29 / 439
第一部:第三章 学校生活
(一)魔法と気晴らし③
しおりを挟む
武器の販売は制限されていて、武器の所持には許可が必要になる。
店としては、武器を買うはずの無い娘四人の来店に、最初は乗り気でない接客だった。
ところが途中で態度が変わった。私達が付けていた騎士学校のバッチが目に入ったのだろう。あまり熱心に勧められても困るので、素っ気無い態度を取りつつ、並べられた武器をゆっくりと眺めて回る。
剣や斧、槍、棍棒、槌、弓、そして鎧と盾。
さすがは王都最大と言われる店、様々な種類が並べられている。
剣にしても、型に流し込んで作られた量産品から、職人が手がけた逸品まであった。前者は粗悪品と言えそうな物もあり、後者は金額が桁違いの物ばかりで、とても手の出せる代物ではなかった。
四人それぞれが、好みのものがある様で、眺めているものが違う。私は直剣も気になったが、やはり片刃の剣を探していた。
探し物は見つけたが、種類も少なく、私の趣味に合うものでは無かった。
十分に店内を歩き回ったところで、三人の様子を伺うと、私と同じように、大体満足したように見えた。
結局、店側の期待を裏切って何も買わずに外に出ると、背後から店員の舌打ちのようなものが聞こえた。
「面白かったけど、良い物なかったね」
舌打ちに対する仕返しだろうか、シェラが目配せをしながら言った。
「品揃えの割には、欲しい物なかったよ」
シェラに応えるように、少し大きな声で言う。
「店員の態度もあまり良くなかった」
意外にもフォルテシアが続いた。彼女の場合、思った事を口にしただけだろう。そういえば、店員を邪魔そうにしていた気がする。
「おなか減ったよ。昼食にしましょう」
エミーナの言葉に全員が頷いた。
「そうだね、お昼にしよう」
お昼は、私のお気に入りの店に案内すると、予め言ってある。
案内したのは「熊の子亭」という食堂。これは父と私が時折利用していた店だ。
騎士団で父と同期だった人がオーナーをしている。
先代は熊のような方で、現オーナーが店を継いだ時に名前を今のものに変えたらしい。聞く話だと、以前は「穴熊亭」だったそうだ。
このお店、私が言うのも何だけど、何を食べても美味しい。
お勧めはシチューだけど、川魚の料理なんかも人気のメニューだ。
最近は、魔法の有効活用ということで、王都から少し離れた港町から、海産物を凍らせて輸送することが可能になったらしい。
今ではそちらを調理したものも、評判になっているようだ。
魔法で食材を冷凍、保冷するなんて事、考えもしなかったけど、便利な事もできるんだね。
魔法様々だ。
私達は今のまま鍛錬しても系統が違うから、そういう魔法使えるようにはならないんだけどね。魔法の有用性というものを感じたし、生活に直結しているんだということを知る事ができた。
しかし、これは輸送中の保冷効力維持のために、魔法使いが一人付きっ切りになるのだろうか。であれば、その食材を使用したメニューの値段が跳ね上がるということは、今なら理解できる。
魔法の事を忘れるつもりで出かけてきて、魔法に関心させられるというのも皮肉なものだ。
帰ったら頑張ることにして、まずは大好きなシチューを食べたい。
「おや、ラーソルちゃんか。久しぶりだな」
客の様子を見に出てきたオーナーが、私に気付いたのか声をかけてくれた。
「騎士学校の友達と来たんです。よろしく御願いします」
「おう、じゃあ、お友達のためにも気合を入れて作るぜ。今日は食材が揃ってるから、何でもいいぞ」
愛想よく応対すると、調理場に戻っていった。
全員が注文を終えて暫くすると、それぞれの料理が運ばれてきた。
私の前には当然シチュー。
シェラは私と同じ物、フィルテシアとエミーナは川魚の香草蒸しが、目の前に運ばれてきた。
それからお店からのおまけ、ということで蟹の焼き物が一皿置かれた。全員で分けろという事らしい。
川蟹ではなく、海の蟹。早速魔法の恩恵にあずかる事になるとは思わなかった。
出てきた料理を三人が美味しそうに食べるのを見て、私はひと安心した。
おまけして頂いた蟹は、水揚げした直後に氷結させたのだろう。全く生臭さは無く、とても美味しかった。そして美味しい食べ物は、皆の会話を弾ませた。
学校が始まってからの、それぞれの思いを語り合う、いい機会になったんじゃないかと思う。
いい一日だった、と言えるんじゃないかな。
店としては、武器を買うはずの無い娘四人の来店に、最初は乗り気でない接客だった。
ところが途中で態度が変わった。私達が付けていた騎士学校のバッチが目に入ったのだろう。あまり熱心に勧められても困るので、素っ気無い態度を取りつつ、並べられた武器をゆっくりと眺めて回る。
剣や斧、槍、棍棒、槌、弓、そして鎧と盾。
さすがは王都最大と言われる店、様々な種類が並べられている。
剣にしても、型に流し込んで作られた量産品から、職人が手がけた逸品まであった。前者は粗悪品と言えそうな物もあり、後者は金額が桁違いの物ばかりで、とても手の出せる代物ではなかった。
四人それぞれが、好みのものがある様で、眺めているものが違う。私は直剣も気になったが、やはり片刃の剣を探していた。
探し物は見つけたが、種類も少なく、私の趣味に合うものでは無かった。
十分に店内を歩き回ったところで、三人の様子を伺うと、私と同じように、大体満足したように見えた。
結局、店側の期待を裏切って何も買わずに外に出ると、背後から店員の舌打ちのようなものが聞こえた。
「面白かったけど、良い物なかったね」
舌打ちに対する仕返しだろうか、シェラが目配せをしながら言った。
「品揃えの割には、欲しい物なかったよ」
シェラに応えるように、少し大きな声で言う。
「店員の態度もあまり良くなかった」
意外にもフォルテシアが続いた。彼女の場合、思った事を口にしただけだろう。そういえば、店員を邪魔そうにしていた気がする。
「おなか減ったよ。昼食にしましょう」
エミーナの言葉に全員が頷いた。
「そうだね、お昼にしよう」
お昼は、私のお気に入りの店に案内すると、予め言ってある。
案内したのは「熊の子亭」という食堂。これは父と私が時折利用していた店だ。
騎士団で父と同期だった人がオーナーをしている。
先代は熊のような方で、現オーナーが店を継いだ時に名前を今のものに変えたらしい。聞く話だと、以前は「穴熊亭」だったそうだ。
このお店、私が言うのも何だけど、何を食べても美味しい。
お勧めはシチューだけど、川魚の料理なんかも人気のメニューだ。
最近は、魔法の有効活用ということで、王都から少し離れた港町から、海産物を凍らせて輸送することが可能になったらしい。
今ではそちらを調理したものも、評判になっているようだ。
魔法で食材を冷凍、保冷するなんて事、考えもしなかったけど、便利な事もできるんだね。
魔法様々だ。
私達は今のまま鍛錬しても系統が違うから、そういう魔法使えるようにはならないんだけどね。魔法の有用性というものを感じたし、生活に直結しているんだということを知る事ができた。
しかし、これは輸送中の保冷効力維持のために、魔法使いが一人付きっ切りになるのだろうか。であれば、その食材を使用したメニューの値段が跳ね上がるということは、今なら理解できる。
魔法の事を忘れるつもりで出かけてきて、魔法に関心させられるというのも皮肉なものだ。
帰ったら頑張ることにして、まずは大好きなシチューを食べたい。
「おや、ラーソルちゃんか。久しぶりだな」
客の様子を見に出てきたオーナーが、私に気付いたのか声をかけてくれた。
「騎士学校の友達と来たんです。よろしく御願いします」
「おう、じゃあ、お友達のためにも気合を入れて作るぜ。今日は食材が揃ってるから、何でもいいぞ」
愛想よく応対すると、調理場に戻っていった。
全員が注文を終えて暫くすると、それぞれの料理が運ばれてきた。
私の前には当然シチュー。
シェラは私と同じ物、フィルテシアとエミーナは川魚の香草蒸しが、目の前に運ばれてきた。
それからお店からのおまけ、ということで蟹の焼き物が一皿置かれた。全員で分けろという事らしい。
川蟹ではなく、海の蟹。早速魔法の恩恵にあずかる事になるとは思わなかった。
出てきた料理を三人が美味しそうに食べるのを見て、私はひと安心した。
おまけして頂いた蟹は、水揚げした直後に氷結させたのだろう。全く生臭さは無く、とても美味しかった。そして美味しい食べ物は、皆の会話を弾ませた。
学校が始まってからの、それぞれの思いを語り合う、いい機会になったんじゃないかと思う。
いい一日だった、と言えるんじゃないかな。
0
あなたにおすすめの小説
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について
水定ゆう
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】
千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。
月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。
気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。
代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。
けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい……
最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。
※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
悪役令嬢ではありません。肩書きはただの村人ですが、いつの日か名だたる冒険者になっていた。
小田
ファンタジー
ポッチ村に住む少女ルリは特別な力があったのだが、六歳を迎えたとき母親が娘の力を封印する。村長はルリの母の遺言どおり、娘を大切に育てた。十四歳を迎えたルリはいつものように山に薬草を採りに行くと、倒れていた騎士を発見したので、家に運んで介抱すると。騎士ではなく実は三代公爵家の長男であった。そこから彼女の人生は大きく動き出す。
特別な力を持つ村人の少女ルリが学園に行ったり、冒険をして仲間と共に成長していく物語です。
なろう、エブリスタ、カクヨム掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる