5 / 26
5. 話が違う! と言われても……
しおりを挟むどこからどう伝えれば良いの?
既に招待状は私の手元にあるのよ?
あと、どうしてもこれだけは聞きたい。
「……ねぇ、リオーナ?」
「なぁに、お姉様?」
「その王太子殿下の誕生日パーティーは私が招待されるのよね?」
「そうよ!」
リオーナが満面の笑みで答える。
「なら、何故そこであなたとアシュヴィン様が仲を深める話になるわけ?」
招待されているのは私でリオーナでは無いのよね?
おかしいと思う。
私の言葉に、リオーナはにんまりと笑う。
(その笑顔はろくな事を言わない笑顔!)
「決まっているでしょう? 私がそのパーティーに参加出来るからよ!」
「は?」
何でそうなるのか分からなくて私は思わず顔をしかめる。
「あ、お姉様。またその顔! もしかして疑ってるの?」
「疑う……以前にリオーナが参加出来る理由が分からないわ」
まさかとは思うけど、パーティー会場に乱入……とかしないわよね??
だって、今のこの子ならやりそうなんだもの!
「……お姉様が何を思ってるかは何となく分かるわ。まさか、私が招待されてもいないのに乱入するとでも思ってるの?」
「それは……!」
どうやら、私の考えは顔に出ていたらしい。
「お姉様ったら、失礼しちゃうわ! いくらなんでもそんな真似はしないわよ」
「なら、どうしてリオーナが会場に入れるの?」
「ふふん! ヒロインはいつだって特別なのよ!」
またそれなの? 駄目だわ。ますます意味が分からない。
──この時の私はそう頭を抱えたけれど、なぜかリオーナが自信満々だった理由だけはそれから数日後に判明する事になる。
ちなみに、パーティーの招待状が私の元に届いた経緯は誤魔化しておいた。
◇◇◇
「ルファナお嬢様宛てに贈り物が届いています」
パーティーを明後日に控えたその日、メイドが私に小さな箱を持って来た。
「私に?」
「婚約者のグスタフ侯爵家……アシュヴィン様からみたいです」
「アシュヴィン様!?」
私は慌ててその箱を受け取る。
(何かしら? アシュヴィン様からの贈り物なんて初めてだわ!)
ドキドキしながら開封すると、そこには揃いのイヤリングとネックレスが入っていた。
「紫色……これは、アシュヴィン様の瞳の色?」
思わず、そう口に出してしまうくらいその色はアシュヴィン様の色を彷彿とさせた。
そして、中にはカードが入っている。
“パーティーの日に身につけて欲しい”
「……まぁ!」
たったそれだけが書かれた一言のカードだったけれど、私は嬉しくなって思わず頬が緩む。
(ちゃんと私の事を気にしてくれているんだわ)
嬉しい。
予定していたドレスで大丈夫かしら? このイヤリングとネックレスに合わせて……
なんて私がウキウキ考えた時、
「お姉様ー!」
バーンッと私の部屋の扉が開いた。
そうして、またしてもリオーナが私の部屋に飛び込んでくる。
もちろん、ノックは無い。
(この子はまた……!)
「……今度は何? リオーナ。それから何度も言っているけどノックもして頂戴!」
「そんな事よりも! あのね、お姉様に確認したい事があって……って、それ!!」
リオーナがよっぽど驚いたのか私の手元を見て叫んだ。
「どうして? どうしてそれがそこにあるの?」
「リオーナ?」
「お姉様……その手元に持っている装飾品は……」
何事かと思ったけれど、どうやら、アシュヴィン様からの贈り物を見て叫んだらしい。
「これ? これはアシュヴィン様から……」
「だから、どうして!?」
……あぁ、これはまた何か言い出すんだわ。
さすがに分かって来た。
「どうして、とは?」
「お姉様、話が違うわ!」
リオーナが首をプルプルと横に振る。
話しが違うと言われても。
「違うって何? どういう事?」
「だって、それは、もっと先……好感度が上がってから……いずれ私が……何でお姉様に? 早すぎる……今じゃないのに」
「……? リオーナ、何を言ってるの?」
また、支離滅裂な事を言い出した。
そろそろ、これ以上放置するのは良くないかもしれない。
「……おかしい。さすがに色々おかしいの」
「リオーナ、あなたね。そろそろいい加減にしないと……」
「それに、お姉様も!! どうして元気なの!?」
──お父様達にも言って医者に診てもらうわよ?
そう言おうと思ったのに。
どうして、この子はタイミング良く気になる事を言ってくるのかしら……
「は? 元気? 見ての通りよ?」
「本当に? どこか具合が悪かったりしない? 熱があるとかお腹が痛いとか……何でもいいから」
「……?」
おかしい。どうして、そんなに私を病気にしたがるの?
私は眉をひそめた。
「もう、パーティーまで時間が無いのよ!」
「…………ねぇ、リオーナ? まさかとは思うけど、あなたがパーティーに参加する……いえ、参加出来る理由って」
「そんなの決まってるわ! お姉様の代わりよ! パーティーの3日前から体調を崩したお姉様がパーティーに行けなくなるから、私が代理として一緒に行って欲しいと、アシュヴィン様に誘われるのよ!!」
「……」
クラクラした。
私はたった今、具合が悪くなりそうよ……
えっと、これは一から説明しないといけないの?
私がため息をつきながらリオーナに顔を向けると、リオーナは顔色を悪くしたまま、ブツブツと呟いていた。
「おかしい。話が違う。これは大事な出会いイベントを起こせなかったから狂ってしまったの?」
「……」
リオーナの言っていた“恋に落ちる”出会い。
それを果たしていないのなら、例え本当に私が体調を崩してパーティーに参加出来なくなっていたとしても、リオーナが私の代わりに誘われる可能性は低かったのでは?
そう思うのに、リオーナの中では違うらしい。
(それよりも、リオーナが私の具合が悪くなる事を望んでいたという事がショックだわ)
「このままでは、パーティーのイベントも起こせないじゃないの」
(……まさかとは思うけど、私に一服盛ったりはしないわよね……?)
いくら、困った妹でもそこまでは……しない…………はず。
いえ、最近のあの子を見ていると自信を持って言えないけれど。
「だとしても、狂いすぎよ! これは、バグなの? それとも、私の知らないルートが存在するとでも?」
「……」
今のリオーナには何を言っても無駄だと思った。
◇◇◇
パーティー前日。
リオーナの不吉な発言のせいで、自分の身を心配したものの体調不良なども起こらず元気に過ごしていた。
(まぁ、食事にはちょっと警戒してしまったけど)
「ルファナ嬢」
「ア、アシュヴィン様……」
明日に備えて今日は寄り道せずに帰ろうとした所でアシュヴィン様が私の教室にやって来た。
(こんな事は初めて!)
「……帰宅前にすまない。ちょっと君に聞きたい事……があって」
「? 何かありましたか?」
相変わらずアシュヴィン様は、私の顔を真っ直ぐ見ようとしない。
たまに目が合うとやっぱり逸らされる。
そんなアシュヴィン様はとても気まずそうに口を開いた。
「明日のパーティーの事で……ちょっと」
「……あ、はい……」
その言葉にドキッと胸が跳ねる。
やめて! パーティーの話は心臓に悪いから。
何だか聞くのが怖い。
「……それと、君の妹の事なんだが」
「え!」
ここで、リオーナの話なの!?
私は体調不良も起こしていないし、元気なままよ?
なのに、まさかとは思うけれど……リオーナに代わってくれなんて言い出すのでは?
動揺した私はそんな不安に駆られてしまい、ドキドキしながら次の言葉を待った。
77
あなたにおすすめの小説
あの、初夜の延期はできますか?
木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」
私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。
結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。
けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。
「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」
なぜこの人私に求婚したのだろう。
困惑と悲しみを隠し尋ねる。
婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。
関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。
ボツネタ供養の短編です。
十話程度で終わります。
【完結】平凡な令嬢、マリールイスの婚約の行方【短編】
青波鳩子
恋愛
平凡を自認する伯爵令嬢マリールイスは、格上の公爵家嫡男レイフ・オークランスから『一目惚れをした』と婚約を申し込まれる。
困惑するマリールイスと伯爵家の家族たちは、家族会議を経て『公爵家からの婚約の申し込みは断れない』と受けることを決めた。
そんな中、レイフの友人の婚約パーティに招かれたマリールイスは、レイフから贈られたドレスを身に着けレイフと共に参加する。
挨拶後、マリールイスをしばらく放置していたレイフに「マリールイスはご一緒ではありませんか?」と声を掛けたのは、マリールイスの兄だった。
*荒唐無稽の世界観で書いた話ですので、そのようにお読みいただければと思います。
*他のサイトでも公開しています。
【完結】本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
愛する旦那様が妻(わたし)の嫁ぎ先を探しています。でも、離縁なんてしてあげません。
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
【清い関係のまま結婚して十年……彼は私を別の男へと引き渡す】
幼い頃、大国の国王へ献上品として連れて来られリゼット。だが余りに幼く扱いに困った国王は末の弟のクロヴィスに下賜した。その為、王弟クロヴィスと結婚をする事になったリゼット。歳の差が9歳とあり、旦那のクロヴィスとは夫婦と言うよりは歳の離れた仲の良い兄妹の様に過ごして来た。
そんな中、結婚から10年が経ちリゼットが15歳という結婚適齢期に差し掛かると、クロヴィスはリゼットの嫁ぎ先を探し始めた。すると社交界は、その噂で持ちきりとなり必然的にリゼットの耳にも入る事となった。噂を聞いたリゼットはショックを受ける。
クロヴィスはリゼットの幸せの為だと話すが、リゼットは大好きなクロヴィスと離れたくなくて……。
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
他人の婚約者を誘惑せずにはいられない令嬢に目をつけられましたが、私の婚約者を馬鹿にし過ぎだと思います
珠宮さくら
恋愛
ニヴェス・カスティリオーネは婚約者ができたのだが、あまり嬉しくない状況で婚約することになった。
最初は、ニヴェスの妹との婚約者にどうかと言う話だったのだ。その子息が、ニヴェスより年下で妹との方が歳が近いからだった。
それなのに妹はある理由で婚約したくないと言っていて、それをフォローしたニヴェスが、その子息に気に入られて婚約することになったのだが……。
【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる