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第一部:第十一章 エラゼルとラーソルバール(後編)
(二)ふたりの想い③
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エラゼルの瞳は試合場を超えて、空を見つめる。
この日を待ちわびて、どれだけ剣を振ったか。これから戦うのは自らの前にある壁。
(ようやく……)
何年も追ってきた相手との対戦を前に、想いを込めて拳を握る。
今、横を見ては駄目だ。
きっとそこには、まだ穏やかな顔をした宿敵が居るはずだ。見てしまえば決意が鈍る。
姉のために戦ってくれた恩人でもあり、数少ない対等に話せる相手でもある。
迷うな。自分がここまでやってきたことを、いま証明する。自身に言い聞かせた。
「決勝戦を始める。両名、場内へ」
いつの間にか、隣の会場の準決勝は終わったのだろうか、人がこちらの会場に戻ってきている。
審判員の呼びかけに応じ、エラゼルとラーソルバールは立ち上がり、歩き出す。
互いに顔を見合わせる事無く、試合場へと上がる。
周囲の歓声が二人を包む。盛んに名前を呼ばれるが、声が混じりあい、誰のものなのか分からない。
あまり注目される事を好まないラーソルバールと、周囲の視線があっても堂々としているエラゼル。
その様子は、歩みだけでも何となく分かるものかもしれない。
二人が試合場の中央に立ち、向かい合うと大きな拍手がそれを迎えた。
「制限時間は無い。両者、用意はいいか?」
審判員の問いに対し、二人は剣を構えて頷いた。
無駄な言葉はいらない。それは二人共良く分かっている。
一瞬、エラゼルがニヤリと笑った。
「始め!」
二人が表情を引き締めた時、審判員が試合開始を告げる。
だが開始後に二人共そのまま動こうともせず、魔法を使おうともしない。開始直後にどちらかが動くと思っていた観衆は、驚いた。
ラーソルバールは、エラゼルの力がどの程度のものか測りかねているので、様子を見ようと思っていた。逆に、エラゼルはラーソルバールを誰よりも評価しているので、安易に動こうとしなかった。
どちらも相手が先手を打ってくると思っていたため、動かなかったのだが、結果的にそのまま睨み合いの状態になってしまっていた。
「魔法ぐらい余裕で使えるくらいの時間を無駄にしてるよ」
ラーソルバールが苦笑いする。
「なら、自分で使えば良いだろう」
その言葉に応じ、エラゼルが挑発するように笑う。
エラゼル自身動きたくてうずうずしていた。自然と笑みがこぼれてくる。
待ちに待ったこの機会を、倒すべき相手を前にしたこの瞬間を、自分が楽しんでいる事を自覚した。
「ラーソルバール・ミルエルシ! さあ、正々堂々勝負だ!」
先に動いたのはエラゼルだった。大きく地面を蹴ると、弾ける様にラーソルバールへと向かった。
慌てずに、ラーソルバールは軽く構えると、エラゼルの動きを目で追う。
エラゼルは直進すると見せかけて、ラーソルバールの直前で横にステップを踏んで方向を変えた。直後に折り返すような形で差を詰めると、低い体勢から水平に薙ぎ払うように剣を出す。
ラーソルバールはその剣を受け止めると、上へと弾き上げる。
そのままエラゼルの横に回りこみ、やり返すように横薙ぎの攻撃をする。
「小賢しい!」
そう叫びながら、反対へと跳んでそれを避けた。
僅かにできた二人の距離も、ラーソルバールが追いかけるように詰め、再度素早い切り返しの攻撃を入れる。
それを、エラゼルが辛うじて剣で受け止めると、観衆から大歓声が巻き起こった。
この日を待ちわびて、どれだけ剣を振ったか。これから戦うのは自らの前にある壁。
(ようやく……)
何年も追ってきた相手との対戦を前に、想いを込めて拳を握る。
今、横を見ては駄目だ。
きっとそこには、まだ穏やかな顔をした宿敵が居るはずだ。見てしまえば決意が鈍る。
姉のために戦ってくれた恩人でもあり、数少ない対等に話せる相手でもある。
迷うな。自分がここまでやってきたことを、いま証明する。自身に言い聞かせた。
「決勝戦を始める。両名、場内へ」
いつの間にか、隣の会場の準決勝は終わったのだろうか、人がこちらの会場に戻ってきている。
審判員の呼びかけに応じ、エラゼルとラーソルバールは立ち上がり、歩き出す。
互いに顔を見合わせる事無く、試合場へと上がる。
周囲の歓声が二人を包む。盛んに名前を呼ばれるが、声が混じりあい、誰のものなのか分からない。
あまり注目される事を好まないラーソルバールと、周囲の視線があっても堂々としているエラゼル。
その様子は、歩みだけでも何となく分かるものかもしれない。
二人が試合場の中央に立ち、向かい合うと大きな拍手がそれを迎えた。
「制限時間は無い。両者、用意はいいか?」
審判員の問いに対し、二人は剣を構えて頷いた。
無駄な言葉はいらない。それは二人共良く分かっている。
一瞬、エラゼルがニヤリと笑った。
「始め!」
二人が表情を引き締めた時、審判員が試合開始を告げる。
だが開始後に二人共そのまま動こうともせず、魔法を使おうともしない。開始直後にどちらかが動くと思っていた観衆は、驚いた。
ラーソルバールは、エラゼルの力がどの程度のものか測りかねているので、様子を見ようと思っていた。逆に、エラゼルはラーソルバールを誰よりも評価しているので、安易に動こうとしなかった。
どちらも相手が先手を打ってくると思っていたため、動かなかったのだが、結果的にそのまま睨み合いの状態になってしまっていた。
「魔法ぐらい余裕で使えるくらいの時間を無駄にしてるよ」
ラーソルバールが苦笑いする。
「なら、自分で使えば良いだろう」
その言葉に応じ、エラゼルが挑発するように笑う。
エラゼル自身動きたくてうずうずしていた。自然と笑みがこぼれてくる。
待ちに待ったこの機会を、倒すべき相手を前にしたこの瞬間を、自分が楽しんでいる事を自覚した。
「ラーソルバール・ミルエルシ! さあ、正々堂々勝負だ!」
先に動いたのはエラゼルだった。大きく地面を蹴ると、弾ける様にラーソルバールへと向かった。
慌てずに、ラーソルバールは軽く構えると、エラゼルの動きを目で追う。
エラゼルは直進すると見せかけて、ラーソルバールの直前で横にステップを踏んで方向を変えた。直後に折り返すような形で差を詰めると、低い体勢から水平に薙ぎ払うように剣を出す。
ラーソルバールはその剣を受け止めると、上へと弾き上げる。
そのままエラゼルの横に回りこみ、やり返すように横薙ぎの攻撃をする。
「小賢しい!」
そう叫びながら、反対へと跳んでそれを避けた。
僅かにできた二人の距離も、ラーソルバールが追いかけるように詰め、再度素早い切り返しの攻撃を入れる。
それを、エラゼルが辛うじて剣で受け止めると、観衆から大歓声が巻き起こった。
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