【完結】殿下! それは恋ではありません、悪役令嬢の呪いです。

Rohdea

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閑話 ヒロインの大誤算①

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  最初におかしいと思ったのは、特待生が発表された時だった。

「───それでは次に、今年の特待生の発表へとうつる。すでに知っている者も多いようだが、今年の特待生はほぼ満点という優秀な成績を納めていた。その者の名は───」

  この言葉の続きは、当然、私……
   ───ライラック・トゥルハーシ
  そう呼ばれると決まっていた。

  なのに実際に学園長の口から語られた名前は、
  
「───ディアナ・クワドラント」

  (…………は?)

  何で呼ばれたのが私ではないうえに、その名前なの?   
  だって、その名前は……
  
  「───……っ!  嘘っ……でしょう?」

  そんな言葉が思わず私の口からは飛び出していた。

  (どうして、ディアナなのよ!)

  特待生になるのは私のはずだったのに!


 ─────


  私の名前は、ライラック・トゥルハーシ。
  大きな目と長いまつ毛。モッチモチのお肌にフワフワしたピンク色の髪を持ち、とにかく誰が見ても可愛いと口にしてしまう見た目が特徴の平民。
  だけど、私はただのその辺の平民なんかじゃない。
  後に、この国の王子様に見初められて妃になる事が確定している特別な人間。

  ───何でそんな事を知っているのかというと、それは私がこの世界とは違う世界の記憶を持っているから!
 
  (ここは小説の世界……そして私は主人公でヒロインなのよ!)

  この小説の物語は至って普通の王子様に見初められた主人公のシンデレラストーリー。
  分かりやすく王子様との出会いがあって、分かりやすくお互いが惹かれあう。ライバルとしては王子様の婚約者として定番の悪役令嬢も出て来るわ。
  もちろん、ざまぁして私が最後に幸せになるド定番のストーリー!

  そんな絶対的な幸せが約束された世界の物語の始まりこそが、この学園の入学式だった。

  まずは試験結果で私が特待生として選ばれる。
  これにより、私は学園中の注目を集める存在となり、王子様とも出会いを果たす。

  (チョロいわね~)

  ───転生した私にとってこの世界の勉強はとっても簡単だった。
  え?  こんなの前世で言うところの小学生の低学年辺りでやりましたけど?    みたいな勉強ばっかり。
  こんなに簡単なら試験勉強なんてしなくても絶対合格するし、特待生に選ばれるのも簡単だわって舐め腐って入学試験を受けた。
 
  (ふふ、当然、合格通知が届いたわ)

  この段階で特待生なのかどうかは分からなかったけど、この世界のヒロインである私以外が特待生になるなんて有り得ない話だったから、当然私に決まると思ってた。

  ───それが!
 
  何故、この女なの?
  ディアナ・クワドラント! 
 
  私の輝かしい未来への道にちょっとしたスパイスを与える為だけに使わされる悪役令嬢で、私の愛しの王子様の婚約者を名乗ってる女。
  王子様には蛇蝎のごとく嫌われているくせに、婚約者の座に虚しくしがみつこうとする馬鹿な女。
  そんな馬鹿な悪役令嬢ディアナの成績は下から数えた方が早い。
  むしろ、馬鹿すぎてこの学園の入学は裏口入学を使っていた事が後に判明し、王子様にざまぁされる時にその事を強く追求されてオロオロしていた。

  (無様よね~)

  侯爵家と王子の婚約者という身分を盾にして金を積んで汚い手で入学した悪女中の悪女!  悪役令嬢という言葉がピッタリだ。
  言動も行動も本当に馬鹿。  
  悪役令嬢と呼ばれるだけあって悔しい事に見た目だけは美人だけど!  (でも、私の方が可愛いけどね!)
 
  そんな馬鹿女が、私を押し退けて特待生!?
  有り得ないでしょう!

  私はギリギリと唇を噛んだ。

  (……いくら金を積んだの?  いえ、金だけじゃ無理よ……これは学園長に身体まで売ったんじゃないの?  ……有り得るわ……だって、あの悪役令嬢ディアナだもの。それくらいやりかねない!)

  ああ、なんて汚いの!
  そんな汚い手で私の未来の夫……王子様に近付かないでもらいたいわ!


────


  ヒロインの私は、見た目の可愛さゆえに、妖精だの、可愛いだの、可憐だの、見ているだけで目の保養になるだの、常に周囲からそう噂される程のすごい美少女。
  入学式の会場に向かう途中もずっとそう言われて皆に見られていた。
  さすが私よね!
  こんな私だもの。王子様も私に一目惚れ間違いなし!  そう思ったのに……



「ディアナ?  緊張しているの?」
「え?  きゃっ!?  フレデリック様?」

  新入生代表の挨拶を終えたはずの、私の未来の夫になる予定の王子様が、壇上で悪役令嬢ディアナを抱き寄せていた。
  
  (……は?)

  何してるの、あれ。
  その後も二人は顔を近付けてはヒソヒソと何か話していた。
  気の所為?  悪役令嬢の顔が赤い……王子様はそんなディアナを慈しむような目で見つめて───……

  まるで、恋人同士のような雰囲気を出している二人に周囲もホウッと見惚れていた。

  (ふざけないで!  どうしてこの私より目立っているの?)

  この入学式は私が目立つ為の……王子様に見初められる為の大事な時なのよ?
  なのにディアナばかりが目立ってしまっている。

  (なんだかよく分からないけど……目立ちたいなら、自分で行動を起こすしかない?)

  せっかくの特待生はあの悪役令嬢に汚い手で奪われてしまった。
  このままでは私はまるで目立たずに入学式が終わってしまう。そんなの許せない。
  この小説には無かったけれどこうなったらやるわよ!  定番あるある!

  “必殺、か弱い女の子のフリ大作戦”

  今、この場で大きな音を立てて倒れれば私は確実に目立つ事、間違いなし!
  ヒロイン補正とかきいちゃって、王子様が駆けつけてくれて抱き上げて医務室に連れて行って貰える、超展開なんかも起きちゃうかもしれない!  ふふふ……最高ね!

  そう目論んだ私は具合を悪くして倒れるフリをした。

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