《くすぐり》設定別ショート・ショート

柊一郎|くすぐり小説

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彼の性癖、わたしの我慢

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 私の彼氏はT大卒で、外資系金融企業で働くエリートです。背も高く容姿端麗、そのうえ優しい……誰もが羨む彼氏だと、我ながら思います。

 同棲して半年になるのだけれど、本当に毎日が楽しいです。交代で料理を作ったり、好きなドラマを一緒に観たり。会社の愚痴も聞いてくれるし、それに対して下手なアドバイスもしてこない。でもしっかり芯があって、必要な時には支えてくれる。

 ほんとうに、言うことありません。

「舞美、そろそろ始めようか」

ーーただ一点を除いては。

**

 彼は、なぜか……本当に理解が出来ないのですが、私の身体をのが大好きなのです。

 いつも20時くらいになると、彼から声をかけられて、当たり前のようにベッドに向かいます。

 そんな私もどうかしているのかも知れませんが、大好きな彼が自分を求めて(?)くれているのが嬉しくて、なんとか我慢して応える日々なのです。

「今日なんだけどさ」

 毎回目を輝かせながら、色々な、私のくすぐり方を提案してきます。この間は敢えて笑うのを我慢させられ(罰ゲームもくすぐり)、その前は指先に着ける筆みたいなものでくすぐられ、その前はマッサージオイルを塗られてヌルヌルとくすぐられました。

 私をくすぐって、どうしたいのか……。

 今回は、どうやらラップを身体に巻いてのくすぐりがしたいとのことでした。

 私は自慢じゃないですが、くすぐりには相当弱いです。彼からは散々くすぐられてきましたが、一向に慣れることはなく、毎回いやというほど笑わされています。

 それでも我慢しているのは、彼のことが大好きだから。

「なあにそれ、変なの」

「ふふふ、拘束の一種だよ」

「ラップがもったいないよ」

「至極有用な使い途だと思うけど」

 そう言って、パンティ以外を脱いでベッドに横たわりをした格好の私の、乳房とお腹周りにぐるぐるとラップを巻いていきました。

 透明なミイラみたいな感じで、全くと言っていいほど動けません。胸とお腹、足先だけが彼に差し出されており、とてつもない不安感が襲ってきます。

 特にお腹。触られただけで笑っちゃいます。今、触られても抵抗できません。手で防ごうにも、ラップで太ももにぴったりと張り付けられて動かせません。

 私はいま、ただ笑うことしか出来ないーーそう思うと、少しゾクリとしました。

「じゃあ始めるね」

「あ、ちょっとまっ」

 彼が意地悪な顔をして、心の準備が出来ていない私の上にガバッと跨ってきます。しかしその勢いに反して、とても繊細なタッチで、おへそのそばにそっと指が着地し、は開始しました。

「あ、ん……あははは…………っ」

 私を笑わせるには十分すぎる刺激でした。

「あれ、もう笑っちゃうの?」

「あははっ、あっ、当たり前でしょっ」

 彼の指が、おへその周りを優しく撫でます。らすように、おへそに近づいたり離れたり。私が笑うたびに、お腹が痙攣するのが分かります。……自分のお腹ですから。

 それでも、私は抵抗することができません。ラップでぐるぐる巻きなのに、お腹部分だけが生身で、まるで"ここをくすぐって下さい"と言っているみたいです。

 以前、おもちゃの手錠のようなもので拘束されたことがありました。その時は、まだ可動域があって、刺激から少し逃れることができましたが、今回はただ、くすぐったさを甘受することしかできません。

 けっこう、つらい。

「あははははっ、あーっ、きゃははっだめっ」

 いよいよ本格的に笑い出してしまいました。彼の指が、おへそ周りからわき腹の方に移動して、こちょこちょと刺激を与えてきます。しかも耳元で、"こちょこちょ"と囁きながらくすぐられ、なんだか効果倍増です。

「舞美は本当にわき腹が弱いねえ」

 彼には、私の弱点を知り尽くされています。私も、自分の弱点を散々分からせられています。

 おへそからわき腹を何度も往復されて、弱いポイントに指が触れるとどうしても反応してしまい、それを察知した彼の指がそこに留まることになります。くすぐったい。

「あーっはっはっは……もうだめ、もうお腹やだ……あははははっはははっああん」

 それから親指でくりくりと円を描くようにわき腹を揉まれ、お隣さんに聞こえないか心配なくらいに笑いました。彼にとっては、ラップに護られていない柔らかい場所を揉んでいるに過ぎないのですがーー。

 今度は、乳房のわきに指が触れました。お察しのとおり、ここも私の弱点です。だからさらけ出されているのです。

「くふ……あははは」

 左右それぞれ5本ずつの指が、こしょこしょと乳房の外側~下側を動きます。少し気持ちいい感覚もありますが、やはりくすぐったさが勝ちます。

 ラップの隙間から露わになっている乳房が、くすぐったがる反応に伴いぷるんと揺れ、なんだか恥ずかしい気持ちになります。

「うふふふふ……あははっく……くふふ」

 私がもじもじと笑っていると、いきなり彼の右手が、お腹に戻ってきました。

「っ?!あははははっ!い、いきなりお腹ずるいっ、あはははっはっはっ……」

「ずるいことないだろ」

 彼は私の右側に移動して、右手でお腹を、左手で乳房をくすぐります。

 ひとしきり笑わせられたのち、残された約束の地、足の裏へと彼が移動します。

 足の裏だけは、本当に堪えられません。

「……っ、、、きゃはははっ足裏はっ!だめっ……もうあはははははっあっはっはっ」

 彼の指先が、足指の間を開いてこちょこちょしたかと思うと、今度は土踏まずのあたりを駆け回り、私は大笑いしながらバタバタと暴れます。

「あっははは、もう、足裏だけは、許してはははははっあははっ、あははは」

 かかとのあたりは少し強めに引っかかれ、と思うとふわふわとしたタッチで足の甲まで撫で上げられる。

 足の裏全体が、なにかくすぐったさのヴェールのようなものに包まれたような、形容し難い、不思議で辛くて甘い感覚。

「あははははははははは……」

 私はとうとう、毎度ほんとうに不思議なのですが、いつも通り、そのまま絶頂に達してしまったのでした。

**

「ごめん、やりすぎたかな?」

 彼が頭を撫でながら、私のそばで囁く。ううん、というと、嬉しそうに彼が笑う。それが可愛いとも思えます。

 明日はどんなふうにくすぐられるのでしょうか。

 少し、ほんの少しだけ楽しみになってきていることは、彼には秘密です。

fin.
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