【完結】殿下! それは恋ではありません、悪役令嬢の呪いです。

Rohdea

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第十四話 ヒロインの突撃

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「……そんな事って」
「ディアナ?」

  困惑する私をフレデリック様が優しい手つきで私の頭を撫でてくれる。
  胸がキュンとした。私はやっぱり優しいこの手が好き。

  ───私に乗っ取られた(?)ライラックには申し訳ないけれど、私は私でどうしても譲れないものがある。

  (フレデリック様の事……破滅を回避する事……)

  これだけはどうしても譲れない。
  
「本当にディアナは昔から面白いね」
「え?  面白い?」

  私が聞き返すとフレデリック様は微笑む。

「素直で可愛くて、でもちょっと抜けてて……色んな意味で目が離せない」
「フレデリック様……」
「あと、鈍いよね」
「…………そう言われましても」

  前世の記憶のせいで、この世界に対する思い込みがあるからかしら。
  何でもかんでもライラックに結び付けてしまっていた気がする。
  あの賛辞の数々がまさか自分に向けられていた話だったなんて本当に驚いた。

「ねぇ、ディアナ。君は気付いてる?」
「な、何がでしょう?」

  フレデリック様の顔つきが少し変わった気がした。

「僕がずっと毎朝君に送り続けている花……」
「あ、いつもありがとうございます」

  そう。フレデリック様からのお花は途絶えたことが無い。学園に入学したらさすがに終わりかと思っていたのに変わらず毎朝届けられる。
  ポプリにしたり、押し花にしたり、香油の材料にしたり……たくさん活用させてもらっているわ。

「あれは全部、ディアナへの愛なんだよ?」
「あ、い?」
「そう。ディアナを愛してるって想いを込めて毎朝君の元へと贈っている」
「わたしをあいしてる……」

  やっぱり今年儀式をやらなかったくらいでは甘い。効力は継続しているのね。

「僕はどうしても君を振り向かせたかった。それで……」
「いつから……ですか?」
「え?」
「フレデリック様はいつからそんなに私の事を?」
「ディアナ?」
「だって、フレデリック様……最初はあんなに私に……」
「……!」

  そんな事は聞かなくても分かりきっているのに。
  私があの呪いをかけた後からだと決まっている。それでも────

  私のその質問にフレデリック様は驚いた顔をして黙り込む。
  それから少しの沈黙の後、苦笑いを浮かべて口を開きかけた。

「それは……」

  キーンコーンカーンコーン

「……あっ!  鐘が」
「昼休み終わってしまうね、戻ろうか」
「は、はい」
「この話はまた今度」
「はい……」

  フレデリック様が何かを言いかけた所で、ちょうど昼休みの終わりの鐘が鳴ってしまう。
  お陰で聞きそびれてしまった。
  あの五文字以上喋ってくれなかった頃、何を考えていたのかは知りたかったのに……

「ディアナ?  行くよ」

  フレデリック様が当たり前のように手を差し出してくれたので、私も自然とそこに手を重ねる。
  今のこの関係の始まりが呪いのせいだったとしても、そこから二人で築いた六年間の形が確実にそこにはあるような気がした。



◇◆◇◆◇



「あの~クワドラント侯爵令嬢様、ちょっとお時間を頂いてよろしいですかぁ?  大事なお話があるんですけど~」

  聞き覚えのある甘くて可愛らしいその声に声をかけられたのは、それから数日後の事だった。
  登校してすぐの時間。
  まだ、人気も少なくて、フレデリック様も登校していない昇降口での事だった。

  (何でライラックの方から私に!?)

  物語の中での二人の最初の会話は、ディアナの方からライラックに絡んだのが始まりだったはず。

  
─────

───


「あなたがライラック・トゥルハーシさん?  ちょっとよろしいかしら?  大事な話がありますの」
「えっと?」
「……あなた、その反応!  まさか、私の事を知らないとでも!?」
「あ……」

  突然、自分に話しかけて来た美しい女性は、自分の事が知られていないと分かるなり、すぐに激昂した。
  
「私はあなたが最近懇意にしているというフレデリック殿下の婚約者ですわ!」
「え、婚約者……?」
 
  ライラックはショックを受けた。
  
  (私ったらどうしてその事に思い至らなかったの?)

  彼は王子様。そういう人がいるのは当たり前……私は気付きたくなくて知らないフリをしようとしていた───

「……まあ!  そんなに驚いた顔をするなんて……殿下はこんなにも重要な事をあなたに話していなかったようね?」
「……っ!」
「なぁんだ、あなたってその程度の存在だったのね」

  クスッと笑う目の前の令嬢は美しかったけれど醜かった。


 ───

─────
  

    (今、思うと醜いって。美しいと言われていても酷い表現よねぇ……)

  それにしてもこの時の悪役令嬢わたしはまだ余裕がありそうだったのに、どんどん分が悪くなっていく……
  しかも、この時ライラックに絡んだのは嫌味だけだったけど、ライラックに詰め寄った事は彼女が泣きついたからすぐにフレデリック様にバレてこの後、散々、罵られるのよね……

  (悪役令嬢ってやっぱり不憫だわー……)

「…………あの!  私の話!  聞いてますか!?」

  私が思考の旅に出てしまっていたからか、ライラックが声を荒らげた。
  その声にハッと意識が戻った、

 
「あ、ごめんなさい、全く何も聞いていなかったわ」
「……は?」
「あ!」

  正直に言いすぎたせいで、ライラックは鳩が豆鉄砲をくらったような顔になった。

「…………コホンッ。えっと、あなたはどちら様かしら?」
「ライラック・トゥルハーシと申しますわ。平民ですけどこの学園に入学した者です!  今日はディアナ……様に話があります!」
「……」

  私は耳を疑った。

  (優秀な……成績ですって?)
 
  え、あなたクラスは?
  そう聞き返したかったけれど、何となく止めておいた。
  あまり長々と話をしたい人では無いし。
  
  (それにしても……)
 
  貴族社会に於いて、初対面なのにこんな失礼な突撃しようものならかなり大変な事になるのだけど……この先大丈夫なのかしら?
  と言うか、物語通りのディアナだったなら確実に消されていたわよ?
  そんな心配の気持ちが生まれてしまう。

  (でも、これも私が物語をかなり狂わせた結果からなのかも)

  そう思うと話くらいは聞いておくべきかとも思い直した。
  こっそりため息を吐いた後に聞き直す。

「私に?  何のお話かしら?」

  申し訳ないけど、フレデリック様の事だけは譲らないわ!  
  そう意気込んでいた私に向かってライラックは言った。

「──皆を……騙すのはやめて下さい!」

  (……は?)

  私は何の事か分からず首を傾げた。

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