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なにも、見えない。でも、光は感じる。そんな感覚の中、声が響いてきた。
「ミアばっかエディをひとりじめして、ずるい!」
「そんなこと言わないの、ダリア。ミアも必死なのだから」
「だってぇ……ルシンダは、エディにだっこしてもらいたくないの? キスは?」
「ふふ、そうねぇ」
(聞いたことのある、名前……)
「……ダリア? ルシンダ?」
気付いたときには、名を呼んでいた。
「え? ミア、ダリアたちのこえ、きこえるの?」
「聞こ、える。あなたたちが、わたしの、別人格の子たち……?」
落ち着いた声が、そうよ、と答える。この人がルシンダ、とミアが耳で認識する。
「あの、ここはどこ? どうしてなにも見えないの?」
「──ここは、あたまのなかだよ」
朝の光に目を覚ましたエディは、隣で眠っていたミアが、寝台の上で上半身を起こしているのに気付き、おはよう、と声をかけた。
振り向いて小さく微笑む彼女に、昨日までとは違う印象を抱いたエディは、ルシンダかな、と胸中で呟き、自身も身体を起こした。
「エディ。わたし、ダリアとルシンダと、はじめてお話ししたんです」
でも、違った。目の前にいるのは、ミアだった。「話し?」と、繰り返すエディに、ミアは、はい、と答えた。
「それは、えと、きみの中で話したってこと?」
「エディは、わたしよりもずっと、わたしたちのこと、知ってくれているんですね」
嬉しそうに、ミアが頬を緩める。
「ダリアは、頭の中だと表現していました」
「……なるほど」
ダリアとルシンダと話したことで、落ち着いたのだろうか。そんな風に考えたとき、ミアが、少し待ってください、と沈黙した後、あの、と口を開いた。
「ダリアが、エディに甘えたいと言っているのですが……」
「それはもちろんかまわないけど。すごいな。こうして意識があるときでも、会話ができるようになったんだね」
ミアは一つ笑うと、目を閉じた。
──数秒後。
瞼を開けた彼女は、子どもっぽく、笑顔全開でエディに飛びついてきた。
「──エディ!」
「ダリア。数日ぶりだね」
「あいたかった。あいたかったよお!」
「僕もだよ」
抱き締めたダリアは、目に涙を浮かべていた。
「ミアばっかエディをひとりじめして、ずるい!」
「そんなこと言わないの、ダリア。ミアも必死なのだから」
「だってぇ……ルシンダは、エディにだっこしてもらいたくないの? キスは?」
「ふふ、そうねぇ」
(聞いたことのある、名前……)
「……ダリア? ルシンダ?」
気付いたときには、名を呼んでいた。
「え? ミア、ダリアたちのこえ、きこえるの?」
「聞こ、える。あなたたちが、わたしの、別人格の子たち……?」
落ち着いた声が、そうよ、と答える。この人がルシンダ、とミアが耳で認識する。
「あの、ここはどこ? どうしてなにも見えないの?」
「──ここは、あたまのなかだよ」
朝の光に目を覚ましたエディは、隣で眠っていたミアが、寝台の上で上半身を起こしているのに気付き、おはよう、と声をかけた。
振り向いて小さく微笑む彼女に、昨日までとは違う印象を抱いたエディは、ルシンダかな、と胸中で呟き、自身も身体を起こした。
「エディ。わたし、ダリアとルシンダと、はじめてお話ししたんです」
でも、違った。目の前にいるのは、ミアだった。「話し?」と、繰り返すエディに、ミアは、はい、と答えた。
「それは、えと、きみの中で話したってこと?」
「エディは、わたしよりもずっと、わたしたちのこと、知ってくれているんですね」
嬉しそうに、ミアが頬を緩める。
「ダリアは、頭の中だと表現していました」
「……なるほど」
ダリアとルシンダと話したことで、落ち着いたのだろうか。そんな風に考えたとき、ミアが、少し待ってください、と沈黙した後、あの、と口を開いた。
「ダリアが、エディに甘えたいと言っているのですが……」
「それはもちろんかまわないけど。すごいな。こうして意識があるときでも、会話ができるようになったんだね」
ミアは一つ笑うと、目を閉じた。
──数秒後。
瞼を開けた彼女は、子どもっぽく、笑顔全開でエディに飛びついてきた。
「──エディ!」
「ダリア。数日ぶりだね」
「あいたかった。あいたかったよお!」
「僕もだよ」
抱き締めたダリアは、目に涙を浮かべていた。
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