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第一部:第八章 心機一転
(四)デラネトゥス家にて③
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ほっとした所に突然現れたのが大臣だったので、ラーソルバールも笑顔のまま固まってしまった。
先程まで、大臣は反対側の壁近くにいたはずだった。
「これはこれは、ナスターク軍務大臣。お久しぶりでございます」
フェスバルハ伯爵の顔が一瞬こわばる。
「ああ、そんなに硬くならないでくれ、堅苦しいのは苦手なのだ。いつの間にか侯爵などに祭り上げられているが、もともとは私はただの武人だ」
入学式の折に見た、威厳のある堂々とした姿とは対照的な柔和さが、そこにあった。
「有難うございます。そう仰って頂けると助かります。こちらの娘ですが…」
「ラーソルバール・ミルエルシと申します。現在騎士学校に通っております」
差し出がましいと思いつつも、自ら名乗り、一礼する。
相手が軍務大臣であれば、貴族の令嬢である前に騎士学校の生徒である。凛とした態度を示すべきと考えたからだ。
「おお……」
そう言って、軍務大臣は言葉を止めた。そして一呼吸あけてから、首を傾げる。
「……私の記憶違いでなければ、騎士学校の入学式で宣誓を行ったのは、そなたであったように思うのだが?」
「……あい、間違いございません」
ラーソルバールの答えに、再び戸惑うような表情を見せる軍務大臣。
「すると、そなたがランドルフと剣を交えて一歩も引かなかったとか、オーガの娘と噂され、注目されておる生徒であったか」
「はぁ……。ランドルフ様とは剣を交えさせて頂きましたが、オーガの娘というのはよく分かりません。オーガ発見の報告をした件でついた名でしょうか……?」
一瞬、眉間にしわを寄せたが、失礼にあたるかと思い、慌てて笑顔に戻した。
「ふむ。そのような者が、このような美しい娘であったとは知らなんだ。入学式の折は、遠くて顔までは良く見えなかったものでな。すまぬな、以後、覚えておくとしよう」
「お目汚し、失礼致しました」
ラーソルバールは頭を下げ、フェスバルハ伯爵の後ろに退がった。
再び話し始めたフェスバルハ伯爵と、軍務大臣だったが、伯爵が長男と次男の紹介を終えると、軍務大臣はまたいずこかへ行ってしまった。
「堂々としたものだな」
「伯爵の言を遮って名乗るような無礼を働きまして、申し訳ありませんでした」
ラーソルバールは伯爵に謝罪した。
「いやいや、『騎士』として、その上司たる軍務大臣に挨拶をしたのだろう? いささかも問題ない。大臣もそこはご承知だと思う。それよりも……」
「それよりも、牙竜将と剣を交えたとか、聞いてないぞ」
グリュエルが食いついた。
武に関するものには、相変わらず興味があるようだった。大臣の手前、大人しくしていたが、遠慮をしなくても良くなったので、好奇の虫が騒ぎ出したようだ。
「あはは、いや、その……入学試験で……」
ぐいぐいと詰め寄るグリュエルに、腰が引けるラーソルバール。
横で笑うフェスバルハ伯爵に、父と同じような優しさを感じた。
先程まで、大臣は反対側の壁近くにいたはずだった。
「これはこれは、ナスターク軍務大臣。お久しぶりでございます」
フェスバルハ伯爵の顔が一瞬こわばる。
「ああ、そんなに硬くならないでくれ、堅苦しいのは苦手なのだ。いつの間にか侯爵などに祭り上げられているが、もともとは私はただの武人だ」
入学式の折に見た、威厳のある堂々とした姿とは対照的な柔和さが、そこにあった。
「有難うございます。そう仰って頂けると助かります。こちらの娘ですが…」
「ラーソルバール・ミルエルシと申します。現在騎士学校に通っております」
差し出がましいと思いつつも、自ら名乗り、一礼する。
相手が軍務大臣であれば、貴族の令嬢である前に騎士学校の生徒である。凛とした態度を示すべきと考えたからだ。
「おお……」
そう言って、軍務大臣は言葉を止めた。そして一呼吸あけてから、首を傾げる。
「……私の記憶違いでなければ、騎士学校の入学式で宣誓を行ったのは、そなたであったように思うのだが?」
「……あい、間違いございません」
ラーソルバールの答えに、再び戸惑うような表情を見せる軍務大臣。
「すると、そなたがランドルフと剣を交えて一歩も引かなかったとか、オーガの娘と噂され、注目されておる生徒であったか」
「はぁ……。ランドルフ様とは剣を交えさせて頂きましたが、オーガの娘というのはよく分かりません。オーガ発見の報告をした件でついた名でしょうか……?」
一瞬、眉間にしわを寄せたが、失礼にあたるかと思い、慌てて笑顔に戻した。
「ふむ。そのような者が、このような美しい娘であったとは知らなんだ。入学式の折は、遠くて顔までは良く見えなかったものでな。すまぬな、以後、覚えておくとしよう」
「お目汚し、失礼致しました」
ラーソルバールは頭を下げ、フェスバルハ伯爵の後ろに退がった。
再び話し始めたフェスバルハ伯爵と、軍務大臣だったが、伯爵が長男と次男の紹介を終えると、軍務大臣はまたいずこかへ行ってしまった。
「堂々としたものだな」
「伯爵の言を遮って名乗るような無礼を働きまして、申し訳ありませんでした」
ラーソルバールは伯爵に謝罪した。
「いやいや、『騎士』として、その上司たる軍務大臣に挨拶をしたのだろう? いささかも問題ない。大臣もそこはご承知だと思う。それよりも……」
「それよりも、牙竜将と剣を交えたとか、聞いてないぞ」
グリュエルが食いついた。
武に関するものには、相変わらず興味があるようだった。大臣の手前、大人しくしていたが、遠慮をしなくても良くなったので、好奇の虫が騒ぎ出したようだ。
「あはは、いや、その……入学試験で……」
ぐいぐいと詰め寄るグリュエルに、腰が引けるラーソルバール。
横で笑うフェスバルハ伯爵に、父と同じような優しさを感じた。
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