128 / 439
第一部:第十一章 エラゼルとラーソルバール(後編)
(二)ふたりの想い②
しおりを挟む
三人が軽食を食べ終わる頃、周囲にも人が戻り始めていた。
二人の決勝戦は、もう少し後、二年生の準決勝が終わってからの予定となっている。
アルディスと、エフィアナの事が気になっているので、隣の会場に行って観戦しても良いのだが、人ごみで戻ってくるのも大変そうなので、動く気になれない。
一年生の決勝戦後に、二年生の決勝戦が行われる事になっているので、結果はその時になれば分かるだろうと思っている。
食堂から戻ってきた生徒に混じっていたシェラが、フォルテシアを見つけ、凄い勢いで駆け寄ってきた。
「フォルテシア、大丈夫だった?」
シェラも試合後に担架で運ばれるフォルテシアを見て、臨時救護室まで行こうとしたそうなのだが、人ごみが邪魔で動けなかったらしい。
慌てて駆け寄るラーソルバールの姿を観覧席から見て、任せようと思ったとシェラは語った。
そこまで話したところで、すぐ近くに座っているエラゼルに気付き、シェラは軽く頭を下げる。
そして、フォルテシアの腕を軽く掴んだ。
「フォルテシア、戻るよ」
「あ、フォルテシアは安静にって言われてるから、無理させないでね」
ラーソルバールは、フォルテシアを連れて行こうとするシェラに呼びかける。
シェラはそれに頷くと、ふと何かを思い出したように止まった。
「あ、そうそう、アルディスさんもエフィアナさんも勝ち残ってるみたいだよ。えーとあと、マデ……なんとかさん、もうアルディスさんに負けちゃったみたいだよ」
シェラの言葉を聞いて、ラーソルバールは安心したように笑顔を見せた。
「また、あとでね」
シェラは手を振ると、フォルテシアと共に人ごみに消えていった。
「……思い出した。報告がある」
シェラ達が居なくなって間もなく、二人になった気まずさもあるのだろうか、エラゼルが沈黙を破った。
「昨日、家の者に聞いたのだが、姉上を暗殺するよう指示した者が、捕縛されたのだそうだ。」
誕生会の一件に関する話だった。イリアナの顔が頭に浮かんだ。
「良かったね、これでちょっとは安心できるね」
「うむ、一応な。これがどうも身勝手な恨みが原因らしくてな。相手はどこかの貴族の御曹司で、何処かの社交界で、姉上に一目惚れしたらしい。だが、見向きもされずに軽くあしらわれたと感じたので、殺そうと思ったというのだ」
迷惑な話だ。とはいえ、犯人捜しは、どうやってその相手に辿り着いたのだろうか。
「姉上の所に送られてきた先方からの手紙が、何通か未開封で残っていてな。中に脅迫めいたものが有ったらしい」
疑問に思ったところで、丁度エラゼルの口から聞くことができた。
「で、調べてみたら…ということか……」
「そういうことだ。でな、悪い話も有って、例の暗殺者どもの行方は掴めておらぬそうだ。捕まえた連中も口が固くてな」
「まあ、狙われるときは二人一緒だよ」
ラーソルバールは意地悪く笑って見せる。
「致し方ない」
エラゼルは大きく溜め息をついた。
直後に隣の会場で大歓声が上がる。勝負がついたのだろうか。
「気になるのか?」
「まあね、兄と姉みたいな幼馴染二人が勝ち残っているらしいから」
それを聞いてエラゼルは、ふんと鼻を鳴らした。
このエラゼルの反応は何を意味するのか、良く分からない。ただ、ラーソルバールに向けられる態度には、以前のような刺々しさは無い事は分かる。
それはエラゼルはが変わったからなのか、自身が変わったからなのか、ラーソルバールには分からない。
そんな事を考えながら エラゼルを見つめる。
「さて、馴れ合いもここまでだ」
言葉と共に、エラゼルの顔から穏やかさが消えた。
二人の決勝戦は、もう少し後、二年生の準決勝が終わってからの予定となっている。
アルディスと、エフィアナの事が気になっているので、隣の会場に行って観戦しても良いのだが、人ごみで戻ってくるのも大変そうなので、動く気になれない。
一年生の決勝戦後に、二年生の決勝戦が行われる事になっているので、結果はその時になれば分かるだろうと思っている。
食堂から戻ってきた生徒に混じっていたシェラが、フォルテシアを見つけ、凄い勢いで駆け寄ってきた。
「フォルテシア、大丈夫だった?」
シェラも試合後に担架で運ばれるフォルテシアを見て、臨時救護室まで行こうとしたそうなのだが、人ごみが邪魔で動けなかったらしい。
慌てて駆け寄るラーソルバールの姿を観覧席から見て、任せようと思ったとシェラは語った。
そこまで話したところで、すぐ近くに座っているエラゼルに気付き、シェラは軽く頭を下げる。
そして、フォルテシアの腕を軽く掴んだ。
「フォルテシア、戻るよ」
「あ、フォルテシアは安静にって言われてるから、無理させないでね」
ラーソルバールは、フォルテシアを連れて行こうとするシェラに呼びかける。
シェラはそれに頷くと、ふと何かを思い出したように止まった。
「あ、そうそう、アルディスさんもエフィアナさんも勝ち残ってるみたいだよ。えーとあと、マデ……なんとかさん、もうアルディスさんに負けちゃったみたいだよ」
シェラの言葉を聞いて、ラーソルバールは安心したように笑顔を見せた。
「また、あとでね」
シェラは手を振ると、フォルテシアと共に人ごみに消えていった。
「……思い出した。報告がある」
シェラ達が居なくなって間もなく、二人になった気まずさもあるのだろうか、エラゼルが沈黙を破った。
「昨日、家の者に聞いたのだが、姉上を暗殺するよう指示した者が、捕縛されたのだそうだ。」
誕生会の一件に関する話だった。イリアナの顔が頭に浮かんだ。
「良かったね、これでちょっとは安心できるね」
「うむ、一応な。これがどうも身勝手な恨みが原因らしくてな。相手はどこかの貴族の御曹司で、何処かの社交界で、姉上に一目惚れしたらしい。だが、見向きもされずに軽くあしらわれたと感じたので、殺そうと思ったというのだ」
迷惑な話だ。とはいえ、犯人捜しは、どうやってその相手に辿り着いたのだろうか。
「姉上の所に送られてきた先方からの手紙が、何通か未開封で残っていてな。中に脅迫めいたものが有ったらしい」
疑問に思ったところで、丁度エラゼルの口から聞くことができた。
「で、調べてみたら…ということか……」
「そういうことだ。でな、悪い話も有って、例の暗殺者どもの行方は掴めておらぬそうだ。捕まえた連中も口が固くてな」
「まあ、狙われるときは二人一緒だよ」
ラーソルバールは意地悪く笑って見せる。
「致し方ない」
エラゼルは大きく溜め息をついた。
直後に隣の会場で大歓声が上がる。勝負がついたのだろうか。
「気になるのか?」
「まあね、兄と姉みたいな幼馴染二人が勝ち残っているらしいから」
それを聞いてエラゼルは、ふんと鼻を鳴らした。
このエラゼルの反応は何を意味するのか、良く分からない。ただ、ラーソルバールに向けられる態度には、以前のような刺々しさは無い事は分かる。
それはエラゼルはが変わったからなのか、自身が変わったからなのか、ラーソルバールには分からない。
そんな事を考えながら エラゼルを見つめる。
「さて、馴れ合いもここまでだ」
言葉と共に、エラゼルの顔から穏やかさが消えた。
0
あなたにおすすめの小説
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる