聖と魔の名を持つ者 ~その娘、聖女か魔女か。剣を手にした令嬢は、やがて国家最強の守護者となる~

草沢一臨

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第一部:第六章 後始末と始まり

(一)怒り②

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 最後に、シェラの部屋の扉をノックすると、眠そうな顔をした部屋の主が現れた。
「どうしたの」
「ちょっと今、うとうとしていただけ」
「ああ、ごめんね。また後にする」
 扉を閉めようとするラーソルバールだったが、シェラに慌てて止められた。
「あ、いいよ。気にしないで」 
「何だか申し訳ない。これ、お土産。昨日渡せば良かったんだけど、舞い上がっちゃってて」
 前日は体調も良くなり、魔力循環も良くなったことで、調子に乗って部屋で魔法の練習にのめりこんでしまっていた。気がつけば、周囲が暗くなっており、夕食時間ギリギリに、慌てて食堂に駆け込んだのだった。
「ありがとう。これ、凄い良い香りがするね。お茶?」
「うん、領地の特産品。一番良いやつなんだけど、まだ収穫量が少なくて売る程ないから、って言われて持たされた試供品」
 皆に同じ袋を配ってきた物だが、村では味見した程度だったし、フェスバルハ伯爵家でも、落ち着いて飲んだ訳では無い。
 二人でゆっくりとお菓子をつまみつつ、飲みたいと思っていた。
「もうひとつあるから、そっちを開けて一緒に飲もうかと思って。お湯も貰ってきたんだ」
 用意の良さにシェラも苦笑いするしかなかった。

 翌日、剣の訓練は次の段階を迎える。
 今まで素振り程度だったものが、対人の立ち合い稽古になった。
 とはいえ、この構えの場合にはどうしたら良いか、という座学の講習かと思うような内容で、訓練はまだまだ先が長いということを、皆が思い知らされた。
 この日の授業はこれで最後だったため、最後にようやく時間無制限で実戦形式での立ち合い稽古が許可された。

 立会いは指名が可能とされた。
 ラーソルバールの相手には、フォルテシアが名乗り出たが、かねてよりラーソルバールに対して不満を持っていたジェスター・バセットが半ば強引にその座を奪い取った。
「ようやくお前を叩きのめす機会がやってきたな。口だけの女だろうが、容赦せずに泥を舐めさせてやる!」
 ジェスターは挑発するように、ラーソルバールに剣を向けた。
 その横でフォルテシアが、呆れたように溜め息をつくのが聞こえた。
「愚か者め……」
 フォルテシアの呟きは、ジェスターには届かなかった。
「お前らも、この女と同じように、後で這い蹲らせてやる。誰が一番強いか教えてやる」
 自信満々に剣を振る姿に背を向け、フォルテシアはシェラと共に距離をとり、開始の合図を待った。
「準備は良いか?」
 教官の声が響く。
 皆が沈黙でそれに応える。
「始め!」
 合図の直後から、激しい金属音が聞こえ始めた。
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