【完結】殿下! それは恋ではありません、悪役令嬢の呪いです。

Rohdea

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第二十話 試す事にしました ~フレデリックVer.~

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『殿下、改めて、これからもよろしくお願いしますわ。殿下のお力になれるような立派な妃を目指して頑張ります!』

  ディアナがそう言って僕に挨拶をしてくれた。
  バカみたいに緊張していた僕が返せた言葉が……

『ああ……』

  ───今から過去に戻れる方法があったなら、僕は確実にこの日に戻り自分を殴り付けている事だろう。
  緊張していたにしても酷すぎる……

  ディアナはこんな僕にも微笑みを崩さず終始ニコニコしてくれていたけれど、内心ではなんだコイツと思っていたに違いない。
  そして次こそは!  そうして迎えた初めてのお茶会。
  意気込んでいたはずの僕に待っていたのは、更なる緊張とやっぱりボコボコに殴ってやりたくなるほど情けない自分の受け答えだった。

『……殿下、今日はいい天気ですわね!』
『ああ……』
  (いい天気で良かった!)

『……殿下、このお菓子美味しいですわね!  さすが王家の御用達ですわ」』
『そうだな……』
  (気に入ってくれたかな?  僕もこの店の菓子は好きなんだ)

『……殿下、あそこにキレイなお花が咲いてますわ!  なんて名前の花でしょう?  ご存知ですか?』
『……いや』
  (花が好きなの?  僕は詳しくないけど君の方がキレイだよ)

  なんだこれ。言いたい事が全く言葉にならない。
  さすがにディアナの顔もだんだん引き攣っていく。

  僕がこんなになるのはディアナの前だけだった。
  そして、何度目かのお茶会の後、僕はディアナがメイドに話しているのを聞いてしまった。

『───殿下は、きっと政略結婚で決まった婚約者わたしの事なんて好きになれないのよね……』

  (─────っ!)

  このままじゃダメだ!  
  このままじゃ、後に結婚出来たとしても悲しい事になるだけだ。
  僕はディアナとイチャイチャしたい!

  (僕の好きになったあの笑顔を見せてくれなくなるのは嫌だ!)


────


『殿下、私、一生懸命刺繍しましたの!  受け取って下さい!』

  ディアナからの初めてのプレゼント。
  あまりの嬉しさに興奮して倒れるかと思った。

  (お礼……お礼を言うんだ、僕!)

  物を貰っておいて『あぁ、そうだな、いや』なんて言葉は絶対にダメだ!  
  ただでさえ無いであろうディアナからの僕の好感度がマイナスに振り切ってしまう!

『……ありがとう』

  どうにかお礼を口に出来たけれど、今度は表情筋が仕事を放棄した。
  何故だ!

  (ディアナの事になると何かがおかしい……なぜ僕はこんなにも空回りしている?)

  ディアナに嫌われるのは嫌だ……!  嫌なのに!
  また、あの無邪気な笑顔がみたいと思っているのに。

  そんなある日の事だった。

  空回りしかしていない僕だけれど、ディアナの好みのタイプである、
  “背が高くて優しくて強くてかっこよくて頭も良くて優秀、誠実で……何でもスマートにこなせて、滅多な事では怒らない人”
  を目指していた僕は、好きじゃなかった勉強にも力を入れるようになっていた。
  特に本を読むのはなかなか面白いかったので図書室に通うことが増えていた。
   
  (これもディアナのおかげだよなぁ……)

  そうして、連日通う図書室の中でを見つけた。

  ───バサッ

『ん?  本、落としたかな?』

  自分の手から落ちた感覚は無かったけれど、本の落ちる音がした。 
  面倒くさがってかなり大量に積み上げて歩いていたせいかもしれない。
  何の本だろう?
  そう思って拾い上げたら───

『……王家の秘術?  って、しかも禁忌って……何でこんな所に……?』

  自分が手にした覚えのない本だった。どうやら偶然落ちたのだろう。
  だいたい何でこんな危険そうな本を普通の書架に入れるかな?
  そんな事を思いながらパラパラと軽くページをめくり中を眺めると……

『秘術と言うより、呪っていないか?』

  片思いの人と偶然会える!  片思いの人と話せるようになる、両思いになれる、自分の好きな人を────

『……まるで呪いみたいだが……随分ささやかなのが多いな。そして、何だろうこの僕の為にあるような内容は……』
  
  前半部分はこういう内容ばかりで、後半になるとまさにタイトルに相応しい“禁忌の秘術”も記載されていたが、僕は前半のある部分に目をつけた。

『────好きな人に素直になれる方法?』

  すごく惹かれた。
  誰かを呪うような事ばかり載っている本だけど、これは自分にかける暗示のようなものだろうか?

  (試してみたい……)

  僕はこっそりそのページのメモを取った。

  

  術を試すには事前準備が必要だ。すぐに行えないのがこの秘術の難点だった。
 
  (だからこそ、秘術と呼ばれるのかな?)

  そんなディアナの為に素直になれるという秘術の準備をしていたその日、図書室でディアナと会った。


『殿下も何か本を探しにいらしたのですか?』
『…………ああ』
『そうでしたか!  殿下が本をお好きなのは有名ですものね!』

  (……ディアナは僕が本を好きだと知っている、のか?)

  そんな事でさえ幸せを感じる僕は……どれだけ彼女の事が好きなのだろう?
  内心ではなんだコイツと思ってるだろう僕にいつも真っ直ぐ話しかけてくれるディアナ。
  会う度に僕の好きの想いは増していくばかり。

  そんなディアナは逃げるようにして図書室を去って行った。

『あんなに慌てる姿は珍しいな…………ん?』

  床に本が落ちている。
  僕はその本を拾う。ディアナが落としたのだろうか?
  ディアナの興味のある本とは何だろう───

『え!』

  そう思ってタイトルを見て驚いた。まさかの例の秘術の本。

『何故ここに?  ……まさか、ディアナが読んだ、のか?』

  (どこまで呼んだか分からないけど、これは……秘術を試す時はディアナにバレないようにしないといけないな……)


  
  そうして用意が整った僕は、まず“好きな人に素直になれる方法”を自分にかける。
  この結果次第では……ずるいかもしれないけどディアナに……ディアナを振り向かせるような術を使ってみたいと思っている。

  (その為にはまず、自分に害が起こらないか試さないと)

  こういう類は術者本人や術をかけられた人に影響が起きる場合があるからな……
  僕の身勝手でディアナに何かあったら大変だ。

  そうして、僕は好きな人……ディアナに素直になれる方法を試した───

  
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