王女殿下に婚約破棄された、捨てられ悪役令息を拾ったら溺愛されまして。

Rohdea

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183. 嫁姑対決

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 勝ち残った五人の対決。
 最初の戦いはお母様とオリアンヌお姉様の嫁姑対決!

「よ、よろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ」

 挨拶を交わす二人。
 少し緊張した面持ちのオリアンヌお姉様と、余裕そうな笑みを浮かべるお母様。
 オリアンヌお姉様のあんな顔はなかなか珍しい。

「───オリアンヌ嬢が少し緊張している様子なのは珍しいね」
「あ、旦那様もそう思います?」
「うん」

 私の横でリシャール様も頷いた。

「だってさ、家族に軟禁されているのに、肉食べたさにメイド服を強奪して脱走図るほど精神面が逞しい人だよ?」
「……ですわよね」
「さすがのオリアンヌ嬢もこの事態には困惑するか……」

 リシャール様のお母様はとっくに追放されているから、私に嫁姑の気持ちはよく分からない。

「アンベール殿も複雑だろうな」

 そう言いながら、リシャール様はお兄様のことを心配そうに見つめる。
 思った通りお兄様は二人のことをハラハラした様子で見守っていた。

「私としては、お母様の力が未知数なのでドキドキですわ」

 私がそう言うとリシャール様がそういえば……と切り出す。

「義母上って面白そうな人だよね」
「え?  お母様が面白い……ですか?」
「うん。フルールがベルトランに慰謝料請求を起こしていた時とか、あまり口を出して来なかっただろう?  だから、実はどんな方なのかよく分かっていなかったんだ」

 ああ、そうかと思った私はニンマリ笑う。 

「あの時は、お母様はお父様のことを全面的に信頼しているので、お父様に任せて静かに見守ってくれていましたの」
「あ、そうなんだ?  いい関係の夫婦なんだね。あれ?  でも……」

 リシャール様は先の戦いで、お父様に勝利した時のお母様の発言を思い出したのか首を捻った。
 私はもう一度ニンマリ笑う。

「お母様はお父様のことが大好きなのですわ」
「え?」
「お母様は、一目惚れしたお父様のことを押して押して押して押して押して押して押しまくって、迫って迫って迫って迫って迫って迫って迫り続けて結婚までこぎつけたそうですわ」
「…………え!」
「お母様の努力の証です!」

 リシャール様が驚いている。

「努力!?  いや、それより押して迫って?  えっと、引く……という選択肢は?」
「存在しなかったそうです!」
「存在…………しな、かった」

 あら、気のせい?  リシャール様の顔が引き攣ったような?

「お母様は侯爵家の令嬢、お父様は伯爵家の令息なので、お母様はお父様を追いかけることにも最初は反対されたそうなのですけど……」
「けど?」

 リシャール様がゴクリと唾を飲み込む。

「詳しくは教えてもらえませんでしたが、ありとあらゆる方法で黙らせたと言っていましたわ。最終的に父親───お祖父様はボッコボコになったそうです」
「……父親をボッコボコ」
「ええ。お母様の腕相撲のあの強さ……もしかしたら当時、お祖父様と拳を交えていたのかもしれませんわね!」

 子どもの頃にお祖父様に詳しい話を教えて?  とせがんだけれど、そそくさと逃げられた。

「……フルール。めちゃくちゃ物騒なことをそんなキラキラした目で…………」
「え?  何がですか、旦那様?」
「……」

 お母様の武勇伝を語っているだけなのに、なぜか横でリシャール様が頭を抱えていた。

「……コホンッ…………なんだかフルールがフルールになった理由が分かるというか」
「私?」
「ピンポイントで凄いところだけ受け継いだというか……」
「え?」
「いや……」

 リシャール様は軽く息を吐きながら優しく私の頭を撫でた。
 私たちがそんな話をしているうちに、オリアンヌお姉様とお母様が所定の位置につく。

「───ふふふ、まさか義娘とこんな形で勝負することになるなんてね、不思議」
「はい、私もそう思います」

 なんだかお母様はとっても嬉しそう。

「常にフルールに振り回され続けたアンベール。いったい将来はどんな女性を選ぶのかと思っていたら……」
「あ……すみません、捨てられた悪役令嬢で……」

 オリアンヌお姉様がそう口にすると、お母様はふふふ、と笑った。

「あら、何を言っているの?  悪徳?  悪役?  上等よ!」
「え?」

 お母様の笑みが深くなる。

「だって、そんな呼び名を持った面白いお嫁さんを迎えたのは我が家くらいなものでしょう」
「お、お義母さま……?」
「私たち、フルールに慣れてしまったんだもの。これくらい面白いお嫁さんでないときっとつまらなかったわ」

 お母様はオリアンヌお姉様にそう言った。
 オリアンヌお姉様は目を丸くしてお母様を見つめている。

「ふふ、見てご覧なさい。あのお互いの夫たちの心配そうなハラハラした顔!」

 お母様はそう言ってお父様とお兄様に視線を向ける。
 二人はそっくりな顔でハラハラしている。

「に、似ていますね?」
「でしょう?  私、旦那様のあの顔も好きなの───さあ、勝負よ!」
「は、はい!  お義母さま!」

 二人はグッと手を組んだ。

「───勝利の舞を踊るのは私!」
「いいえ、私です!!」

 こうして嫁姑対決は開始した。



(すごい!  は、白熱している……!)

 オリアンヌお姉様とお母様の戦いは拮抗していてなかなか決着がつかない。
 お互い何度も勝負に出るものの、なかなか倒すことが出来ない。

「旦那様……カップも粉砕出来るオリアンヌお姉様とお母様……決着がつきません」
「うん、まさに互角という言葉が相応しい……」
「…………私、お母様がこんなに強いなんて知りませんでしたわ」
「フルール?」

 私が身体を震わせたので、リシャール様が不思議そうに私の顔を覗き込む。

「これはきっとお母様も…………カップの一つや二つ粉々にすることなど容易いに違いありません……!」
「フルール……基準はそこ?  そこなのか?」
「なんてことなの。私がお手本にすべき最強夫人はこんな身近に……お母様だったなんて……!」

 これは、もっともっと多くのことをお母様から学んでおくべきでしたわ。
 私は顔を上げてリシャール様をじっと見つめる。

「旦……」
「うん、だからしばらく実家に帰ります、とか言わないでくれ?  それは寂しすぎる」
「……」

 目が合った旦那様はキッパリとそう言い切った。

(すごいわ……なんで分かったの?)

 にこっ
 私はえへっと笑って誤魔化した。

 その瞬間、おぉー!  と会場が一気に盛り上がった。
 どうやら白熱していたシャンボン伯爵家の嫁姑対決、ついに勝者が決定したらしい。
 互角だった嫁姑、二人の対決の結果は────

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