あなたを愛していないわたしは、嫉妬などしませんよ?

ふまさ

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「……なるほどな。貧乏貴族の子息であるお前が、どうしてこんなことをしたのか疑問だったが──まさか、そんなことすら知らなかったとは」

 呆然とするダレルに、アルマンド伯爵は侮蔑の眼差しを向けた。

「そうでなくても、普通の頭ではこんな馬鹿なことはそうそう思いつかんし、まして実行しようとは考えんだろうがな」

 ダレルを問い詰めても無駄だと感じたバーサは、アルマンド伯爵に目線を移した。

「ア、アルマンド伯爵家は、資産家ではないですか。それがどうして、借金がある貴族の子息なんかと……」

 アルマンド伯爵は、ダレルとバーサを交互に見た。答える義理はない、と言ってもよかったのだが。

(ダレルに真実を伝え、いかに愚かな行為をしたかを、思い知ってもらうとするか)

 そう考え、アルマンド伯爵は口を開いた。

「昔、妻との旅行中、賊に襲われたことがあってな。むろん護衛はいたが、少し苦戦していた。そこに偶然通りかかったオリバー伯爵が、加勢してくれたのだ。いわば、私たちの命の恩人だな」

 アルマンド伯爵は、ダレルに視線を移した。

「むろん、それだけで大事な娘と貴様を婚約させたわけではない。オリバー伯爵は人格者だ。その息子ならと、思ったのだがな。まさかろくにアレクシアと会ってもいないどころか、こんな愚かな計画まで立てる屑だったとは。だがまあ、結婚する前に本性が知れたのは、不幸中の幸いか」

「……あ、あの。アルマンド伯爵……ぼく、は」

 ガタガタと小刻みに震えながら、ダレルがようやく顔をあげた。アルマンド伯爵は、憐れみの双眸を向けた。

「これで、財産分与も、むろん持参金もなしだ。オリバー伯爵は、アレクシアと貴様の婚約が決まったとき、泣いて喜んでいたものだがな。貴様のせいで、全てが白紙──どころか、逆に慰謝料を請求されるのだからな。オリバー伯爵家は、もう終わりだな」

「ち、父上が命の恩人だというのなら、そ、そんなこと、しません、よね?」

「アレクシアとお前を婚約させて時点で、借りはもう、なくなっている。オリバー伯爵も、了承済みだ」

 他に質問は。
 射るようなアルマンド伯爵の目に、ダレルもバーサも、反論などできるはずもなく。

 ただ、項垂れた。



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