【完】謎の宗教セミナー潜入

柊一郎|くすぐり小説

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【前編】謎の宗教セミナー潜入

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 "笑い"が人を豊かにするーーそんな触れ込みの新興宗教が存在し、徐々に信者を増やしている。

 そんな噂が、とあるゴシップ週刊誌の、敏腕デスク・木戸の耳に入った。木戸は、よくあるマルチ寄りの組織体ではと軽く考えたが、過去その類のネタがヒットした経験があったため、とりあえず班の一番の新人である瀬名まどかを派遣することにした。

 まどかはまだ1年目であったが、バイタリティ溢れるフットワーク軽快な女子で、何に対しても飛び込むことを厭わない。

 そのうえ空手の有段者で、その辺の男には負けない自信もあったため、多少アングラな取材であっても躊躇無くこなす。

 今回木戸キャップから声をかけられた時も、黒髪のショートヘアを凛と靡かせて、木戸の放つ紙煙草の煙を躱しながら、承知しましたとスーツの皺を伸ばしたのであった。

**

 まどかはまず、タレコミ元の女性に声を掛け、その日の夕方にアポイントを取った。

 東新宿のカフェに現れたその女性は、金髪ロングのいわゆるギャルっぽい見た目で、ミルクティーを飲みながら(謝金を懐に仕舞いつつ)ノリノリで話してくれた。新興宗教の拠点の近くに住んでいるらしく、彼女自身が入信しているという訳ではないようだった。

「いやほんっと。笑い声がずーっと聞こえてくるんすよ!集会なのか何なのか分からないんだけど、ドッと沢山の人が笑ってるかと思いきや、一人の女の人の笑い声がずっと続いてたり」

 どうやら、近くの広い敷地にあるプレハブ製の平屋がその拠点であるらしく、自室のベランダで煙草を吸っていると、否が応でもその建物が目に入るらしい。数日に一回程度、元気の無さそうな女性が入っていっては、ふやけたような笑顔で出てくるとの事であった。

「あたしも声かけられたのよ。割と綺麗めなおばさんから。あそこで集会やってるって。なんか笑いがどうとか、笑顔にするとか言ってたけど、困ってないっすっつって追い返しちゃった」

 アハハと笑う彼女を見て、たしかに必要無さそうだと、少し可笑しく感じた。

 それから、彼女が是非に是非にと言うので、一定期間部屋に出入りさせてもらうことになった。

**

 金髪の彼女は由梨といい、正直言ってかなりの美人であった。普段は水商売をしているが、どうやら日中の友達が欲しいらしく、まどかを招いたようであった。

「しかしまどかサン可愛いっすよね!うちの店で働いたら人気出そう」

 まどかは背が小さく、顔も幼く見られがちなので、小動物のようだと言われる事が多い。一方本人は強かな女性に憧れているためで、武道を嗜み、表情をキリリと管理している。

 なのでその褒め言葉は、普段そんなにも嬉しくないのだが、由梨のその裏表のない笑顔を見ると、本当にそう思ってくれてるんだなと、嫌な気はしなかった。

**

 それから3日目の夕方、由梨の家に来訪者があった。宗教の勧誘であり、偶々夕飯を一緒に食べていたまどかは、これ幸運と玄関先に顔を出した。

 そこには、スッと背筋の立った綺麗な女性が立っており、まどかの顔を見るや、アラ、と声を上げた。

「こんばんは。貴女……とても真面目さんな顔をしているわね。こちらの女性とは対極といった感じ」

 その女性はふふふと口元を押さえ、由梨は少し気色ばんだが、まどかの制止により奥へ引っ込んだ。

「神に愛される方法をご存知?」

ーーきた。

「何でしょう。教典を読む事でしょうか」

「ふふ、それもとても大事です。しかしそれ以前に、神のご加護を受け入れられる特性、体性を獲得しなければなりません」

ーー間違いない。

「それは、笑うことです」

 ビンゴであった。まどかは、勧誘に値する人間性を維持すべく、口を真一文字に結びながら、はあ、と答えた。

 その女性によると、明日の17:00より、セミナーを行うとのことであったので、まどかはそれっぽく場所のメモを取り、参加を了承した。

**

 当日、まどかは例のセミナーの入り口に立っていた。周りは塀で囲われているが、ポップな雰囲気で閉塞感を感じさせない。ちなみに、先日の勧誘時、本セミナーには女性しかいないため安心して欲しい、と耳打ちされていた。女性だけであれば何があっても解決できると、まどかは一定の自信を持って入室した。

 中は広い研修会場のようになっており、十数人の女性がニコニコしながら立ち話をし、ザワザワと盛り上がっていた。ステージの中央には勧誘してきた女性が立っており、関係者か何かと打ち合わせをしている。

 横断幕には、"笑い声を届けよう"と細い字体で書いてあり、ニコちゃんマークをモチーフにしたロゴのようなものが至る所に掲示されている。

 今回の目的は、この新興宗教の実態を確認し、できる限り情報を引き出すこと。潜入し、被害者談を記事にして告発すること。まどかは気合いを入れる。

「えー、それでは」

 例の女性は、教祖に次ぐナンバー2であるようで、それはもう大仰に話し始めた。要約すると、神に笑いを届け、人類の中で目立つ必要がありーーそのためには笑顔程度ではダメーー人生の中での"笑い声"の総量が大事であると。また、笑うことで普段背負っている負のエネルギーを落とす事ができ、心身が健康にもなるーーそんなところであった。

 当然だが、まどかは記者であるため、それらの話を真に受ける事はない。しかしまどかの横で、20代半ばくらいの女性が、そわそわと食い入るように話を聞いていた。

 会の始まる前に少し会話したのだが、彼女はどうやら1週間前に入信したばかりであるようだった。寧々という女性で、携帯ショップで働く美人な人妻であるが、色々と上手くいかない事が多く、そんな中で勧誘を受けたとのことであった。

「笑うということは、身体的事象。本日は、最近なかなか笑えないという寧々さんに、思う存分笑っていただこうと思っております」

ーー突然、寧々が壇上に呼び出された。笑っていただくというのは、どういうことであろうか。コメディでも視聴するのであろうか。

 そんなことを考えていると、会場の真ん中に診療台のようなものが運ばれてきて、寧々はその上に横たわり、服を脱ぎ始めた。

 いきなり寧々が脱ぎ始め、最終的にパンティのみとなったため、まどかはギョッとした。いくら女性しかいないとはいえ、それは異様な光景であった。

「嘘笑いは、神への冒涜と捉えられかねません。笑ってくださいと言われても、すぐには難しいでしょう。私たちが、優しくお手伝いいたします」

ーーまさか。

**

 そしてそれは、突然に始まった。

 (恐らく)信者の女性6人が寧々を取り囲み、羽根を使って、寧々の身体を撫ぜ始めたのだ。

「うふふふ……あっあはははっ……ふふっ」

 寧々がそっと笑い始めた。それは当然の反応であると、まどかは思った。

 肩口のあたりに立っている2人は乳房の横側を、腰あたりの2人はお腹周りを、足元の2人は足裏を、それぞれ羽根で優しくくすぐっている。

「ふふふっ、くふふふふ……あはははははっ」

 寧々の笑い声が本格的なものになっていく。肌に対する刺激は変わっていないはずだが、いよいよ我慢が出来なくなったという様子であった。

 乳房がぷるんと揺れ、お腹は笑うたびに痙攣し、足裏は刺激から逃げようと忙しく動いている。くすぐっている信者は、弱点探しをしているようにも見えた。

「寧々さん、笑いから逃げないように。それは神から与えられた崇高な反応で、試されていると思いなさい」

 寧々は笑いながら、はいと返事をし、引き続き身を捩りながら堪えている。たまに堪えてはいけないと思ってか、腕を少し開いてみたりするのだが、隙間から脇の下に羽根が忍び込んでくると、大きな笑い声を上げて身体を折りたたんでしまう。この繰り返し。

「あらあら。それでは、疲れ切ってしまう前に、より大きな笑い声を神に届けましょうね」

 その合図とともに、他の信者数人が参加し、羽根ではなく指先でくすぐり始めた。寧々の首筋から脇の下、縦長のおへそから脇腹、太もも、足の裏に至るまで、十数人……よって100本以上の指先が、通常くすぐったいとされる部位に群がる。

「あはははは、あっはっはっは……!く、くすぐったい、堪えられません……!」

「きゃはははははっああっ!あははは、、そこはダメです……!」

 寧々がそう訴えるのも無理はない。堪えられるはずもない。そして「堪えるな」と言われている訳だから、もう笑うしかないのだ。寧々の状況を自身に置き換え、まどかはゾクっとした。

 それから10分くらい経ったであろうか。

 寧々はくすぐりの刑(少なくともまどかにはそう見えた)から解放され、肩で呼吸をしながら半笑いのままぐったりしている。

 まどかはこっそりと、その会場を脱出した。寧々が全員の目線を集めていたため、比較的すんなりといった。

 これはとんでもない物を見てしまったーー。

後編へ続く
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