【完結】そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして

Rohdea

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2. 目を覚ました婚約者

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「え?  ……お父様、何を言って……?」

  空耳?  聞き間違い?
  エドワード様が事故?  重体??  どういう事?

「嘘でもなんでもない。本当の話だ。エドワード殿は事故にあわれて、今、意識が戻っていないそうだ」
「……今日、私はお会いしたばかりですよ?」

  そうして私はとんでもない失言したのよ、お父様。

「その後の事だ。お前が帰った後、エドワード殿は急いでどこかに向かおうとしたらしいのだが、その馬車が事故にあった」
「!!」

  目の前が真っ暗になるってこういう事かしら。
  私の身体が震えている。
  お父様が必死に状況を説明してくれているけれど、全然頭に入って来ない。

  (私が彼に言った最後の言葉が婚約破棄して下さい……だなんて最低すぎる……)

「アリーチェ……すまない。とりあえず今はエドワード殿が無事に目が覚める事を祈ろう」
「…………はい」

  (エドワード様……今日の事はいくらでも謝りますから……どうか……どうか命だけは……)

  無口で無愛想で素っ気無くて嫌われていても構わないから、せめて生きていて欲しい……
  心からそう願った。



  そして、数日後。
  その話はお父様から再びもたらされた。

「エドワード様の目が覚めた!?」
「あぁ、無事に意識は戻ったそうだ。これで山場は超えた……と連絡を貰った」
「……良かった」

  ヘナヘナとその場に力無く座り込む。

  (無事に目を覚ましてくれた!  良かった……)

  今はまだ、お見舞いには行けないだろうけれど、容態が落ち着いて許可が降りたら会いに行こう。
  そして、あのバカな発言を謝る。

  ──この時は、そう出来ると思っていた。




  エドワード様が目が覚めたと聞かされてから一週間後の事だった。

「エドワード様に会いに行っても良いのですか?」
「あぁ。ニフラム伯爵家の許可は降りた……んだが」
「お父様?」

  だけど、何故かそう口にするお父様の顔がどこか渋い。
  まるで何かを躊躇っているかのような……

「様子が変ですよ、お父様。何かあったのですか?」
「いや、それが、ニフラム伯爵が言うには……覚悟をしてから来て欲しい、と言うんだよ」
「覚悟?」

  いったい何の覚悟を?
  よく分からず首を傾げる事しか出来ない。

「もしかしてエドワード様……事故のせいでどこかに酷い傷や後遺症が残ってしまっていたりするのでしょうか?」
「分からん」

  お父様も首を横に振った。詳しくは聞いていないらしい。
  
  (本当にいったい何が……でも、会いたい。会って元気な顔が見たい)

  そんな疑問は残り、不安を感じてはいたものの私は久しぶりにニフラム伯爵家へと訪問し、エドワード様のお見舞いに行く事にした。



*****



「あぁ、アリーチェ嬢、ようこそ。わざわざ来てくれてありがとう」
「い、いえ、お邪魔します」

  訪ねて行った私を出迎えてくれたのはニフラム伯爵……つまり、エドワード様のお父様だった。

「此度の事は、さぞ君にも心配をかけた事だろう……」
「いえ、エドワード様がご無事なら……それで良かったです」
「……」

  私がそう口にすると、何故か伯爵様は曖昧な顔をして微笑んだ。
  そして、意味深な事を口にされた。

「無事……そうだね。無事といえば無事なんだけどね」
「?」
「すまない。そんな事を言われてもアリーチェ嬢が不安になるだけだな」
「いえ……」

  何かしら?  嫌な予感がする。
  覚悟をしてから来て欲しい……その言葉が意味するものは……?

「……会えば分かるよ。さぁ、部屋に案内する」
「は、はい」

  そうして、私はエドワード様が療養しているという部屋に向かった。

「私だ、入るよ。それからお前にお見舞いだ」

  部屋をノックし、伯爵様と共に入室する。
  ベッドに視線を向けると、エドワード様が身体を起こした状態で座っていた。

  (エドワード様……)

  頭には包帯が巻かれていた。
  腕にも包帯が見える。
  その他、服で見えなくても身体のあちこちが包帯だらけなのが分かる。
  顔にもガーゼが貼られており事故の悲惨さを物語っているようだった。

  (本当に命があって良かったわ……)

  だけど、見たところ外見には、覚悟?  が必要そうな箇所は感じない。
  
「エドワード様……」

  思わず名前を呼びかける。
  いつもみたいに無視されても構わない。今は彼が無事である事を確かめたかった。

「……」

  エドワード様がゆっくりこちらを見た。

「!」

  目が合う。
  ここで、視線は逸らされ、無言のため息を吐く……のがいつものエドワード様の態度なのだけど。
  今日は違った。
  エドワード様はじっと私を見つめていた。

「エドワード。アリーチェ嬢がお前のお見舞いに来てくれた」
「……」

  伯爵様のその言葉に、私を見つめていたエドワード様の顔が曇る。
  そんなに嫌がられてしまったのかとショックを受けそうになったけれど、私の心の中で何かがひっかかった。
  ──

「アリーチェ?」
「あぁ、そうだ。お前の婚約者のアリーチェ嬢だ」
「……」

  二人のそのやり取りを聞きながら、心臓がドクリと嫌な音を立てた。

  (どうしてエドワード様はそんな反応を……?)

  嫌な……とても嫌な感じがする。

「婚約者……君が……俺の?」
「……」

  どうして、そんな不思議そうな顔をするの?
  まさか、まさか……
  そんな思いが私の頭の中を駆け巡る。

「そっか。わざわざありがとう。でも、ごめん」
「……ごめん?」

  なぜ、謝るの。
  そして、今までと違い過ぎる彼のこの雰囲気は……

「うん……実は俺には君の事が分からないんだ。どうも俺には記憶が無いらしい」
「っっ!」

  エドワード様が悲しそうな顔をして目を伏せながらそう言った。


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