あなたを愛していないわたしは、嫉妬などしませんよ?

ふまさ

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「そこの子爵令嬢。貴様にも、むろん慰謝料は請求させてもらうからな。よくよく覚えておけ」

 アルマンド伯爵はそう吐き捨てると、踵を返し、屋敷に入っていった。

 残されたダレルとバーサは、しばらくその場から動けなかったが、アルマンド伯爵に命じられた使用人たちによって、門の外に放り出された。


 ──翌朝。

 二人が王都から出て行ったとの目撃情報が、アルマンド伯爵の元に届いた。それから数日後、身元不明の遺体の中に、ダレルとバーサが混じることになるが、二人を知る者がそれを知ることは、ついぞなかった。



「護衛もなしに王都の外に出るなど、自殺行為に等しい。どのみち、そうなる運命だったかもしれんがな」

 夕飯を食べ終えたアルマンド伯爵が、カップ片手に、肩を竦める。右斜めに座るアレクシアが、かちゃ、と、皿にナイフとフォークを置いた。

「けれど二人一緒に、ではなく、別々に王都を出て行ったのは、意外でした。どんな意図があったのでしょう」

「単に、愛がなかったのだろう。少なくともあのバーサとかいう女は、伯爵令息であるダレルだからこそ、付きあっていたのだろう。借金があるなど、夢にも思わずに。それを知ったとき、鬼のような形相をしていたからな」

「……そうですか」

 二人のやったことは、許せない。だが、せめて二人の間にぐらい、愛情はあってほしかった。そう思うのは、何故だろうか。

「……愛し合うお父様とお母様の子に生まれたわたしは、幸せ者ですね」

 ぽつりと漏らした言葉に、両親は、目を丸くした。

「何だ、突然」

「いえ。貴族は政略結婚が多いと聞きますので……つい」

 あら。アルマンド伯爵夫人が、くすりと笑う。

「わたくしとお父様も、政略結婚ですよ?」

「え? そうだったのですか?」

「ええ。ねえ、あなた」

 微笑みかけられたアルマンド伯爵が、まあな、と、照れ隠しのように一つ、咳払いをした。

「ね? 政略的なものだからといって、愛情がうまれないとは限らないでしょう?」

 アルマンド伯爵夫人が、慈しむように目を細める。アレクシアはどうしてか、目の奥が熱くなった。

「……今度、お父様とお母様がどのようにして愛し合うようになったのか、是非、聞かせてください」

 アルマンド伯爵夫人は、いいですよ、と笑い、アルマンド伯爵は、自室に戻る、と言い、食堂を出て行ってしまった。

 アレクシアとアルマンド伯爵夫人は顔を見合わせ、クスクスと笑い合った。


 

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