あなたを愛していないわたしは、嫉妬などしませんよ?

 目の前で抱き合う、婚約者であるダレルと、見知らぬ令嬢。立ち尽くすアレクシアに向き直ったダレルは、唐突に「きみには失望したよ」と吐き捨てた。

「ぼくとバーサは、ただの友人関係だ。なのにきみは、ぼくたちの仲を誤解して、バーサを虐めていたんだってね」

 ダレルがバーサを庇うように抱き締めながら、アレクシアを睨み付けてくる。一方のアレクシアは、ぽかんとしていた。

「……あの。わたし、そのバーサという方とはじめてお会いしたのですが」

 バーサは、まあ、と涙を滲ませた。

「そんな言い訳するなんて、ひどいですわ! 子爵令嬢のあなたは、伯爵令嬢のわたしに逆らうことなどできないでしょうと、あたしを打ちながら笑っていたではありませんか?!」

「? はあ。あなたは、子爵令嬢なのですね」

 覚えがなさ過ぎて、怒りすらわいてこないアレクシア。業を煮やしたように、ダレルは声を荒げた。

「お前! さっきからその態度は何だ!!」

 アレクシアは、そう言われましても、と顎に手を当てた。

「──わたしがあなた方の仲を誤解していたとして、それがどうしたというのですか?」

「だ、だから。バーサに嫉妬して、だから、ぼくの知らないとこでバーサを虐めて、ぼくから離れさせようと……っ」

「そこが理解できません。そもそもそのような嫉妬は、相手を愛しているからこそ、するものではないのですか?」


 ダレルは、え、と口を半開きにした。


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