聖と魔の名を持つ者 ~その娘、聖女か魔女か。剣を手にした令嬢は、やがて国家最強の守護者となる~

草沢一臨

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第一部:第十一章 エラゼルとラーソルバール(後編)

(二)ふたりの想い②

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 三人が軽食を食べ終わる頃、周囲にも人が戻り始めていた。
 二人の決勝戦は、もう少し後、二年生の準決勝が終わってからの予定となっている。
 アルディスと、エフィアナの事が気になっているので、隣の会場に行って観戦しても良いのだが、人ごみで戻ってくるのも大変そうなので、動く気になれない。
 一年生の決勝戦後に、二年生の決勝戦が行われる事になっているので、結果はその時になれば分かるだろうと思っている。

 食堂から戻ってきた生徒に混じっていたシェラが、フォルテシアを見つけ、凄い勢いで駆け寄ってきた。
「フォルテシア、大丈夫だった?」
 シェラも試合後に担架で運ばれるフォルテシアを見て、臨時救護室まで行こうとしたそうなのだが、人ごみが邪魔で動けなかったらしい。
 慌てて駆け寄るラーソルバールの姿を観覧席から見て、任せようと思ったとシェラは語った。
 そこまで話したところで、すぐ近くに座っているエラゼルに気付き、シェラは軽く頭を下げる。
 そして、フォルテシアの腕を軽く掴んだ。
「フォルテシア、戻るよ」
「あ、フォルテシアは安静にって言われてるから、無理させないでね」
 ラーソルバールは、フォルテシアを連れて行こうとするシェラに呼びかける。
 シェラはそれに頷くと、ふと何かを思い出したように止まった。
「あ、そうそう、アルディスさんもエフィアナさんも勝ち残ってるみたいだよ。えーとあと、マデ……なんとかさん、もうアルディスさんに負けちゃったみたいだよ」
 シェラの言葉を聞いて、ラーソルバールは安心したように笑顔を見せた。
「また、あとでね」
 シェラは手を振ると、フォルテシアと共に人ごみに消えていった。

「……思い出した。報告がある」
 シェラ達が居なくなって間もなく、二人になった気まずさもあるのだろうか、エラゼルが沈黙を破った。
「昨日、家の者に聞いたのだが、姉上を暗殺するよう指示した者が、捕縛されたのだそうだ。」
 誕生会の一件に関する話だった。イリアナの顔が頭に浮かんだ。
「良かったね、これでちょっとは安心できるね」
「うむ、一応な。これがどうも身勝手な恨みが原因らしくてな。相手はどこかの貴族の御曹司で、何処かの社交界で、姉上に一目惚れしたらしい。だが、見向きもされずに軽くあしらわれたと感じたので、殺そうと思ったというのだ」
 迷惑な話だ。とはいえ、犯人捜しは、どうやってその相手に辿り着いたのだろうか。
「姉上の所に送られてきた先方からの手紙が、何通か未開封で残っていてな。中に脅迫めいたものが有ったらしい」
 疑問に思ったところで、丁度エラゼルの口から聞くことができた。
「で、調べてみたら…ということか……」
「そういうことだ。でな、悪い話も有って、例の暗殺者どもの行方は掴めておらぬそうだ。捕まえた連中も口が固くてな」
「まあ、狙われるときは二人一緒だよ」
 ラーソルバールは意地悪く笑って見せる。
「致し方ない」
 エラゼルは大きく溜め息をついた。
 直後に隣の会場で大歓声が上がる。勝負がついたのだろうか。
「気になるのか?」
「まあね、兄と姉みたいな幼馴染二人が勝ち残っているらしいから」
 それを聞いてエラゼルは、ふんと鼻を鳴らした。
 このエラゼルの反応は何を意味するのか、良く分からない。ただ、ラーソルバールに向けられる態度には、以前のような刺々しさは無い事は分かる。
 それはエラゼルはが変わったからなのか、自身が変わったからなのか、ラーソルバールには分からない。
 そんな事を考えながら エラゼルを見つめる。
「さて、馴れ合いもここまでだ」
 言葉と共に、エラゼルの顔から穏やかさが消えた。
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