【完結】殿下! それは恋ではありません、悪役令嬢の呪いです。

Rohdea

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ヒロインの大誤算②

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   ───ゴンッ!
  ちょっと勢いつけすぎたかも……痛ーーい!
  でも、痛いだけはある。皆が慌てた様子で駆け寄って来てくれたわ。
  これよこれ!  私が求めていたのはこれなの!
  ちょっと……いや、かなり頭がクラクラするけれど、こんな事を考えつく私はやっぱり天才ね!  

  (───あら?)

  ふふっ!  やだわ。王子様まで私の元へと駆けつけてくるじゃないの。
  悪役令嬢は壇上に置き去りにされてる……ふふふ、ざまーみろ!
  つまり、王子様は悪役令嬢よりヒロインの私を選んでくれたのね?  ようやく目覚めた?
  やっぱり私、ヒロインなだけあるわ───……

  王子様はテキパキと周りに何かしら指示を与えている。さすが!
  私は目をつぶって王子様が抱き上げてくれるのを、まだかしらまだかしらと大人しく待つ事にした。
  あと、結構本気で頭が痛いので早く医務室に連れて行ってくれないかしら?

「よし、運ぶぞ」

  そんな声と共に私の身体がフワッと持ち上がる。

  (よし!  これよこれ!)

  ───来たわぁぁ!  これで学園中で私と王子様が噂になる! 
  抱き上げられた私はそっと薄目を開けて王子様のかっこいい顔を見てみようと思った。
  しかし……

「………………っ!?」

  (え、ちょっ……だ、誰?  見知らぬおっさんに抱き抱えられてるんだけど!?)

  王子様は?  私の未来の夫はどこよ!?
  見知らぬおっさんの腕の中でパニックになった。
  そんな私が会場を出る瞬間に薄目で見た光景は、王子様が壇上で苦しそうに蹲っている悪役令嬢の元に必死な様子で駆けつけていく姿だった。

  (───は?)



  そして、翌日以降の学園は王子様が悪役令嬢ディアナを抱っこしていたという話で持ち切りだった。
   
  (何で私じゃなくて悪役令嬢が抱き抱えられてるのよ!?)

  私は見知らぬおっさんだったのよ!?
  え?  それに倒れた私は?  私の話は?

  こんなにも可愛いくて可憐な私が痛々しく倒れたのにも関わらず、この件は話題にも上らなかった。


◆◆◆◆


  そんな屈辱的な入学式を迎えた私に、次に待っていたのはもっと大きな衝撃だった。

「……クラス……が違う?」

  特待生にならなくても、成績優秀なはずの私が入れられたのは何故か最下位のクラス。
  当然、王子様とは違うクラス。

  (は?  何でよ……王子様と同じクラスにならないと、イチャイチャが始まらないじゃない……)

  悪役令嬢ディアナが決して入れない同じクラスという利点を大いに利用して私と王子様の距離は縮まっていくはずなのに……

  (ディアナは王子様と同じクラス!?   あんたの本来入るべきクラスはここでしょう!?)

  ここにも手を回したに違いない!  どこまで汚い手を使ってくるの……!  許せない!
  私は憤慨した。

「───待って?  確か一ヶ月後に実力テストがあるわ。そこで全てが明らかになるはずよ」

  だって、そこで一位を取るのはこの私、ライラックだもの!
  入学試験や特待生、クラス編成までは金を積んだり身体を差し出して何とかしてもらっても日常のテストまでの捏造は無理でしょ?
  ディアナが赤っ恥をかいて私が真の天才として華々しくデビューする時というわけね!
  
  (王子様が妙に悪役令嬢に入れ込んでる様子は気にはなるけど……)

  そんなものストーリーが戻れば気にしない。

「ふふ、一ヶ月後が楽しみね!」


─────


「ど、どういう事?」

  そうして張り出された実力テストの結果。
  そこには堂々の一位として、ディアナ・クワドラントの名前が載っていた。

「……は?  意味分からない。ここまで捏造しちゃったの?  私は?  何で私の名前が無いの?」

  私は怒りを覚えた。
  汚い手を使った悪役令嬢は私の成績と彼女の成績をそっくり入れ替えさせたに違いない。
  どうせ簡単だし一位だからと適当な勉強しかしなかったけど私の名前が載らないのはおかしい。

  (許せない……そこまでして特待生、王子様の婚約者でいたいってわけ?)

  こんなにも健気なヒロインの私を何だと思っているの?
  と、怒りまくっていたその時、廊下の向こうから王子様と悪役令嬢が仲良く並んでやって来た。

  (王子様の隣!  そこは私の場所なのに!)

  王子様と談笑しながらこの結果を見に来るのは私、ライラックのはずだったのに!
  またもや奪われた事に私は憤慨した。

  色々と悔しかったけれどとりあえず二人の様子を見ようと思って私は物陰に隠れる事にした。




「ディアナ……」
「フレデリック様……」

  掲示板の前で見つめ合う二人。

  (はぁぁ?  何なの?  あの空気は!)

  嫌われ悪役令嬢はどこへ行ったの!?   許せなーい。邪魔してやるわ─────!
  私は手に持っていたノートやプリントの紙の束、そして、筆記具を頭の上に持ち上げると勢いよくその場にぶちまけた。


────



「…………見向きもされなかった。あんなに困ってる私をアピールしたのに……」

  拾って下さい……困ってます……
  ああ言えば、王子様と接点を持つきっかけも出来てラッキーと思っていたのに、全く見向きもされなかった。最後まで無視されたわ。

「あれじゃ、私はただの間抜けなピエロじゃないの!」

  どうして?  どうして物語がこんなに違ってしまっているの?  ここは小説の世界よ。ゲームと違ってルートの分岐は無いのよ?  選択ミスもない世界なのよ?

  (王子様も!  悪役令嬢ディアナを見る時のあの目!  まるで愛しい人を見るかのような目……本来は私に向けられるはずの目……)

「どうしてよ……まさか悪役令嬢ディアナが何かしたの?」

  学園に対してと違い、王子様には身分を盾にすることは出来ないし金を積んでも意味が無い。そうなると……

「洗脳?  悪役令嬢が王子様を操っている……とか?  そして、図々しくもヒロインである私の立場の乗っ取りを画策した……?」

  そんなの許せない。
  この世界の主役は私。王子様は私を選んで悪役令嬢はざまぁされる運命だと決まっている。
  あの女の行き着く先は地獄なのよ。


「……早く、元に戻さなくちゃ…………どんな手を使っても」


  可愛くて優秀な私が王子様を射止めて、悪役令嬢は断罪される……
  この未来は絶対なんだから。

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