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第一部:第四章 ラーソルバールの休暇(前編)
(四)名代①
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(四)
「お嬢様にお伝えした方が、良いと思われる事が有ります」
ラーソルバールは食事の手を止めた。
向かいに座る女将の表情が、真剣なものだったからだ。
「最近、村で不安や不満を煽る輩が、時折現れるようになりまして…」
女将によると、その者達は「領主が増税を考えているらしい」とか「税金が高いのではないか」「領主に不満をぶつけた方がいい」などと、村人に接触してくるのだという。
「そうは言っても、この村の人間でそんなのまともに取り合う者なんか、誰一人居るはずもないんですが」
その言葉でラーソルバールの表情が曇る。
「他所の街や村でも、きっと同じような事が起きていて、それで利を得る誰かが居るって事ですね」
「きっと、そうでしょうね。私なんかにゃ背後に有るものなんて、考えても分かりませんけどね」
ラーソルバールにとって、現時点では特段脅威ではないが、暗躍する者達に好き勝手やらせる訳にもいかない。近隣の村が乗せられて反乱でも起こせば、カンフォール村に被害が出ないとも限らない。
南と西は王家の直轄領だけに何もできないが、東のゴランドール地方を治めるフェスバルハ伯爵であれば、父とも親交がある。話が通じるなら、多少は対策も立てられる。
次は、カンフォール村の対策だ。
「明日の早朝に自衛団の人達と一緒に、村長の所に行って話そうか……」
少し憂鬱になった。
村で有意義な休暇を、満喫してから帰るつもりで居たのに、丸一日潰してしまう事になる。
手を打たなければ、何が起こるか分からない。「何か」を未然に防ぐ役には立つのだから、全くの無駄ではない。最終的に無駄に終わってくれても、それはそれでいい。
「考えてばかり居ると、夕食が冷めてしまいますよ」
呼び掛けられて我に返った。
「ターシャさんも一緒に食べようよ。一人だと寂しい」
「お嬢様とご一緒出来る機会なんて、中々無いですからね。お言葉に甘えて失礼しますよ」
今日うちは嫌なことを忘れて、この時間と美味しい夕食を糧に、とりあえず明日頑張ろうと心に決めた。
翌朝、ラーソルバールは予定通り自衛団の詰所に寄った後、村長宅を訪れた。
詰所にいた四名のうち一名が居残り、一名が他の団員を召集に行き、二人がラーソルバールに同行することとなり、随行している。
村長宅に到着すると、村の運営役三名が緊急で呼び出された。
「皆さんはご存知かと思いますが、最近、他所から来た者が、村内で不満を煽るような言葉を口にする事があると、耳にしました」
皆一様に頷く。ただの噂ではなく、やはり実際に有った話という事なのだろう。
「本当に不満が有るようでしたら、そのような話に乗らず、私に言ってください。今は名代で来ていますから、それを聞くのも、私の役目です」
ラーソルバールが普段見せる優しい表情とは異なる、凛とした姿に皆が目を奪われた。
「不満など、有るはずがございません。ここで不満を抱えるようでしたら、何処に行っても駄目でしょう」
村長が口を開いた。
「お嬢様にお伝えした方が、良いと思われる事が有ります」
ラーソルバールは食事の手を止めた。
向かいに座る女将の表情が、真剣なものだったからだ。
「最近、村で不安や不満を煽る輩が、時折現れるようになりまして…」
女将によると、その者達は「領主が増税を考えているらしい」とか「税金が高いのではないか」「領主に不満をぶつけた方がいい」などと、村人に接触してくるのだという。
「そうは言っても、この村の人間でそんなのまともに取り合う者なんか、誰一人居るはずもないんですが」
その言葉でラーソルバールの表情が曇る。
「他所の街や村でも、きっと同じような事が起きていて、それで利を得る誰かが居るって事ですね」
「きっと、そうでしょうね。私なんかにゃ背後に有るものなんて、考えても分かりませんけどね」
ラーソルバールにとって、現時点では特段脅威ではないが、暗躍する者達に好き勝手やらせる訳にもいかない。近隣の村が乗せられて反乱でも起こせば、カンフォール村に被害が出ないとも限らない。
南と西は王家の直轄領だけに何もできないが、東のゴランドール地方を治めるフェスバルハ伯爵であれば、父とも親交がある。話が通じるなら、多少は対策も立てられる。
次は、カンフォール村の対策だ。
「明日の早朝に自衛団の人達と一緒に、村長の所に行って話そうか……」
少し憂鬱になった。
村で有意義な休暇を、満喫してから帰るつもりで居たのに、丸一日潰してしまう事になる。
手を打たなければ、何が起こるか分からない。「何か」を未然に防ぐ役には立つのだから、全くの無駄ではない。最終的に無駄に終わってくれても、それはそれでいい。
「考えてばかり居ると、夕食が冷めてしまいますよ」
呼び掛けられて我に返った。
「ターシャさんも一緒に食べようよ。一人だと寂しい」
「お嬢様とご一緒出来る機会なんて、中々無いですからね。お言葉に甘えて失礼しますよ」
今日うちは嫌なことを忘れて、この時間と美味しい夕食を糧に、とりあえず明日頑張ろうと心に決めた。
翌朝、ラーソルバールは予定通り自衛団の詰所に寄った後、村長宅を訪れた。
詰所にいた四名のうち一名が居残り、一名が他の団員を召集に行き、二人がラーソルバールに同行することとなり、随行している。
村長宅に到着すると、村の運営役三名が緊急で呼び出された。
「皆さんはご存知かと思いますが、最近、他所から来た者が、村内で不満を煽るような言葉を口にする事があると、耳にしました」
皆一様に頷く。ただの噂ではなく、やはり実際に有った話という事なのだろう。
「本当に不満が有るようでしたら、そのような話に乗らず、私に言ってください。今は名代で来ていますから、それを聞くのも、私の役目です」
ラーソルバールが普段見せる優しい表情とは異なる、凛とした姿に皆が目を奪われた。
「不満など、有るはずがございません。ここで不満を抱えるようでしたら、何処に行っても駄目でしょう」
村長が口を開いた。
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