【完結】“元”旦那様、今世は白い結婚を所望します ~結婚式で前世を思い出したら~

Rohdea

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12. 揺れる心

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「王宮でのパーティー……」 

 レオン様に招待状を見せられたので手に取ってじっくり眺める。
 私にとって王宮のパーティーはアメリアと元婚約者の浮気現場を見た時のあれ以来だ。
 以降は貴族主催のパーティーに参加してみてはプークスクスされていたわけだけど、王宮という大きな場での開催となるとあまり気乗りがしないのが正直なところ。

「今回は王子殿下の誕生日パーティーらしいぞ?」
「ああ……よりにもよって今回は“それ”なのね」

 封筒の中身を開けて内容を確かめる。
 レオン様の言う通りだった。
 この国の王族はやたらとパーティーが好きなようで、割と頻繁に開催されている。
 だから、参加不参加はわりと自由に選べるのだけど……

「さすがに王子殿下の誕生日パーティーは不参加にしますとは言えないわ」
「……だなぁ」
「欠席なんかして、あの可愛らしいお顔と目をうるうるさせて悲しまれる姿を想像すると────無理!  それだけでチクチク胸が痛いわ」
「……だなぁ」

 私ははぁ、とため息をついた。
 我が国の王子様は今度のお誕生日で五歳になられる。
 まさに可愛いざかりの幼児だ。
 断るという選択肢は無いに等しい。

(そうなると……)

 この間のお茶会なんて目じゃないくらいの貴族たちが集まる、というわけで……

「……あまり気乗りしないって顔だな」

 私のそんな複雑な気分をレオン様は目ざとく感じ取ったのか顔を覗き込まれる。

「この間のお茶会みたいにピンポイントで喧嘩を売られるのは良いけれど……不特定多数だと思うとちょっとね」
「そうか……ニーナは、なんでもかんでも受けて立ーーつ!  と言うのかと思っていたが違ったのか」

 レオン様がクククッと笑った。
 私はムッとして反論しようと口を開きかける。

「もう!  レオンさ……」
「────冗談だよ」

 ポンッと頭に手を置かれた。
 びっくりして目線だけ上に向けてみるとレオン様は優しく笑っている。

(出た!  イケメンスマイル……!)

 思わずキッと睨みつけるもレオン様はそのまま続けた。

「だってニーナはもう一人じゃないだろう?」
「レオン様……」
「今は俺がいるんだから」

 レオン様の目は真っ直ぐ私を見つめてくる。

「今、ニーナは俺の妻だろう?」
「……」
「だから、安心してくれ。俺は妻の味方だ」

 キラキラのイケメンスマイルとそのかっこよく聞こえそうな発言にうっかり見惚れて聞き惚れそうになってしまい、ハッと我に返る。
 慌てて手を伸ばしてレオン様の頬を思いっきりつねった。

「妻の味方ですって?  あなたね!?  ……ど!  どの口が言うのよ、どの口が!!」
「ひゃひゃひゃ!」
「笑っている場合!?」
「……ひゃひゃ───いひゃい……」

(う……)

 私はパッと手を離すと慌ててレオン様に背を向ける。
 今は顔を見られたくない。
 そして目をつぶって胸の前でギュッと拳を強く握る。

「ニーナ?」

 背後からレオン様が声をかけてくるけど答えられない。
 だってどんな反応したらいいのか分からない。

「ニーナ?」
「か、勘違いしないで!  私は別にあなたにドキドキなんてしていないのだから!」
「へぇ?」

 おかしい。
 何だかクスッと笑われた気がする。

「その、イ、イケメンスマイルさえ出せば何でも許されるなんてお、思わないことねっ!」
「へぇ?  イケメンスマイル……」
「わ!  私はそんなにチョロい女ではないわ!」
「へぇ?」

 おかしい。
 口を開けば開くだけ墓穴を掘りにいっている気がする。
 これは危険。とにかく落ち着こうと深呼吸をしてみた。

「───ニーナ」

 深呼吸を終えたと同時に名前を呼ばれる。
 それもさっきまでとは違う少し真剣な声……
 私はおそるおそる振り返った。

(───レオン様……?) 

 レオン様から笑みは消えていて真剣な表情で私を真っ直ぐ見ていた。

「真面目な話、なにか困ったら必ず俺を呼んでくれ」
「困ったらって……」

 私が困惑しているとレオン様がフッと笑う。
 それは真剣だったけどどこか寂しい笑みにも見えた。

「ニーナのことは…………絶対に俺が守るから」
「───!」

(だから、その顔がその発言が……私の心を乱す)

 何故かは分からないけどその時のレオン様の顔が玲音と被って見えて、さらに真剣だったので私はコクコク頷くことしか出来なかった。


────


 そうして複雑な気分ながらもあっという間にやって来た王子殿下の誕生日パーティー当日。
 王宮に到着するとまずは最初に行うべきは夫婦揃って王子殿下へのご挨拶。



「あーー……殿下、めちゃくちゃ可愛かったわ」
「ニーナ……」

 挨拶を終えたあと、五歳になられた殿下の可愛さにメロメロで虜になった私をレオン様が苦笑する。

「あの小さい体で一生懸命、偉そうにふんぞり返って受け答えしている姿がもう……キュート!」

 成長してからもあれをやっていたら単なるバカ王子の部類に入るかもしれない。
 けれど、今なら可愛くて何でも許せちゃう!

「挨拶しただけなのにメロメロじゃないか」
「だってもう!  あの可愛さは反則よ!  私、もし自分に子どもがいたら…………って、あっ」

 うっかり口を滑らせてしまったことに気付いて慌てて口を押さえる。
 白い結婚と決めた今の私たちの間でその話はすべきじゃない。

「ごめんなさい……」
「いいや、大丈夫だ」

 レオン様はポンッと私の肩を叩くと微笑んだ。

「今はいいが、そのうち煩くなっていく周りを黙らせる方法を考えておかないといけないな」
「え、ええ……」

 その言葉を聞いてレオン様は私と離縁するつもりはなく、白くても結婚を続けるつもりなのだと思った。

(自分の子ども……欲しくないのかな?)

「あなたの子…………可愛かった?」
「え?」

 私はピタッと足を止めてレオン様の服の袖を軽く引っ張る。
 レオン様は怪訝そうに振り返った。

「ニーナ?」
「…………玲音と…………彼女、の間に出来た子」

 レオン様がハッと息を呑んだ。

「あ、あれから……生まれたんでしょう?  か、可愛かったかなって……」
「……ニーナ」
「あ、あの時は動揺して……その、私も色々言っちゃった、けど……えっと、その……今はもう」
「ニーナ!」

 ガシッとレオン様が私の肩を掴む。

「レ、レオン……さ」
「あの時も俺は言った───知らないと。あのおん…………彼女の話は何かの間違いだと」
「……うっ」

 レオン様はあの時と同じ言葉を繰り返した。
 私だって最初は玲音のことを信じようと思った。
 でも、彼女……亜芽莉さんは無防備にベッドで眠っている玲音の写真を持っていて……
 それを勝ち誇ったように自慢気に私に見せて来た。

(玲音……レオン様はあの写真のこと知っていたのかな……?)

 浮気したこと事態を否定していた玲音。
 今思えばちょっと変かも……

「……ごめんなさい。今更、ほじくり返すような話じゃなかった」
「ニーナ、俺は……」

 レオン様が何かを言いかけたその時だった。

「───ニーナ!  ニーナじゃないか!」

 背後から掛けられたその声にビクッと身体が跳ねた。

(この声は……)

「君もこのパーティーに来ていたのか」
「……」
「あれ以来、全然パーティーでは見かけないなと思っていたから心配していた」

 そう言いながら彼はツカツカと靴音を鳴らしながらこっちに近付いてくる。
 この声の主は───……

「…………ジュート・ケンドリック」

 レオン様が小さな声で彼の名を呟いた。
 そう。
 今、呑気に私に声をかけたあげく、更にヘラヘラした顔でこっちに近付いてくる彼の名はジュート・ケンドリック。
 半年前にアメリアと浮気していたことが発覚して、助けを求めた私の手を冷たく振り払った元婚約者───……
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