64 / 439
第一部:第六章 後始末と始まり
(一)怒り②
しおりを挟む
最後に、シェラの部屋の扉をノックすると、眠そうな顔をした部屋の主が現れた。
「どうしたの」
「ちょっと今、うとうとしていただけ」
「ああ、ごめんね。また後にする」
扉を閉めようとするラーソルバールだったが、シェラに慌てて止められた。
「あ、いいよ。気にしないで」
「何だか申し訳ない。これ、お土産。昨日渡せば良かったんだけど、舞い上がっちゃってて」
前日は体調も良くなり、魔力循環も良くなったことで、調子に乗って部屋で魔法の練習にのめりこんでしまっていた。気がつけば、周囲が暗くなっており、夕食時間ギリギリに、慌てて食堂に駆け込んだのだった。
「ありがとう。これ、凄い良い香りがするね。お茶?」
「うん、領地の特産品。一番良いやつなんだけど、まだ収穫量が少なくて売る程ないから、って言われて持たされた試供品」
皆に同じ袋を配ってきた物だが、村では味見した程度だったし、フェスバルハ伯爵家でも、落ち着いて飲んだ訳では無い。
二人でゆっくりとお菓子をつまみつつ、飲みたいと思っていた。
「もうひとつあるから、そっちを開けて一緒に飲もうかと思って。お湯も貰ってきたんだ」
用意の良さにシェラも苦笑いするしかなかった。
翌日、剣の訓練は次の段階を迎える。
今まで素振り程度だったものが、対人の立ち合い稽古になった。
とはいえ、この構えの場合にはどうしたら良いか、という座学の講習かと思うような内容で、訓練はまだまだ先が長いということを、皆が思い知らされた。
この日の授業はこれで最後だったため、最後にようやく時間無制限で実戦形式での立ち合い稽古が許可された。
立会いは指名が可能とされた。
ラーソルバールの相手には、フォルテシアが名乗り出たが、かねてよりラーソルバールに対して不満を持っていたジェスター・バセットが半ば強引にその座を奪い取った。
「ようやくお前を叩きのめす機会がやってきたな。口だけの女だろうが、容赦せずに泥を舐めさせてやる!」
ジェスターは挑発するように、ラーソルバールに剣を向けた。
その横でフォルテシアが、呆れたように溜め息をつくのが聞こえた。
「愚か者め……」
フォルテシアの呟きは、ジェスターには届かなかった。
「お前らも、この女と同じように、後で這い蹲らせてやる。誰が一番強いか教えてやる」
自信満々に剣を振る姿に背を向け、フォルテシアはシェラと共に距離をとり、開始の合図を待った。
「準備は良いか?」
教官の声が響く。
皆が沈黙でそれに応える。
「始め!」
合図の直後から、激しい金属音が聞こえ始めた。
「どうしたの」
「ちょっと今、うとうとしていただけ」
「ああ、ごめんね。また後にする」
扉を閉めようとするラーソルバールだったが、シェラに慌てて止められた。
「あ、いいよ。気にしないで」
「何だか申し訳ない。これ、お土産。昨日渡せば良かったんだけど、舞い上がっちゃってて」
前日は体調も良くなり、魔力循環も良くなったことで、調子に乗って部屋で魔法の練習にのめりこんでしまっていた。気がつけば、周囲が暗くなっており、夕食時間ギリギリに、慌てて食堂に駆け込んだのだった。
「ありがとう。これ、凄い良い香りがするね。お茶?」
「うん、領地の特産品。一番良いやつなんだけど、まだ収穫量が少なくて売る程ないから、って言われて持たされた試供品」
皆に同じ袋を配ってきた物だが、村では味見した程度だったし、フェスバルハ伯爵家でも、落ち着いて飲んだ訳では無い。
二人でゆっくりとお菓子をつまみつつ、飲みたいと思っていた。
「もうひとつあるから、そっちを開けて一緒に飲もうかと思って。お湯も貰ってきたんだ」
用意の良さにシェラも苦笑いするしかなかった。
翌日、剣の訓練は次の段階を迎える。
今まで素振り程度だったものが、対人の立ち合い稽古になった。
とはいえ、この構えの場合にはどうしたら良いか、という座学の講習かと思うような内容で、訓練はまだまだ先が長いということを、皆が思い知らされた。
この日の授業はこれで最後だったため、最後にようやく時間無制限で実戦形式での立ち合い稽古が許可された。
立会いは指名が可能とされた。
ラーソルバールの相手には、フォルテシアが名乗り出たが、かねてよりラーソルバールに対して不満を持っていたジェスター・バセットが半ば強引にその座を奪い取った。
「ようやくお前を叩きのめす機会がやってきたな。口だけの女だろうが、容赦せずに泥を舐めさせてやる!」
ジェスターは挑発するように、ラーソルバールに剣を向けた。
その横でフォルテシアが、呆れたように溜め息をつくのが聞こえた。
「愚か者め……」
フォルテシアの呟きは、ジェスターには届かなかった。
「お前らも、この女と同じように、後で這い蹲らせてやる。誰が一番強いか教えてやる」
自信満々に剣を振る姿に背を向け、フォルテシアはシェラと共に距離をとり、開始の合図を待った。
「準備は良いか?」
教官の声が響く。
皆が沈黙でそれに応える。
「始め!」
合図の直後から、激しい金属音が聞こえ始めた。
0
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~
あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。
彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。
剣も魔法も得意ではない主人公は、
最強のメイドたちに守られながら生きている。
だが彼自身は、
「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。
自分にできることは何か。
この世界で、どう生きていくべきか。
最強の力を持つ者たちと、
何者でもない一人の青年。
その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。
本作は、
圧倒的な安心感のある日常パートと、
必要なときには本格的に描かれる戦い、
そして「守られる側の成長」を軸にした
完結済み長編ファンタジーです。
シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。
最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる