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【おまけ】危険な子
しおりを挟むそれからもベビーたちは、ニパッとにこっを駆使して一向に噛み合わない会話を続けていた。
「あうあ!」
ニパッ!
───ベビーちゃん、そろそろハイハイのコツを教えるです!(訳:ジョルジュ)
「ぅあっ、あっあう、あっあ」
にこっ
───ところで、おにーさま。おリボンはどこでちゅーもんされたのです? (訳:ジョルジュ)
「あうあ!」
ニパッ!
───まずはじゅんびうんどーが大事なのです、床をズリズリすることから始めるです! (訳:ジョルジュ)
「うぅ、あっんあう、うあっあ~!」
にこっ
───おとーさまとおかーさまもいっしょして、みんなでおそろいにしたいですわ~! (訳:ジョルジュ)
「あうあ!」
ニパッ!
───ハイハイしたときに目指すもくひょーを決めるといいです! (訳:ジョルジュ)
「───って感じの会話だな」
「……」
ジョルジュの通訳を聞いた私は無言で頭を抱える。
(どうしてそうなるの!?)
しかも、だ。
さっきはジョシュアがおリボンの話をしてナターシャがハイハイの話をしていたというのに今は逆になっている……
「ん? どうした? ガーネット」
「どうしたもこうしたもないわよ! なんでジョルジュは平然としていられるのよ!」
私がキッと睨みつけるとジョルジュは不思議そうに首を傾げた。
「なにがだ? 仲良しの微笑ましい光景でいいじゃないか」
「は?」
どうやら、ジョルジュの中では会話が噛み合わないことは些細なことらしい。
(ホホホ、そうよね。ジョルジュはそういう男だったわ……)
友人らしい友人のいなかったジョルジュからすれば、例え会話が噛み合っていなくても話し相手がいるだけで素晴らしいという認識に違いない……
「はっはっは! 我が家のベビーは随分とご機嫌じゃないか!」
「エドゥアルト……」
こっちもこっちで、エドゥアルトがナターシャの様子を見て陽気に笑っている。
ご機嫌……まあ、にこっと笑ってるし?
ご機嫌といえばご機嫌……といえる。
「エドゥアルト。ジョルジュの通訳によるとナターシャはあなたたち家族皆でお揃いのおリボンを着けたいみたいよ?」
「なに!?」
エドゥアルトの目がキラキラと輝いた。
「はっはっは! 我が家のベビーはなかなか可愛いことを考えるじゃないか!」
「そうねぇ」
会話は噛み合っていないけど、黒いメガネを皆でお揃いにしようとしたジョシュアと同じ匂いを感じるわ……
「よし、レティーシャ! 今すぐ注文だ!」
「エ、エドゥアルト様!?」
いきなりそんなことを言われてレティーシャさんが困惑している。
しかし、エドゥアルトの興奮は止まりそうにない。
「───あうあ!」
そこにぬっとジョシュアが顔を出した。
「あうあ! あうあ!」
「ん? ジョシュア……おリボンのことならボクに聞くです? はっはっは、我が家のベビーと話しながらもちゃっかりこっちの話も聞いていたのか?」
「あうあ!」
「当然です? 当然なのか」
ニパッ! とジョシュアが得意そうに笑う。
その時、ご自慢のおリボンが大きく揺れた。
「───あうあ!!」
「ほう、ギルモア家の男たるもの、常に周りに気を配り、複数人で行われる会話も聞き分けねばなりません? そうだったのか……すごいな。ギルモア家にはそんなルールがあったのか」
(な い わ よ !?)
そんな高等技術……いったいいつ私が定めたというの!
「お待ちなさい、ジョシュア! あなた、なに適当なこと───」
ジョシュアを叱りつけようとしたら、ポンッと肩を叩かれる。
邪魔ね、とその手を振り払った。
しかし、またもう一度ポンッと肩を叩かれた。
「ジョルジュ! いったい何……」
私が振り返りながらジョルジュに文句を言うと、ジョルジュは表情を崩さずに淡々と言った。
「適当じゃないぞ?」
「は?」
私は眉をひそめる。
「この間、ガーネットがグビグビ酒を飲んだ日……」
「え、お酒?」
何だか嫌な予感がする。
「ジョシュアに向かって───常に周りにアンテナを張り巡らせては周囲の発言を聞き分けて、気を配れるいい男になりなさい! とお説教を始めた後にそんなようなことを言っていたぞ?」
「……え?」
私がおそるおそるジョシュアの顔を見ると、ニパッと笑い返された。
「あうあ!」
「…………そ、そう? 私がそんなことを……言った、のね?」
(ホッホッホッ……全く記憶にないわ~……)
気持ちよーくお酒を飲んだことしか覚えてない。
気付くと朝だったんだもの……
「あうあ!」
「ボクはおじい様とお父様みたいな立派なギルモア家の男となるのですから、か。ああ、それは立派な心がけだ、ジョシュア!」
「あうあ!」
「これからも期待しているぞ!」
「あうあ!」
ジョルジュとジョシュアが盛り上がりだしたその時だった。
「あっ、うあっんあ、うう、あっあ~」
ゆっくりこっちにハイハイして来たナターシャが声をあげた。
そして、にこっと笑いながらエドゥアルトとレティーシャさんに何かを訴え始めた。
「あう、あっああ、ぅあっ」
「うん? そんなに興奮してどうしたんだ、ナターシャ?」
「うっ、うぁ~あっあぁ~」
「えっと? すごい興奮していることは分かるのだけど……」
ナターシャの訴えが分からず、うーんと困る二人。
ホーホッホッホッ! やっぱりこういう時は便利ね────ジョルジュ!
「ジョルジュ!」
私がパチンと指を鳴らす。
「ああ、あちらのベビーは今、感動している」
「は? 感動?」
聞き直すとジョルジュがコクリと頷いた。
「────とても、すばらしーきょーくんですわ! わがやもぜひ、とりいれましょう!」
「えええ……」
大丈夫? 酔っぱらいの戯言よ……?
私は心配になる。
「そして、続けてこうも言っている」
「続けて? まだあるの?」
ジョルジュは、ああ……と頷くとこう言った。
「────そんなべんりなおとこ、ぜひ、わたくしのしもべにほしいですわ~」
(え……?)
エドゥアルトとレティーシャさんの娘は、にっこり笑顔ですっごく危険な発言していた。
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