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第一部:第十六章 動乱
(三)戦いの中で③
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「アル兄は…アル兄は間違ってるっ!」
ラーソルバールは叫びながら剣を弾き返した。
兵士の手に痺れが残る。
「これは友達を、学友を犠牲にしてまでやる事なのか!」
刹那、ラーソルバールの剣が速度を上げた。
その剣は即座に眼前の相手三人を、防戦一方に追い込んだ。
「速い!」
兵士の一人が驚愕した。
優雅に踊るように見えながらも、目に見えぬ程の恐るべき速度で剣が繰り出される。
怒気を孕んだその剣は、兵士を恐怖させた。
次の瞬間には、ラーソルバールの剣を受けた別の兵士が弾き飛ばされ、後ろ数人を巻き込んだ。
それを見て怯んだ瞬間、もうひとりの兵士も吹き飛ばされた。
あとは目の前に居る一人。アルディスと思しき兵士。
それでも、ラーソルバールの剣は止まらなかった。
叩きつけるような怒りの剣が繰り出され、止めようとする剣をことごとく弾き返す。
あまりの事に誰も近づけず、鎧の男はただ後退させられた。
ラーソルバールが放った八度目の攻撃が剣を弾き飛ばし、九度目の攻撃で男は弾き飛ばされた。
「フーッ……、フーッ……」
肩で大きく息をしながらも、誰一人近寄らせないほどの威圧感で兵士達を睨み付ける。その頬に涙が伝う。
ラーソルバールがゆっくりと歩くと、兵士達は恐怖に後ずさりし、そこに道が開く。
「あれは…悪魔か?」
兵士の誰かが声を震わせて呟いた。
弾き飛ばされた男も、落ちていた剣を杖に立ち上がるが、構える事ができないでいる。
「アレは確かに怖いだろうね……。私でさえ背筋がゾクゾクするよ。だが…、あれは体内魔力の制御って言うよりは暴走に近いね…」
自分の事を棚に上げて言い放つジャハネート。
最早、ジャハネートの前にも兵士は寄ってこない。
自然に開いていく道を通ると、戦っていた学生達とも合流でき、ようやく宰相の安全が確保された。
「撤退せよ!」
隊長と思しき男が叫ぶ、目的の達成が不可能だと悟ったのか、その声は震えていた。
命令と共に、逃げるように引き揚げて行く兵士。
「逃げるなぁ!」
叫ぶラーソルバールの視界に入ったのは、肩を担がれ去っていく男と、担いでいく女性兵士。
その兜の隙間から覗く、赤みがかった茶髪。
「……エフィ……姉……?」
ラーソルバールは衝撃に言葉を失い、膝を落とす。
(なんで、エフィ姉まで……)
そのまま力無く座り込み、嗚咽した。
泣き続けるラーソルバールに気付き、エラゼルは兵士を追うのを止め、友のもとにやって来た。
ラーソルバールはその気配に気付き、顔を上げて友の顔を見ると、再び視線を落とした。
「エラゼル……私ね、戦っている時にやっと思い出した……」
「何を…だ?」
「…悪夢」
小さく呟くように答える。
その声は震えていた。
「いつぞやに眠れぬと言っていた、あれか…」
エラゼルは横に座ると、ラーソルバールの肩を抱き寄せた。
「……これだった。信じていた人達が去っていく。余りにも悲しくて切なくて苦しくて……繰り返す夢の中で、こんなこと有るはずがないって否定してた。だから、心が思い出させないようにしてたのかも……」
涙が止まらなかった。
どうすれば良いか、どうしたら時間を戻せるのか。
こうなる前に何か出来ていたはずだ。
今となっては答えの無い自問。
苦しむ姿を見かねたエラゼルは、ラーソルバールの両頬を手で押さえ、無理矢理に自らと視線を合わせた。
「何の足しにもならぬかもしれぬが言っておく。私は決してお前を裏切らぬ。誓って言おう、何があってもだ」
「うん…」
ラーソルバールは僅かに微笑むと、力なく応えた。
ラーソルバールは叫びながら剣を弾き返した。
兵士の手に痺れが残る。
「これは友達を、学友を犠牲にしてまでやる事なのか!」
刹那、ラーソルバールの剣が速度を上げた。
その剣は即座に眼前の相手三人を、防戦一方に追い込んだ。
「速い!」
兵士の一人が驚愕した。
優雅に踊るように見えながらも、目に見えぬ程の恐るべき速度で剣が繰り出される。
怒気を孕んだその剣は、兵士を恐怖させた。
次の瞬間には、ラーソルバールの剣を受けた別の兵士が弾き飛ばされ、後ろ数人を巻き込んだ。
それを見て怯んだ瞬間、もうひとりの兵士も吹き飛ばされた。
あとは目の前に居る一人。アルディスと思しき兵士。
それでも、ラーソルバールの剣は止まらなかった。
叩きつけるような怒りの剣が繰り出され、止めようとする剣をことごとく弾き返す。
あまりの事に誰も近づけず、鎧の男はただ後退させられた。
ラーソルバールが放った八度目の攻撃が剣を弾き飛ばし、九度目の攻撃で男は弾き飛ばされた。
「フーッ……、フーッ……」
肩で大きく息をしながらも、誰一人近寄らせないほどの威圧感で兵士達を睨み付ける。その頬に涙が伝う。
ラーソルバールがゆっくりと歩くと、兵士達は恐怖に後ずさりし、そこに道が開く。
「あれは…悪魔か?」
兵士の誰かが声を震わせて呟いた。
弾き飛ばされた男も、落ちていた剣を杖に立ち上がるが、構える事ができないでいる。
「アレは確かに怖いだろうね……。私でさえ背筋がゾクゾクするよ。だが…、あれは体内魔力の制御って言うよりは暴走に近いね…」
自分の事を棚に上げて言い放つジャハネート。
最早、ジャハネートの前にも兵士は寄ってこない。
自然に開いていく道を通ると、戦っていた学生達とも合流でき、ようやく宰相の安全が確保された。
「撤退せよ!」
隊長と思しき男が叫ぶ、目的の達成が不可能だと悟ったのか、その声は震えていた。
命令と共に、逃げるように引き揚げて行く兵士。
「逃げるなぁ!」
叫ぶラーソルバールの視界に入ったのは、肩を担がれ去っていく男と、担いでいく女性兵士。
その兜の隙間から覗く、赤みがかった茶髪。
「……エフィ……姉……?」
ラーソルバールは衝撃に言葉を失い、膝を落とす。
(なんで、エフィ姉まで……)
そのまま力無く座り込み、嗚咽した。
泣き続けるラーソルバールに気付き、エラゼルは兵士を追うのを止め、友のもとにやって来た。
ラーソルバールはその気配に気付き、顔を上げて友の顔を見ると、再び視線を落とした。
「エラゼル……私ね、戦っている時にやっと思い出した……」
「何を…だ?」
「…悪夢」
小さく呟くように答える。
その声は震えていた。
「いつぞやに眠れぬと言っていた、あれか…」
エラゼルは横に座ると、ラーソルバールの肩を抱き寄せた。
「……これだった。信じていた人達が去っていく。余りにも悲しくて切なくて苦しくて……繰り返す夢の中で、こんなこと有るはずがないって否定してた。だから、心が思い出させないようにしてたのかも……」
涙が止まらなかった。
どうすれば良いか、どうしたら時間を戻せるのか。
こうなる前に何か出来ていたはずだ。
今となっては答えの無い自問。
苦しむ姿を見かねたエラゼルは、ラーソルバールの両頬を手で押さえ、無理矢理に自らと視線を合わせた。
「何の足しにもならぬかもしれぬが言っておく。私は決してお前を裏切らぬ。誓って言おう、何があってもだ」
「うん…」
ラーソルバールは僅かに微笑むと、力なく応えた。
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