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第一部:第五章 ラーソルバールの休暇(後編)
(一)メイドとドレス③
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「誰、これ?」
思わず首を傾げた。
鏡を見た瞬間の正直な感想だ。
「元がとても美しいですし、お若いので、化粧は紅を少々さしただけ。ティアラと首飾りは、さすがに奥様からの借り物ですが、良くお似合いですよ」
私はこれから社交界に行くのでしょうか?
鏡に映る別人のような姿に、戸惑いを覚える。普段から飾り気の無い格好ばかりしているので、ドレスなど無縁の物だ。
「さあ、そろそろ夕食のお時間でございます。皆様お待ちでしょうから、参りましょう」
そう言われて思い出した。この格好のまま食事をしなければいけないという事を。
どんどんと不安が増していき、心臓の音まで聞こえてきそうな気がする。
メイドに誘われ、大きな扉の前までやって来た。
「エレノールさん、変な汗が出てきたよ」
「大丈夫です、とってもお美しいですから」
そうじゃない。見当外れなメイドの返しに、思わず手が出そうになった。
「ラーソルバールお嬢様をお連れしました」
扉を叩き、中に到着を伝える。
「入って頂きなさい」
中から伯爵の声が聞こえた。
その言葉の後、ガチャリと音を立てて、扉が開く。
ラーソルバールは思わず目を閉じた。
「おおー」
室内から歓声が上がる。
ラーソルバールは、怖くて目が開けられない。何が怖いのか自分でも分からない。
「良くやったエレノール 、色々とご苦労だったな」
「そのお言葉を頂けて、ほっと致しました」
ほっとしたという表情どころか、生き生きとした顔のメイドを見て、伯爵が笑った。
「楽しかったか?」
「ハイ、とっても!」
即答したメイドに、ラーソルバールを含め、居合わせた一同全員が笑った。
このやり取りで気が紛れたラーソルバールは、ようやく目を開けることができた。
「本日は、夕食へのお招きばかりか、宿泊のお許しまで頂き、誠にありがとうございます」
令嬢らしく、恭しくお辞儀をした。一応、そうした礼儀は教え込まれている。
「気にしないでね、主人が好きでやってる事ですから」
夫人が伯爵の顔をちらりと見る。伯爵は照れ臭いのか、横を向いて視線を外した。
「奥様、アントワール様、グリュエル様、お久し振りでございます」
作り笑いでは無いが、かなり緊張しているので、顔がひきつっていないか心配になった。
「お久し振りね、ラーソルバールちゃん。大きくなってこんな美しい娘さんになって、見違えたわ。やっぱりアントワールの婚約者にならない?」
「奥様……」
苦笑いが危うく顔に出るところだった。
夫人も伯爵と同じことを言う。裏で作戦でも練っているのだろうか。
伯爵の長男、アントワールは十七才。見た目も悪くないし、才覚もそこそこという噂は聞いている。嫌ではないが、婚約者になるつもりは無い。
次男グリュエルは十五才。兄に似てはいるが、兄よりも体格が良く、武芸一辺倒らしい。
夫人とは何度か顔を合わせているが、穏和で優しい人物という印象を持っている。以前から可愛がって貰っており、親しみを持っている。
「さあ、立ってないで座ってくれたまえ」
伯爵家との晩餐が始まった。
思わず首を傾げた。
鏡を見た瞬間の正直な感想だ。
「元がとても美しいですし、お若いので、化粧は紅を少々さしただけ。ティアラと首飾りは、さすがに奥様からの借り物ですが、良くお似合いですよ」
私はこれから社交界に行くのでしょうか?
鏡に映る別人のような姿に、戸惑いを覚える。普段から飾り気の無い格好ばかりしているので、ドレスなど無縁の物だ。
「さあ、そろそろ夕食のお時間でございます。皆様お待ちでしょうから、参りましょう」
そう言われて思い出した。この格好のまま食事をしなければいけないという事を。
どんどんと不安が増していき、心臓の音まで聞こえてきそうな気がする。
メイドに誘われ、大きな扉の前までやって来た。
「エレノールさん、変な汗が出てきたよ」
「大丈夫です、とってもお美しいですから」
そうじゃない。見当外れなメイドの返しに、思わず手が出そうになった。
「ラーソルバールお嬢様をお連れしました」
扉を叩き、中に到着を伝える。
「入って頂きなさい」
中から伯爵の声が聞こえた。
その言葉の後、ガチャリと音を立てて、扉が開く。
ラーソルバールは思わず目を閉じた。
「おおー」
室内から歓声が上がる。
ラーソルバールは、怖くて目が開けられない。何が怖いのか自分でも分からない。
「良くやったエレノール 、色々とご苦労だったな」
「そのお言葉を頂けて、ほっと致しました」
ほっとしたという表情どころか、生き生きとした顔のメイドを見て、伯爵が笑った。
「楽しかったか?」
「ハイ、とっても!」
即答したメイドに、ラーソルバールを含め、居合わせた一同全員が笑った。
このやり取りで気が紛れたラーソルバールは、ようやく目を開けることができた。
「本日は、夕食へのお招きばかりか、宿泊のお許しまで頂き、誠にありがとうございます」
令嬢らしく、恭しくお辞儀をした。一応、そうした礼儀は教え込まれている。
「気にしないでね、主人が好きでやってる事ですから」
夫人が伯爵の顔をちらりと見る。伯爵は照れ臭いのか、横を向いて視線を外した。
「奥様、アントワール様、グリュエル様、お久し振りでございます」
作り笑いでは無いが、かなり緊張しているので、顔がひきつっていないか心配になった。
「お久し振りね、ラーソルバールちゃん。大きくなってこんな美しい娘さんになって、見違えたわ。やっぱりアントワールの婚約者にならない?」
「奥様……」
苦笑いが危うく顔に出るところだった。
夫人も伯爵と同じことを言う。裏で作戦でも練っているのだろうか。
伯爵の長男、アントワールは十七才。見た目も悪くないし、才覚もそこそこという噂は聞いている。嫌ではないが、婚約者になるつもりは無い。
次男グリュエルは十五才。兄に似てはいるが、兄よりも体格が良く、武芸一辺倒らしい。
夫人とは何度か顔を合わせているが、穏和で優しい人物という印象を持っている。以前から可愛がって貰っており、親しみを持っている。
「さあ、立ってないで座ってくれたまえ」
伯爵家との晩餐が始まった。
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