が噛み合わない。
 何がいいよね、なの?

「ベルナルド様?  頓珍漢な事を言っていないでですね、その鼻血を止め──」
「うん、分かっている。でも、クローディアが可愛すぎてこの興奮が止まる気がしないんだ」
「え?」

 私が聞き返すと、ベルナルド様は鼻血を流しながらもキリッとした表情で言った。
 鼻血のせいで全然決まらない。

「だって、最愛の女性にそんな刺激的な格好と体勢で迫られたうえ、めちゃくちゃ可愛いことまで言われて興奮しない男がいたらそれは男じゃない!」
「は、い!?」

 ベルナルド様の謎の力説に私の思考はしばらく停止した。


 ちなみに、この後、無事に鼻血が止まったベルナルド様に今度は私がベッドに押し倒された。
 そのまま“ちょっとお仕置”と言われてたくさん愛でられる事になった。



◇◇◇◇

   

「クローディア。また、不思議な話があるんだけど」

 その日、執務中であるはずのベルナルド様が私を訪ねて来て、またまたどこかで聞いたような言葉を口にした。

「また不思議な話、ですか?」

 お姉様が謎の動きをしているという話を聞いてから数日。
 未だにファーレンハイト国にお姉様が現れる様子はなく、滞在しているアピリンツの国境付近の町から動いていないと言う。

(やっぱり、お兄様の到着を待っているのかしら?)

 ベルナルド様が言うには、アピリンツ国の天候は今も荒れに荒れているから、お兄様が国境付近に移動する事も困難で時間がかかっているのでは?  と言っていた。
 また、お姉様の滞在している町も天候も含め、色々と穏やかではないらしいので、あのお姉様が何時まで大人しく待っていられるかは分からないわね、と私は思っていた。

(いっそのこと、このまま大人しく諦めてくれたらいいのに……)

 そこまで考えて、まだベルナルド様の話の途中だった事を思い出し、その不思議な話とやらに耳を傾ける。

「それで?  何があったのですか?」
「うーん、上手く言えないんだけど……」

 ベルナルド様自身も何が何だかといった様子で語り出した。



「───入国出来ない人が増えている?」
「そうなんだ。入国の手続きも済んで、いざ国に入ろうとすると“入れない”という事があちらこちらで起きているみたいなんだ」
「……?」

 私は首を傾げる。

(国に入れない?  どういうこと?  まるでお姉様に起きたみたいな話……)

「それで、詳しく調べてみたら我が国に入国出来ない人には皆、ある共通点があったんだ」
「共通点、ですか」

 ベルナルド様が深く頷く。

「皆、それぞれ悪意があったんだよ」
「あ、悪意ですか?」

 どういう意味かしらと不思議な顔をすると、ベルナルド様が更に詳しく説明してくれる。

「実は、こっそり我が国で詐欺を働こうと思ってやって来た商人だったりとか、アピリンツで罪を働いていて逃げようとして来た者だったりとか、夫からの暴力に耐えられず逃げ出した妻子を追いかけて来た暴力夫だったりとか……」
「……!」
「なんというか、我が国に立ち入らせたくないような人間ばかりが弾かれている」
「……!!」

 そこまで聞いて私は、ようやくあれ?  と思った。

(待って?  この間の私って頭の中で何を願った?)

 まず、そもそもとしてお姉様にはこの国に立ち入らないで欲しい、そう願った。
 この間は、ファーレンハイトに害意をもたらそうとする者も立ち入らないで、と願った。
 どちらも、私が願ったことに間違いない。

 ───そこで、ハッと思い出す。
   
 荒れた田畑、実り豊かな土地……人々を脅かす魔獣の存在。

(私はこれらを見た時も何かを願わなかったっけ?)

「……」

 まさか……これは、まさか……
 そこまで考えた私の身体がブルっと震える。

 ────私の願ったことが形になっている??

「クローディア?  どうした?」
「ベル、ベルナルド様、どうしましょう……」

 私はベルナルド様に思わずしがみつく。
 だって、こんなのちょっと偶然にしてはあまりにも出来すぎている。

「クローディア?」
「わ、私、私の“お願い”が叶ってばかりなのです」
「クローディアのお願い?」

 ベルナルド様が不思議そうな顔をしながらも優しく抱きしめてくれる。
 ポンポンと背中を叩いて落ち着けと言ってくれている。

「あれもこれも全部、願いました、私。私が……」
「クローディアが願った?」
「ファーレンハイト国の田畑についてや魔獣のこと、お姉様の、悪意を持った人達のこと……全部、全部願ったことが当てはまってしまっています!」
「え?」
「ベルナルド様、どうしましょう……」

 動揺した私はそう言ってベルナルド様に抱きついた。







 ────ちょうど、その頃……



「お兄様、遅くってよ?」
「ナターシャ……突然、呼び出しておいてその言い方はないだろう?」

 アピリンツとファーレンハイトの国境付近の町に、ようやくブルームが到着していた。
 ブルームは悪天候の中、助けて!  どうしてもお兄様に確かめて欲しい事があるの!  と、ナターシャに泣きつかれたので慌てて駆けつけた所だった。

「悪天候は続くし、魔獣被害も日に日に増えている。私は忙しいんだぞ?」
「……」
「 だいたい何でお前はまだこんな所にいるんだ?  とっくにファーレンハイトに入国して今頃、国王に色仕掛けしてよろしくやっているとばかり思っていたのに」

 この所、ブルームは結界を張り直すも、再び魔獣に破られるという悪循環を繰り返して疲弊していた。
 そこに妹からの呼び出し……と来たら多少苛立ちもする。

「言われなくても、もちろん、わたくしもその予定でいましたわよ!  今頃はわたくしのこの美貌で国王陛下を骨抜きにしているはずでしたわ!」

 ナターシャの言葉にブルームは深いため息を吐く。

「なら何故、こんな所でもたもたしていて私を呼んだんだ?」
「ファーレンハイト国に何をしても入れないんですのよ!  結界かもしれないからお兄様を呼びましたの!」
「……何だと?」

 ブルームの目の色が変わった。

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