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第一部:第一章 夢への第一歩
(三)牙竜将①
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(三)
やんやの歓声を受け、シェラが恥ずかしそうに元の場所に戻ってくると、近くで大きな歓声が上がった。
人の隙間から覗くと、ガイザが善戦していた。打ち込まれる剣をすべて受け止め、受け流している。なかなか反撃の機会を与えられないが、後退もせず、踏ん張っていた。
「おー! すごいすごい!」
戦いの様子を見て、シェラは跳び跳ねて喜んだ。仕舞いには、周囲につられて「いけっ!」「今だ!」と叫んでいた。
ガイザは好機を得て三度目の攻撃を繰り出したが、受け流されると、体勢を崩した所を仕留められた。対戦相手の騎士に、良くやったというように肩をポンポンと叩かれると、苦笑いして引き上げてきた。
「お疲れ様。凄かったね!」
シェラに誉められガイザは「どうも」と短く答えると少々顔を赤らめた。
「あの…」
続けてシェラが何かを言いかけたところで、また歓声が上がる。
皆の視線の先には、グレイズと名乗った少年がいた。騎士も手を抜いているのかもしれないが、互角に戦っているように見える。
「あ、ただの口先だけの、嫌な奴じゃなかったんだ……」
「知ってるのか?」
「朝、受付の時にひと騒動あって……」
剛直と言えるような、前へ踏み出していく戦い方は、彼の性格そのものなのだろう。更に訓練をすれば、ここに居る現役の騎士達をも凌ぐ強さを手にする事は想像に難くない。
しばらく打ち合っていたが、「そこまで」という声で戦いを終えた。
「悔しいけど凄いなあ。彼が一番かな」
不遜な態度を崩さずに、引き上げてくるグレイズを見て、シェラが唸った。
「違うと思うよ……」
「え……?」
ボソッとガイザが呟いたのを聞いて、シェラは驚いて視線を戻した。
「ああ……そうそう、さっき君が言いかけてたことだけど、何だったの?」
先程の事を思い出したように、ガイザが訊ねる。
「ガイザさんが仰っていた、剣の比較対象が何とか言うお話、途中だったので気になって」
ああ、と呟くとガイザは気恥ずかしそうに、頭をポリポリと掻いた。
「身近に、一太刀も入れられないような奴が居るから、自分が強いとは思えなかったんだ」
この人でもそんな相手が居るのか。それがグレイズよりも強いという人なのだろうか。どんな人なんだろう、シェラは少し気になった。
それなりの戦いをする者も居たのだが、グレイズの戦いを見た後では、誰もが不甲斐なく見えてしまい、特に歓声が上がることもなく、周囲は静かになっていった。
「お、ラーソルの番だ。」
受付前の騒動を見たのだろうか、まばらながらも声援が聞こえる。
遠くから開始の合図が聞こえ、同時にラーソルバールが動くのが見えた。その直後に高い音が響くと、僅かな間を置いて、カランという乾いた音がした。
剣が弾かれて、転がった音だった。
「あらら……」
彼女の試験が終わってしまった。シェラは残念な気持ちでガイザを見やると、彼は口を開けたまま試験の様子を見つめていた。
やんやの歓声を受け、シェラが恥ずかしそうに元の場所に戻ってくると、近くで大きな歓声が上がった。
人の隙間から覗くと、ガイザが善戦していた。打ち込まれる剣をすべて受け止め、受け流している。なかなか反撃の機会を与えられないが、後退もせず、踏ん張っていた。
「おー! すごいすごい!」
戦いの様子を見て、シェラは跳び跳ねて喜んだ。仕舞いには、周囲につられて「いけっ!」「今だ!」と叫んでいた。
ガイザは好機を得て三度目の攻撃を繰り出したが、受け流されると、体勢を崩した所を仕留められた。対戦相手の騎士に、良くやったというように肩をポンポンと叩かれると、苦笑いして引き上げてきた。
「お疲れ様。凄かったね!」
シェラに誉められガイザは「どうも」と短く答えると少々顔を赤らめた。
「あの…」
続けてシェラが何かを言いかけたところで、また歓声が上がる。
皆の視線の先には、グレイズと名乗った少年がいた。騎士も手を抜いているのかもしれないが、互角に戦っているように見える。
「あ、ただの口先だけの、嫌な奴じゃなかったんだ……」
「知ってるのか?」
「朝、受付の時にひと騒動あって……」
剛直と言えるような、前へ踏み出していく戦い方は、彼の性格そのものなのだろう。更に訓練をすれば、ここに居る現役の騎士達をも凌ぐ強さを手にする事は想像に難くない。
しばらく打ち合っていたが、「そこまで」という声で戦いを終えた。
「悔しいけど凄いなあ。彼が一番かな」
不遜な態度を崩さずに、引き上げてくるグレイズを見て、シェラが唸った。
「違うと思うよ……」
「え……?」
ボソッとガイザが呟いたのを聞いて、シェラは驚いて視線を戻した。
「ああ……そうそう、さっき君が言いかけてたことだけど、何だったの?」
先程の事を思い出したように、ガイザが訊ねる。
「ガイザさんが仰っていた、剣の比較対象が何とか言うお話、途中だったので気になって」
ああ、と呟くとガイザは気恥ずかしそうに、頭をポリポリと掻いた。
「身近に、一太刀も入れられないような奴が居るから、自分が強いとは思えなかったんだ」
この人でもそんな相手が居るのか。それがグレイズよりも強いという人なのだろうか。どんな人なんだろう、シェラは少し気になった。
それなりの戦いをする者も居たのだが、グレイズの戦いを見た後では、誰もが不甲斐なく見えてしまい、特に歓声が上がることもなく、周囲は静かになっていった。
「お、ラーソルの番だ。」
受付前の騒動を見たのだろうか、まばらながらも声援が聞こえる。
遠くから開始の合図が聞こえ、同時にラーソルバールが動くのが見えた。その直後に高い音が響くと、僅かな間を置いて、カランという乾いた音がした。
剣が弾かれて、転がった音だった。
「あらら……」
彼女の試験が終わってしまった。シェラは残念な気持ちでガイザを見やると、彼は口を開けたまま試験の様子を見つめていた。
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