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第一部:第十章 エラゼルとラーソルバール(中編)
(四)雪辱への序曲③
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「始め!」
ガイザとミリエルの試合が開始された。
本来であれば見知った二人の試合をゆったりと観戦するはずだったラーソルバールだが、フォルテシアの脇で必死に彼女の名を呼んでいた。
ラーソルバールの呼び掛けにも、意識を失ったままのフォルテシアには届かない。
「ちょっと彼女から離れてて」
エナタルトが落ち着いた声でラーソルバールを下がらせた。
大会用に設置された臨時救護室では、エナタルトの診断のもと救護員が慌ただしく動き、フォルテシアの鎧を外すなどの対応に追われていた。
「腹部と腰部は重症ではないけど、頭は危険だから急いで!」
大会の運営上、怪我人が出ることも、その対応をすることも当たり前となってはいるが、エナタルトの声はやや危機感を煽るものだった。
鎧を外し終わると、救護による回復作業が始まる。
まずは頭部、次に腰部、腹部と回復魔法が施される。
ラーソルバールは見ている事しか出来ない歯痒さに、拳を握りしめた。
その頃、ガイザとミリエルは激しい戦闘を繰り広げていた。
ミリエルの攻撃を剣で捌き、危険な場面こそ無いものの、未だに懐に飛び込めずにいる。
それはミリエルが大振りを避け、堅実な試合運びをしているからでもある。大振りをすれば危険な相手だと分かっているからだ。
堅実な戦いだからこそ、ガイザはその攻撃を捌くことを苦にはしない。長期戦になる様相を見せていた。
ここでガイザが一計を案じる。
攻撃を加えてミリエルの動きを止めた後、大きく後ろにステップを踏んで後退し、魔法の詠唱を始めた。
「させない!」
ミリエルが詠唱を阻止しようと、即座に襲いかかる。
それを見た瞬間、ガイザは詠唱を止めると体勢を低くしてミリエルに突っ込んだ。
「フェイクか!」
想定外のガイザの動きに、ミリエルの反応が一瞬遅れた。
「あ!」
ガイザが狙った通りミリエルの斧は出が遅くなり、胴はガラ空きに。そこにはガイザの確かな一撃が加えられていた。
「やられた……」
まんまと罠にはめられたミリエルは、悔しそうに天を仰いだ。
「ふぅ……」
ガイザは大きく息を吐いて、体の力を抜く。同時に、自分がそれだけ気が張っていたという事を自覚した。
「お見事です。まんまと騙されました」
ミリエルが伸ばした手を握り返すと、ガイザは黒髪が乱れるように頭をかいて苦笑した。
「ギリギリの賭けでした。また、お手合わせお願いします」
照れ臭そうに言葉を返すと、軽く頭を下げると、ミリエルは「よろしくね」と笑顔で応じた。
試合の勝者が決した頃、フォルテシアの処置もようやく終了した。
「これで大丈夫よ、ラーソルバールちゃん……でしたっけ?」
エナタルトが半泣きになっていたラーソルバールの肩に手を乗せた。
「ただ、頭部を強打してたから念のため数日間は安静に」
意識はまだ戻らないが、呼吸は安定している。
きっと大丈夫だ。ラーソルバールは自分に言い聞かせる。
「はい……、フォルテシアにも……良く……言っておきます」
涙声で答えた。
ガイザとミリエルの試合が開始された。
本来であれば見知った二人の試合をゆったりと観戦するはずだったラーソルバールだが、フォルテシアの脇で必死に彼女の名を呼んでいた。
ラーソルバールの呼び掛けにも、意識を失ったままのフォルテシアには届かない。
「ちょっと彼女から離れてて」
エナタルトが落ち着いた声でラーソルバールを下がらせた。
大会用に設置された臨時救護室では、エナタルトの診断のもと救護員が慌ただしく動き、フォルテシアの鎧を外すなどの対応に追われていた。
「腹部と腰部は重症ではないけど、頭は危険だから急いで!」
大会の運営上、怪我人が出ることも、その対応をすることも当たり前となってはいるが、エナタルトの声はやや危機感を煽るものだった。
鎧を外し終わると、救護による回復作業が始まる。
まずは頭部、次に腰部、腹部と回復魔法が施される。
ラーソルバールは見ている事しか出来ない歯痒さに、拳を握りしめた。
その頃、ガイザとミリエルは激しい戦闘を繰り広げていた。
ミリエルの攻撃を剣で捌き、危険な場面こそ無いものの、未だに懐に飛び込めずにいる。
それはミリエルが大振りを避け、堅実な試合運びをしているからでもある。大振りをすれば危険な相手だと分かっているからだ。
堅実な戦いだからこそ、ガイザはその攻撃を捌くことを苦にはしない。長期戦になる様相を見せていた。
ここでガイザが一計を案じる。
攻撃を加えてミリエルの動きを止めた後、大きく後ろにステップを踏んで後退し、魔法の詠唱を始めた。
「させない!」
ミリエルが詠唱を阻止しようと、即座に襲いかかる。
それを見た瞬間、ガイザは詠唱を止めると体勢を低くしてミリエルに突っ込んだ。
「フェイクか!」
想定外のガイザの動きに、ミリエルの反応が一瞬遅れた。
「あ!」
ガイザが狙った通りミリエルの斧は出が遅くなり、胴はガラ空きに。そこにはガイザの確かな一撃が加えられていた。
「やられた……」
まんまと罠にはめられたミリエルは、悔しそうに天を仰いだ。
「ふぅ……」
ガイザは大きく息を吐いて、体の力を抜く。同時に、自分がそれだけ気が張っていたという事を自覚した。
「お見事です。まんまと騙されました」
ミリエルが伸ばした手を握り返すと、ガイザは黒髪が乱れるように頭をかいて苦笑した。
「ギリギリの賭けでした。また、お手合わせお願いします」
照れ臭そうに言葉を返すと、軽く頭を下げると、ミリエルは「よろしくね」と笑顔で応じた。
試合の勝者が決した頃、フォルテシアの処置もようやく終了した。
「これで大丈夫よ、ラーソルバールちゃん……でしたっけ?」
エナタルトが半泣きになっていたラーソルバールの肩に手を乗せた。
「ただ、頭部を強打してたから念のため数日間は安静に」
意識はまだ戻らないが、呼吸は安定している。
きっと大丈夫だ。ラーソルバールは自分に言い聞かせる。
「はい……、フォルテシアにも……良く……言っておきます」
涙声で答えた。
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