153 / 439
第一部:第十三章 思惑
(二)父親の存在③
しおりを挟む
「そういえば、ガイザは誰かと一緒じゃないの?」
ラーソルバールは疑問に思った事を口にした。
「ああ、クラスの奴も何人か来ているんだが、日頃顔を合わせている連中と一緒に居ても、変化が無くてつまらないしな。勿論、フォッチョなんかは御免だ」
「素直にラーソルと一緒に居たいって言えばいいのに……」
わざわざ聞こえるように言って、ガイザをからかうシェラ。
「いや、そうじゃ……」
「何、そうなのか? 彼は婚約者だったのか?」
ガイザが否定しようとしたところを遮り、エラゼルが食いついた。
「エラゼル、ガイザは婚約者じゃないから。っていうか、私は婚約者いないから!」
必死に否定するラーソルバール。
その脇で、してやったりと笑うシェラ。小さな復讐を果たし満足した様子だった。
「あまり大きな声でそういう事を言うもんじゃない。誰に目をつけられるか分からんだろう?」
突然、背後から話しかけられた。
「!」
その声で、ラーソルバールは驚きの余り、飛び上がりそうになった。
「おや、また友人かい?」
父が振り返る。
ラーソルバールは、思い切り首を横に振って全力で否定する。
穏やかな表情の父とは裏腹に、冷や汗が出て止まらない娘。
「…?」
何やら状況が理解できず、父は首を傾げる。
「おや、殿下」
「やあ、エラゼル」
声をかけてきたのはウォルスター王子だった。
(どうしてこの人は、こういう現れ方をするんだろう……)
ラーソルバールは半ば呆れ気味に王子を見る。
「殿下……? …………殿下ぁ?」
父とともに、ガイザとシェラが驚いた。
「ウォルスター殿下は何故こちらに?」
父に教えるようにわざわざ名前を呼ぶ。
「ああ、この会場で純白のドレスってのは目立つものでね。純白のエラゼルが見えたから、隣の赤はラーソルバール嬢だと思ってね。二人に挨拶をしに来た」
「わざわざ有難うございます」
恭しく礼をするものの、動揺は治まらない。
状況が理解できなかった三人も、慌てて頭を下げる。
「今日は二人がどんな楽しいものを見せてくれるかと、期待していたのだが」
様子を見るに、退屈だったのだろう。
貴族のおべっかに飽きたから来た、というところかもしれない。
「このような会で、何をお見せするものがありましょうや」
エラゼルが冷静に応対する。さすがに旧知の仲と言うだけの事はある。
「無いのか? そういえば、先日騎士学校で楽しい催しが有ったと、ナスターク侯から聞いたのだが」
「いえ、それはただの武芸の大会に過ぎません」
「そうなのか。まあ、それはそれで見たかったな。来年は私も出席してみるか」
「きっと殿下は退屈されますよ」
面倒な事にならないようにする、エラゼルなりの牽制だろうか。
それを察したラーソルバールも横で頷く。
「それは置くとして、二人の距離感が何か以前と違う気がしているのだが」
さすがに王子の手前、エラゼルの腕を掴んではいないのだが、王子には何か感じるところが有ったのだろうか。
「気のせいにございます」
あっさりと言ってのけるエラゼルだが、ちらりとラーソルバールを見て目で合図を送る。
「そうか? まあ良い。では、しばらくここに居ようか、兄上の隣は窮屈でたまらん」
さらりと本音が出る。
(さっさと何処かへ行ってください!)
言いたい事は、喉まで出掛かっていたが、さすがに王子相手に言える台詞ではない。
「それで…、貴殿がラーソルバール嬢の?」
「は、はい、父にございます。クレスト・ミルエルシと申します」
父は深々と頭を下げた。
「クレスト………はて、聞き覚えが……」
何かを思い出そうと王子は考え込む。
「……おお、『双剣の鷲』か! 幼い頃、騎士団に行った際に会った事が有ったな」
思い出してすっきりしたのか、王子は笑顔を見せた。
「はい、私めの事などを覚えていて頂き、誠に恐縮です。殿下があまりにもご立派になられて、恥ずかしながら娘に言われるまでどなたか分かりませんでした」
「構わんよ、子供の頃の姿から想像できるような姿では困るからな。……そうか、ラーソルバール嬢は『双剣の鷲』の娘であったか。これは今日一番の収穫だ。兄上にも教えてやらねば」
「私はもう剣は持てぬ身。何も面白い事はありませんでしょう?」
何やら嬉しそうな王子に対し、父は少々困惑したような表情を見せる。
「いや、勇名を馳せた『双剣の鷲』は、幼い頃の兄上の憧れだったのだよ。その影響で、兄上は双剣使いになったのだから」
「!」
意外な事実を聞かされ、ラーソルバールも父と一緒に驚いた。
「ああ、そう言えば、王太子殿下は双剣でしたね」
思い出したようにエラゼルが手を鳴らした。
ラーソルバールは疑問に思った事を口にした。
「ああ、クラスの奴も何人か来ているんだが、日頃顔を合わせている連中と一緒に居ても、変化が無くてつまらないしな。勿論、フォッチョなんかは御免だ」
「素直にラーソルと一緒に居たいって言えばいいのに……」
わざわざ聞こえるように言って、ガイザをからかうシェラ。
「いや、そうじゃ……」
「何、そうなのか? 彼は婚約者だったのか?」
ガイザが否定しようとしたところを遮り、エラゼルが食いついた。
「エラゼル、ガイザは婚約者じゃないから。っていうか、私は婚約者いないから!」
必死に否定するラーソルバール。
その脇で、してやったりと笑うシェラ。小さな復讐を果たし満足した様子だった。
「あまり大きな声でそういう事を言うもんじゃない。誰に目をつけられるか分からんだろう?」
突然、背後から話しかけられた。
「!」
その声で、ラーソルバールは驚きの余り、飛び上がりそうになった。
「おや、また友人かい?」
父が振り返る。
ラーソルバールは、思い切り首を横に振って全力で否定する。
穏やかな表情の父とは裏腹に、冷や汗が出て止まらない娘。
「…?」
何やら状況が理解できず、父は首を傾げる。
「おや、殿下」
「やあ、エラゼル」
声をかけてきたのはウォルスター王子だった。
(どうしてこの人は、こういう現れ方をするんだろう……)
ラーソルバールは半ば呆れ気味に王子を見る。
「殿下……? …………殿下ぁ?」
父とともに、ガイザとシェラが驚いた。
「ウォルスター殿下は何故こちらに?」
父に教えるようにわざわざ名前を呼ぶ。
「ああ、この会場で純白のドレスってのは目立つものでね。純白のエラゼルが見えたから、隣の赤はラーソルバール嬢だと思ってね。二人に挨拶をしに来た」
「わざわざ有難うございます」
恭しく礼をするものの、動揺は治まらない。
状況が理解できなかった三人も、慌てて頭を下げる。
「今日は二人がどんな楽しいものを見せてくれるかと、期待していたのだが」
様子を見るに、退屈だったのだろう。
貴族のおべっかに飽きたから来た、というところかもしれない。
「このような会で、何をお見せするものがありましょうや」
エラゼルが冷静に応対する。さすがに旧知の仲と言うだけの事はある。
「無いのか? そういえば、先日騎士学校で楽しい催しが有ったと、ナスターク侯から聞いたのだが」
「いえ、それはただの武芸の大会に過ぎません」
「そうなのか。まあ、それはそれで見たかったな。来年は私も出席してみるか」
「きっと殿下は退屈されますよ」
面倒な事にならないようにする、エラゼルなりの牽制だろうか。
それを察したラーソルバールも横で頷く。
「それは置くとして、二人の距離感が何か以前と違う気がしているのだが」
さすがに王子の手前、エラゼルの腕を掴んではいないのだが、王子には何か感じるところが有ったのだろうか。
「気のせいにございます」
あっさりと言ってのけるエラゼルだが、ちらりとラーソルバールを見て目で合図を送る。
「そうか? まあ良い。では、しばらくここに居ようか、兄上の隣は窮屈でたまらん」
さらりと本音が出る。
(さっさと何処かへ行ってください!)
言いたい事は、喉まで出掛かっていたが、さすがに王子相手に言える台詞ではない。
「それで…、貴殿がラーソルバール嬢の?」
「は、はい、父にございます。クレスト・ミルエルシと申します」
父は深々と頭を下げた。
「クレスト………はて、聞き覚えが……」
何かを思い出そうと王子は考え込む。
「……おお、『双剣の鷲』か! 幼い頃、騎士団に行った際に会った事が有ったな」
思い出してすっきりしたのか、王子は笑顔を見せた。
「はい、私めの事などを覚えていて頂き、誠に恐縮です。殿下があまりにもご立派になられて、恥ずかしながら娘に言われるまでどなたか分かりませんでした」
「構わんよ、子供の頃の姿から想像できるような姿では困るからな。……そうか、ラーソルバール嬢は『双剣の鷲』の娘であったか。これは今日一番の収穫だ。兄上にも教えてやらねば」
「私はもう剣は持てぬ身。何も面白い事はありませんでしょう?」
何やら嬉しそうな王子に対し、父は少々困惑したような表情を見せる。
「いや、勇名を馳せた『双剣の鷲』は、幼い頃の兄上の憧れだったのだよ。その影響で、兄上は双剣使いになったのだから」
「!」
意外な事実を聞かされ、ラーソルバールも父と一緒に驚いた。
「ああ、そう言えば、王太子殿下は双剣でしたね」
思い出したようにエラゼルが手を鳴らした。
0
あなたにおすすめの小説
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について
水定ゆう
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】
千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。
月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。
気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。
代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。
けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい……
最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。
※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
悪役令嬢ではありません。肩書きはただの村人ですが、いつの日か名だたる冒険者になっていた。
小田
ファンタジー
ポッチ村に住む少女ルリは特別な力があったのだが、六歳を迎えたとき母親が娘の力を封印する。村長はルリの母の遺言どおり、娘を大切に育てた。十四歳を迎えたルリはいつものように山に薬草を採りに行くと、倒れていた騎士を発見したので、家に運んで介抱すると。騎士ではなく実は三代公爵家の長男であった。そこから彼女の人生は大きく動き出す。
特別な力を持つ村人の少女ルリが学園に行ったり、冒険をして仲間と共に成長していく物語です。
なろう、エブリスタ、カクヨム掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる