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第一部:第十六章 動乱
(四)カレルロッサ動乱①
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(四)
爆発による死者八名。
重体六名。
重傷者三十二名。
軽傷者七十八名。
戦闘による死者一名。
軽傷五名。
行方不明者二名。
事件当日に学校側が発表した被害者。これは学生、教員を合わせた数だ。
教員の被害は数名程度。
多くの一年生は早急に避難したため、全員無事だったが、爆発が二年生のすぐ脇で発生したこともあり、被害者は二年生に集中していた。
戦闘で深手を負った軍務大臣は、即座に手当てを受け、命に別状は無しと判断されたが、大事をとってそのまま救護院に向かった。
今回の事件を引き起こして撤退した兵士達を、街中で見かけた者は居ない。
安全確保のため、撤退する兵士を追撃する事を避けたため、兵士達の行方は知れない。怪我人も居たはずだが、どこへ消えたのか、疑問だけが残った。
だが、華やかな卒業式が暗転した事件は、ここで終わらなかった。
夕刻、大講堂の片付けをし、翌日の追悼式と、順延された卒業式の再実施を目指していた騎士学校に、一つの情報が届けられた。
いくつかの貴族領から、私兵がいずこかへ移動しているらしい、というものだった。
ジャハネートが安全確認を終えるまでと、騎士団に戻らず騎士学校に留まっていたため、彼女の部下によってその報はもたらされた。
「今更隠す事も無い。ちょいと来な、ラーソルバール」
報告を受けたジャハネートが手招きする。
ラーソルバールは憔悴しきったような顔をしているが、目は死んでいない。自分のすべき事があるのなら、アルディスたちを引き戻す手があるのなら、動かずには居られなかった。
ジャハネートに呼ばれると、離れた場所で椅子に座って休んでいたラーソルバールはゆっくりと歩み寄り、ジャハネートの隣に座る。
「メッサーハイト公爵が宰相になられてから、国内にある不正を一掃しようという動きが有ったのは、知っているだろう?」
「…はい」
「それによって処罰されたり、爵位を返上させられたりした貴族が居たのも知っているはずだ。年始からそうなるだろうという想定は誰もがしていた。だから、メッサーハイト侯爵が宰相になった事に対し、就任当初から不満を持つ者が多かった」
「姉上の言っていたことか……」
ラーソルバールに寄り添うように居たエラゼルが口を開いた。
「なんだい、それ?」
「大臣の人事に不満を持つ幾つかの家が、新年会を連帯して欠席したとか何とか…」
「ああ、それだ。その中心にあるのが、フォンドラーク侯爵だ」
「フォンドラーク……」
その名を聞いて、ラーソルバールは全てを理解した。
フォンドラークの本家が主体となって今回の事件を引き起こしたのなら、分家であるアルディスの家は逆らえなかったに違いない。
だがそれでも、しがらみを断ち切って、本家とは違う道を辿って欲しかったと思う。
「特務庁長官のザハティンは今回の件でクビだろうな。イスマイアの暴動の際も、今回も事前に動きを掴んでおきながら、情報を小出しにして事態を深刻化させちまった。無能ではないが己の手柄に固執する愚者だ……。おっと、今のは聞かなかったことにしておくれ」
そう言って、ジャハネートは大きくため息をついた。
「恐らく、フォンドラーク侯爵家を主軸としてどこかに集結して、内乱を起こすつもりだろうねえ。アタシはもう少しここに居るつもりだったが、鎮圧命令が出るだろうから戻らにゃならなくなったよ」
ジャハネートは、ラーソルバールの頭をポンポンと叩いた。
「あんたは良くやった。立派な騎士だ。思うところも色々あるだろうが、今は胸を張りな」
近くで戦っていたジャハネートが、苦悩するラーソルバールの戦いを一番見ていたはずだ。その騎士団長の言葉は優しく胸に響くものだった。
「あとで勲章か、爵位か、褒章金が出るだろうさ」
そう言い残して手を振ると、ジャハネートは壁に空いた大きな穴から外に出て、夕闇に消えていった。
爆発による死者八名。
重体六名。
重傷者三十二名。
軽傷者七十八名。
戦闘による死者一名。
軽傷五名。
行方不明者二名。
事件当日に学校側が発表した被害者。これは学生、教員を合わせた数だ。
教員の被害は数名程度。
多くの一年生は早急に避難したため、全員無事だったが、爆発が二年生のすぐ脇で発生したこともあり、被害者は二年生に集中していた。
戦闘で深手を負った軍務大臣は、即座に手当てを受け、命に別状は無しと判断されたが、大事をとってそのまま救護院に向かった。
今回の事件を引き起こして撤退した兵士達を、街中で見かけた者は居ない。
安全確保のため、撤退する兵士を追撃する事を避けたため、兵士達の行方は知れない。怪我人も居たはずだが、どこへ消えたのか、疑問だけが残った。
だが、華やかな卒業式が暗転した事件は、ここで終わらなかった。
夕刻、大講堂の片付けをし、翌日の追悼式と、順延された卒業式の再実施を目指していた騎士学校に、一つの情報が届けられた。
いくつかの貴族領から、私兵がいずこかへ移動しているらしい、というものだった。
ジャハネートが安全確認を終えるまでと、騎士団に戻らず騎士学校に留まっていたため、彼女の部下によってその報はもたらされた。
「今更隠す事も無い。ちょいと来な、ラーソルバール」
報告を受けたジャハネートが手招きする。
ラーソルバールは憔悴しきったような顔をしているが、目は死んでいない。自分のすべき事があるのなら、アルディスたちを引き戻す手があるのなら、動かずには居られなかった。
ジャハネートに呼ばれると、離れた場所で椅子に座って休んでいたラーソルバールはゆっくりと歩み寄り、ジャハネートの隣に座る。
「メッサーハイト公爵が宰相になられてから、国内にある不正を一掃しようという動きが有ったのは、知っているだろう?」
「…はい」
「それによって処罰されたり、爵位を返上させられたりした貴族が居たのも知っているはずだ。年始からそうなるだろうという想定は誰もがしていた。だから、メッサーハイト侯爵が宰相になった事に対し、就任当初から不満を持つ者が多かった」
「姉上の言っていたことか……」
ラーソルバールに寄り添うように居たエラゼルが口を開いた。
「なんだい、それ?」
「大臣の人事に不満を持つ幾つかの家が、新年会を連帯して欠席したとか何とか…」
「ああ、それだ。その中心にあるのが、フォンドラーク侯爵だ」
「フォンドラーク……」
その名を聞いて、ラーソルバールは全てを理解した。
フォンドラークの本家が主体となって今回の事件を引き起こしたのなら、分家であるアルディスの家は逆らえなかったに違いない。
だがそれでも、しがらみを断ち切って、本家とは違う道を辿って欲しかったと思う。
「特務庁長官のザハティンは今回の件でクビだろうな。イスマイアの暴動の際も、今回も事前に動きを掴んでおきながら、情報を小出しにして事態を深刻化させちまった。無能ではないが己の手柄に固執する愚者だ……。おっと、今のは聞かなかったことにしておくれ」
そう言って、ジャハネートは大きくため息をついた。
「恐らく、フォンドラーク侯爵家を主軸としてどこかに集結して、内乱を起こすつもりだろうねえ。アタシはもう少しここに居るつもりだったが、鎮圧命令が出るだろうから戻らにゃならなくなったよ」
ジャハネートは、ラーソルバールの頭をポンポンと叩いた。
「あんたは良くやった。立派な騎士だ。思うところも色々あるだろうが、今は胸を張りな」
近くで戦っていたジャハネートが、苦悩するラーソルバールの戦いを一番見ていたはずだ。その騎士団長の言葉は優しく胸に響くものだった。
「あとで勲章か、爵位か、褒章金が出るだろうさ」
そう言い残して手を振ると、ジャハネートは壁に空いた大きな穴から外に出て、夕闇に消えていった。
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