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"くすぐったいストッキング"開発プロジェクト
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仙陽高校の309教室に、生徒にも先生にも、あまり知られていない部活が存在した。
この世に面白い謎プロダクトを!をモットーに活動している、「創造部」という組織である。
これまで制作したものは、
・匂い増強シューズ
・改札前で滞るやつ察知センサー
・雨でのみ溶けだすブラウス
など多岐に渡り、最新作の"におい変換クリーム"などは、汗のにおいを強制的にレモンの匂いに変換するという素晴らしいクリームだが、対象者以外の皮脂に反応して作用する(つまり、他人に塗ってもらわねばならない)という謎仕様であり、部長の天才・南浩一のお気に入りであった。
南浩一は天才であったが、性格が完全に倒錯しており、曲がった愛情に突き動かされる。足の匂いはいい匂い、モタモタしている女子が好き、透けるブラウスが愛おしいのである。
**
南棟の端にあるその教室には、南浩一を筆頭にして、北条美鈴、双子の藤堂ルミ・ルナが集まり、実験と開発を繰り返している。
南浩一にはカリスマ性があり、各メンバーは「絶対にこの人は大物になる」と確信している。よって多少変なプロダクトでも、ちょっと我慢しながら協力しているのだがーー。
「発表します」
本日は、新プロジェクトの発表の日であった。各メンバーは、身体からレモンの匂いをさせながら固唾を飲む。
南浩一から発表された新作は、"くすぐったいストッキング"であった。
**
「部長、ひとつよろしいでしょうか」
美鈴がまっすぐに腕を上げ、口を一文字にしながら質問する。
「うむ、なんだい」
南浩一が、質問されるのが分かっていたふうに、腕を組みながら大きく頷いた。
「あの…………用途は何でしょうか。また、裸足へのくすぐりとの比較において、勝ることは考えにくいと思料します」
美鈴は、成績優秀の真面目女子で、その頭脳を買われて創造部へ入部することとなった。天才肌というよりは努力派で、生徒会役員も務めている。さらりとした黒髪のセミロングで、見た目にもそれなりに気を遣っており、細めの身体に紺色のブレザーがよく似合っている。男子人気も高かった。
そんな美鈴であったが、南浩一に全国模試で勝てたことがなく、入部後もその天才性を見せつけられ、ある種"憧れ"のような感情を抱いていた。ーーのであったが、今回ばかりは理解が及ばない。
「良い質問だね」
ルミとルナが、南浩一のいつもの口癖にクスクスと笑う。
「そもそもだ。くすぐりとは何か。ーー愛だよ」
一同、まったく意味がわからなかった。南浩一は続ける。
「擽感というのは、体表面に生じた刺激への反作用だ。脳への危険信号なのに、反応としては笑ってしまうのだ。面白いだろう」
面白いかなあと、美鈴は少しだけ首を傾げる。そんなことは考えたことも無かった。
「まあ聞きたまえよ。これ実は、関係性が密であるほど効果が高いのだ。虫が皮膚を這っているとき、笑い転げるだろうか?道ゆく不審者がいきなり腹部を弄ってきたら、恐怖を覚えるだろう。そう、一定の安心感こそがくすぐったさを生む。ーー愛だよ」
やはり最後の、取ってつけたような決め台詞だけ能く分からないが、言っていることは分かる。
「そしてその愛おしい感覚が増幅される装置として、ストッキングが適していると判断したのだ。用途はーーこれから考えるとしよう。そして裸足との比較についてだがーーストッキングも生地によっては、裸足に匹敵するほどにくすぐったさを生じさせることを実証済みだ」
どうやら先月、ルミとルナの協力を仰ぎ、いつの間にやら実験をしたようであった。
ルナが片脚にだけ、太ももまでのストッキングを着用し、左右の足の裏を順番にくすぐる。その際のルナの表情や笑い声、本人からのくすぐったさに関する実況レポートを元に点数化したところ、裸足と同等以上の反応を得られたらしかった。
その実験の話になった際、普段は天真爛漫なルナが、少しだけ恥ずかしそうな、むず痒そうな表情になった。
**
今回の"くすぐったいストッキング"開発に伴う実験の被験者は、美鈴に決定した。
美鈴は、様々な理由をつけて抵抗したのだが、先月の実験の際、右足裏を南浩一、左足裏をルミが担当したため、属人性が微妙に結果に現れてしまったとのことでーールミとルナを左右足裏それぞれのくすぐり担当とするのが適切であると尤もらしく力説された。
「また、片足ずつのくすぐり刺激の場合、左右足裏それぞれの耐久値の差が、結果を歪めかねないのだよ。よって両足裏を同時に、双子であるルミ・ルナがくすぐることとする」
真面目な美鈴は、反論の余地を見失い、神妙な面持ちで、こくりと頷いたのであったーー。
**
窓を閉め切り、ドアに鍵をかけ、教室の真ん中にスクールチェアを置く。逃げ動作が観測されても問題ないように、チェアの脚部分を床に固定し、美鈴の腰を背もたれ部分にベルトで巻きつける。
客観的に見ると異様な光景であるが、本人たちは至って真剣である。
実は南浩一は、先月の実験を受け、20デニールのストッキングを基礎とし、特殊な素材で試作品を発注済みであった。
まずは裸足の状態をベンチマークとするため、紺ソックスを脱いだ美鈴の足底部に、ルミ・ルナがくすぐり刺激を与えることとなった。
【実験①】
裸足へのくすぐり刺激の提示
美鈴の両足をもう一脚のスクールチェアに載せ、左右からルミ・ルナが指を用いてくすぐりを行う。
ルミ・ルナの指先が、優しく美鈴の足の裏をくすぐり始める。
「あっ……くふふ……あはははっ……」
美鈴は顔を下に伏せ、堪え忍ぶように笑い始めた。久々に提示された裸足へのくすぐり刺激に、戸惑いを隠すことができない。
ルミとルナは双子であるからか、目配せをし合いながら、くすぐり方の平仄を合わせることに成功している。
「美鈴さん、顔を上げて、くすぐったさをレポートしてください」
南浩一は、部員に対する劣情は持ち合わせていない。いたって真剣に観測しているのである。
「あはははっ……くすぐったいです……特にっくふははっ、つ、爪が真ん中あたりに触れるとっ」
真面目な美鈴も、恥ずかしいのを抑え、いたって真剣に実況する。どうやら、土踏まずの内側あたりを爪でカリカリと刺激されるのに弱いらしい。ルミとルナは愉しげに、美鈴の足の裏を蹂躙する。二人がくすぐり方を少し変えると、美鈴の反応が一段と増すポイントがあった。
「あはっ、これ、これだめです……!あっはっはっは……指の間、くすぐったい、あはははははっははははっ!」
ルミとルナの細い指先が、足指の間に出入りすると、椅子をガタガタ揺らしながらくすぐったがる。
南浩一は、ふむふむとPCへの入力を進める。PC画面を見ながら、様々なくすぐり方をルミとルナに指示出しを行う。
それから10分ほど経ったであろうか。
「ああっはははっもう、もういいですか部長、ちょっと我慢の限界かもです」
「よし、休憩」
美鈴は、息をたくさん吸い吐きしながら、「どうでしたか」と質問した。南浩一は、ウン、一旦裸足はOK、と言いEnterキーを叩いたため、美鈴は少し安堵した。
【実験②】
素脚へのくすぐり刺激の提示
次に、(一応)南浩一に見えないようにパーテーションを準備して、美鈴の両脚をくすぐってみることとなった。
ルミとルナは、太ももから膝、ふくらはぎまでを大きな動きで、しかし指先の動きは細かくくすぐりだす。
足の裏へのくすぐりよりはマシだが、くすぐったいものはくすぐったい。美鈴から笑い声を引き出すには十分すぎる刺激であった。
南浩一は、なぜか執拗に太もも上部(付け根付近)へのくすぐりを指示した。美鈴としても特にくすぐったい部分であったので、とにかく笑うしかなく、ちょっとだけ南を恨んだ。
パンツが見えている状態であったが、幸いなことにルミ・ルナ共に女子であったため、気にすることなく実験を行うことができた。
【実験③】
"くすぐったいストッキング"(試作品)を履いた状態:足裏へのくすぐり刺激の提示
今回南浩一は、通常のストッキングよりも目が細かく、薄く、そして生地に滑りの良い素材を使用して試作品を製作していた。履いていることが分かりやすいように、色は薄い黒とした。
長さは太ももの中間くらいまでで、両脚に履くスタイルのものである。
ルミとルナの指先が、ストッキング越しで足の裏に触れた瞬間、美鈴は驚かされた。
裸足よりくすぐったいのだ。
ツルツルとした素材が、ルミとルナの指の動きをスムーズにし、さらさらとくすぐる事を可能にしている。
裸足の時のような、ちくりとした強い刺激が混じる事なく、純粋にくすぐったさのみが前面に押し出され、美鈴から笑い声を引き出す。
「あっ、あははははははっ、部長、これは……っ!」
南浩一は、ウン、ほらね、と満足気に足を組んだ。
「あーっははっはっはっ、いやっ……あはははははっ、くすぐったいです!」
「うふふふ、爪を立てられると、たっ……堪りません!あはははぁ」
こちょこちょという擬音が相応しいなと、美鈴は身体を捩らせながら思った。
裸足のように、指の間に出入りすることは出来ないが、指の付け根をこちょこちょすることはできる。それが美鈴には堪らない。
「あははははっ、そこは我慢できません、ダメみたいです、笑ってしまいます……あははははははっ!あーっはっはっはっ、」
その後、ルミ・ルナの指先は足の甲も含めて執拗にくすぐり尽くし、ここだね、ここは弱いね、笑っちゃうねなどと意地悪なことを言いながらはしゃいでいる。
南浩一は美鈴のその表情・笑い声の変化・逃げ動作・身体の捩れなどを余す事なく観測し、レポートにまとめ上げる。
明らかに、裸足時よりもポイントが向上していた。
【実験④】
"くすぐったいストッキング"(試作品)を履いた状態:脚へのくすぐり刺激の提示
本日の実験としてはラストであった。美鈴は真面目に付き合っているが、もはや息絶え絶えであった。
先ほどと同じ理由で、脚へのくすぐったさがより感じられ、美鈴は最後の力を振り絞るように、くくくと笑い始めた。
実は先ほど、執拗に太もも上部(付け根付近)へのくすぐりを指示したのには訳があった。
ストッキングは太ももの中間くらいまでしかないため、太もも上部は素肌である。南浩一は、ルミ・ルナに、素肌部分へのくすぐり刺激の提示を指示した。
不思議なことに、美鈴の笑い声が、今日一番で大きくなった。
「あははははははははっあーはははは、、やめ、やめて!くすぐったい!あはは、あはは」
「なんでだろ、やだ、おかしくなる、あははは、もう笑いたくない……っ」
ストッキング越しの方がくすぐったかったはずなのに、ストッキングの及んでいない素肌に指が触れると、逆説的にくすぐったいーーこれは大変に興味深い現象であった。おそらく、素肌部分=露出部分であるため、弱点であると脳が錯覚するのだと、南浩一は分析する。
**
美鈴は南浩一に、お気に入りのいちごオレを買ってもらい、ベランダで休憩を取っていた。こんなに下半身をくすぐられたのは、当然であるが初めてであった。
「美鈴さん、お疲れ様」
南浩一が話しかける。
「来週ですが、試作品2号を試したいのですが……今日の様子を見ると、もしかして、嫌かな?」
…………どうであろうか。苦しいけど、嫌ではなかった。
「いいえ、新プロダクトのためであれば」
真面目な美鈴は、少し恥ずかしそうな顔をして答えた。
「さすが創造部員だね」
**
後日談
その後、幾多の(悶絶を伴う)試行錯誤を経て、"くすぐったいストッキング"は完成した。
用途はーーまだ定まっていないが、なぜかネット注文は継続的に入ってくる。物好きがいたものだと、美鈴はやや戸惑う。
さて、今日はどんな実験を行おうかーー。
fin
この世に面白い謎プロダクトを!をモットーに活動している、「創造部」という組織である。
これまで制作したものは、
・匂い増強シューズ
・改札前で滞るやつ察知センサー
・雨でのみ溶けだすブラウス
など多岐に渡り、最新作の"におい変換クリーム"などは、汗のにおいを強制的にレモンの匂いに変換するという素晴らしいクリームだが、対象者以外の皮脂に反応して作用する(つまり、他人に塗ってもらわねばならない)という謎仕様であり、部長の天才・南浩一のお気に入りであった。
南浩一は天才であったが、性格が完全に倒錯しており、曲がった愛情に突き動かされる。足の匂いはいい匂い、モタモタしている女子が好き、透けるブラウスが愛おしいのである。
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南棟の端にあるその教室には、南浩一を筆頭にして、北条美鈴、双子の藤堂ルミ・ルナが集まり、実験と開発を繰り返している。
南浩一にはカリスマ性があり、各メンバーは「絶対にこの人は大物になる」と確信している。よって多少変なプロダクトでも、ちょっと我慢しながら協力しているのだがーー。
「発表します」
本日は、新プロジェクトの発表の日であった。各メンバーは、身体からレモンの匂いをさせながら固唾を飲む。
南浩一から発表された新作は、"くすぐったいストッキング"であった。
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「部長、ひとつよろしいでしょうか」
美鈴がまっすぐに腕を上げ、口を一文字にしながら質問する。
「うむ、なんだい」
南浩一が、質問されるのが分かっていたふうに、腕を組みながら大きく頷いた。
「あの…………用途は何でしょうか。また、裸足へのくすぐりとの比較において、勝ることは考えにくいと思料します」
美鈴は、成績優秀の真面目女子で、その頭脳を買われて創造部へ入部することとなった。天才肌というよりは努力派で、生徒会役員も務めている。さらりとした黒髪のセミロングで、見た目にもそれなりに気を遣っており、細めの身体に紺色のブレザーがよく似合っている。男子人気も高かった。
そんな美鈴であったが、南浩一に全国模試で勝てたことがなく、入部後もその天才性を見せつけられ、ある種"憧れ"のような感情を抱いていた。ーーのであったが、今回ばかりは理解が及ばない。
「良い質問だね」
ルミとルナが、南浩一のいつもの口癖にクスクスと笑う。
「そもそもだ。くすぐりとは何か。ーー愛だよ」
一同、まったく意味がわからなかった。南浩一は続ける。
「擽感というのは、体表面に生じた刺激への反作用だ。脳への危険信号なのに、反応としては笑ってしまうのだ。面白いだろう」
面白いかなあと、美鈴は少しだけ首を傾げる。そんなことは考えたことも無かった。
「まあ聞きたまえよ。これ実は、関係性が密であるほど効果が高いのだ。虫が皮膚を這っているとき、笑い転げるだろうか?道ゆく不審者がいきなり腹部を弄ってきたら、恐怖を覚えるだろう。そう、一定の安心感こそがくすぐったさを生む。ーー愛だよ」
やはり最後の、取ってつけたような決め台詞だけ能く分からないが、言っていることは分かる。
「そしてその愛おしい感覚が増幅される装置として、ストッキングが適していると判断したのだ。用途はーーこれから考えるとしよう。そして裸足との比較についてだがーーストッキングも生地によっては、裸足に匹敵するほどにくすぐったさを生じさせることを実証済みだ」
どうやら先月、ルミとルナの協力を仰ぎ、いつの間にやら実験をしたようであった。
ルナが片脚にだけ、太ももまでのストッキングを着用し、左右の足の裏を順番にくすぐる。その際のルナの表情や笑い声、本人からのくすぐったさに関する実況レポートを元に点数化したところ、裸足と同等以上の反応を得られたらしかった。
その実験の話になった際、普段は天真爛漫なルナが、少しだけ恥ずかしそうな、むず痒そうな表情になった。
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今回の"くすぐったいストッキング"開発に伴う実験の被験者は、美鈴に決定した。
美鈴は、様々な理由をつけて抵抗したのだが、先月の実験の際、右足裏を南浩一、左足裏をルミが担当したため、属人性が微妙に結果に現れてしまったとのことでーールミとルナを左右足裏それぞれのくすぐり担当とするのが適切であると尤もらしく力説された。
「また、片足ずつのくすぐり刺激の場合、左右足裏それぞれの耐久値の差が、結果を歪めかねないのだよ。よって両足裏を同時に、双子であるルミ・ルナがくすぐることとする」
真面目な美鈴は、反論の余地を見失い、神妙な面持ちで、こくりと頷いたのであったーー。
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窓を閉め切り、ドアに鍵をかけ、教室の真ん中にスクールチェアを置く。逃げ動作が観測されても問題ないように、チェアの脚部分を床に固定し、美鈴の腰を背もたれ部分にベルトで巻きつける。
客観的に見ると異様な光景であるが、本人たちは至って真剣である。
実は南浩一は、先月の実験を受け、20デニールのストッキングを基礎とし、特殊な素材で試作品を発注済みであった。
まずは裸足の状態をベンチマークとするため、紺ソックスを脱いだ美鈴の足底部に、ルミ・ルナがくすぐり刺激を与えることとなった。
【実験①】
裸足へのくすぐり刺激の提示
美鈴の両足をもう一脚のスクールチェアに載せ、左右からルミ・ルナが指を用いてくすぐりを行う。
ルミ・ルナの指先が、優しく美鈴の足の裏をくすぐり始める。
「あっ……くふふ……あはははっ……」
美鈴は顔を下に伏せ、堪え忍ぶように笑い始めた。久々に提示された裸足へのくすぐり刺激に、戸惑いを隠すことができない。
ルミとルナは双子であるからか、目配せをし合いながら、くすぐり方の平仄を合わせることに成功している。
「美鈴さん、顔を上げて、くすぐったさをレポートしてください」
南浩一は、部員に対する劣情は持ち合わせていない。いたって真剣に観測しているのである。
「あはははっ……くすぐったいです……特にっくふははっ、つ、爪が真ん中あたりに触れるとっ」
真面目な美鈴も、恥ずかしいのを抑え、いたって真剣に実況する。どうやら、土踏まずの内側あたりを爪でカリカリと刺激されるのに弱いらしい。ルミとルナは愉しげに、美鈴の足の裏を蹂躙する。二人がくすぐり方を少し変えると、美鈴の反応が一段と増すポイントがあった。
「あはっ、これ、これだめです……!あっはっはっは……指の間、くすぐったい、あはははははっははははっ!」
ルミとルナの細い指先が、足指の間に出入りすると、椅子をガタガタ揺らしながらくすぐったがる。
南浩一は、ふむふむとPCへの入力を進める。PC画面を見ながら、様々なくすぐり方をルミとルナに指示出しを行う。
それから10分ほど経ったであろうか。
「ああっはははっもう、もういいですか部長、ちょっと我慢の限界かもです」
「よし、休憩」
美鈴は、息をたくさん吸い吐きしながら、「どうでしたか」と質問した。南浩一は、ウン、一旦裸足はOK、と言いEnterキーを叩いたため、美鈴は少し安堵した。
【実験②】
素脚へのくすぐり刺激の提示
次に、(一応)南浩一に見えないようにパーテーションを準備して、美鈴の両脚をくすぐってみることとなった。
ルミとルナは、太ももから膝、ふくらはぎまでを大きな動きで、しかし指先の動きは細かくくすぐりだす。
足の裏へのくすぐりよりはマシだが、くすぐったいものはくすぐったい。美鈴から笑い声を引き出すには十分すぎる刺激であった。
南浩一は、なぜか執拗に太もも上部(付け根付近)へのくすぐりを指示した。美鈴としても特にくすぐったい部分であったので、とにかく笑うしかなく、ちょっとだけ南を恨んだ。
パンツが見えている状態であったが、幸いなことにルミ・ルナ共に女子であったため、気にすることなく実験を行うことができた。
【実験③】
"くすぐったいストッキング"(試作品)を履いた状態:足裏へのくすぐり刺激の提示
今回南浩一は、通常のストッキングよりも目が細かく、薄く、そして生地に滑りの良い素材を使用して試作品を製作していた。履いていることが分かりやすいように、色は薄い黒とした。
長さは太ももの中間くらいまでで、両脚に履くスタイルのものである。
ルミとルナの指先が、ストッキング越しで足の裏に触れた瞬間、美鈴は驚かされた。
裸足よりくすぐったいのだ。
ツルツルとした素材が、ルミとルナの指の動きをスムーズにし、さらさらとくすぐる事を可能にしている。
裸足の時のような、ちくりとした強い刺激が混じる事なく、純粋にくすぐったさのみが前面に押し出され、美鈴から笑い声を引き出す。
「あっ、あははははははっ、部長、これは……っ!」
南浩一は、ウン、ほらね、と満足気に足を組んだ。
「あーっははっはっはっ、いやっ……あはははははっ、くすぐったいです!」
「うふふふ、爪を立てられると、たっ……堪りません!あはははぁ」
こちょこちょという擬音が相応しいなと、美鈴は身体を捩らせながら思った。
裸足のように、指の間に出入りすることは出来ないが、指の付け根をこちょこちょすることはできる。それが美鈴には堪らない。
「あははははっ、そこは我慢できません、ダメみたいです、笑ってしまいます……あははははははっ!あーっはっはっはっ、」
その後、ルミ・ルナの指先は足の甲も含めて執拗にくすぐり尽くし、ここだね、ここは弱いね、笑っちゃうねなどと意地悪なことを言いながらはしゃいでいる。
南浩一は美鈴のその表情・笑い声の変化・逃げ動作・身体の捩れなどを余す事なく観測し、レポートにまとめ上げる。
明らかに、裸足時よりもポイントが向上していた。
【実験④】
"くすぐったいストッキング"(試作品)を履いた状態:脚へのくすぐり刺激の提示
本日の実験としてはラストであった。美鈴は真面目に付き合っているが、もはや息絶え絶えであった。
先ほどと同じ理由で、脚へのくすぐったさがより感じられ、美鈴は最後の力を振り絞るように、くくくと笑い始めた。
実は先ほど、執拗に太もも上部(付け根付近)へのくすぐりを指示したのには訳があった。
ストッキングは太ももの中間くらいまでしかないため、太もも上部は素肌である。南浩一は、ルミ・ルナに、素肌部分へのくすぐり刺激の提示を指示した。
不思議なことに、美鈴の笑い声が、今日一番で大きくなった。
「あははははははははっあーはははは、、やめ、やめて!くすぐったい!あはは、あはは」
「なんでだろ、やだ、おかしくなる、あははは、もう笑いたくない……っ」
ストッキング越しの方がくすぐったかったはずなのに、ストッキングの及んでいない素肌に指が触れると、逆説的にくすぐったいーーこれは大変に興味深い現象であった。おそらく、素肌部分=露出部分であるため、弱点であると脳が錯覚するのだと、南浩一は分析する。
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美鈴は南浩一に、お気に入りのいちごオレを買ってもらい、ベランダで休憩を取っていた。こんなに下半身をくすぐられたのは、当然であるが初めてであった。
「美鈴さん、お疲れ様」
南浩一が話しかける。
「来週ですが、試作品2号を試したいのですが……今日の様子を見ると、もしかして、嫌かな?」
…………どうであろうか。苦しいけど、嫌ではなかった。
「いいえ、新プロダクトのためであれば」
真面目な美鈴は、少し恥ずかしそうな顔をして答えた。
「さすが創造部員だね」
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後日談
その後、幾多の(悶絶を伴う)試行錯誤を経て、"くすぐったいストッキング"は完成した。
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