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「きみは、どうして妹に来てほしくないの?」
腰を落とし、同じ目線になりながら、エディは男の子に話しかけた。男の子は、目をぱちくりさせていた。
「……ぼくのはなし、きいてくれるの?」
「聞くよ。だって、聞かないと、きみが妹に来てほしくない理由がわからないからね」
「……パパもママも、はなしきかずに、いつも、ぼくがわるいっていうよ」
「それはつらいね」
「……うん。きのぼりしたらあぶないってぼく、ちゃんといったのに、ぼくのまねして、いもうとはけがした。そしたら、すごくしかられた。ごはん、たべさせてもらえなかった」
ジェマが背後で、息を詰まらせるのがわかった。
「いまも、いっぱいおてつだいしてやっとかってもらえたおもちゃ、こわされたんだ。おこったら、こんどはぼくが、ママにしかられた。いっぱいたたかれて……いもうとは、それみて、ないた」
「──そっか」
エディは、五つか、六つぐらいの女の子に視線を移した。
「きみは、お兄ちゃんが好き?」
女の子が、こくんと頷く。
「でも、きみのせいで、お兄ちゃんはパパとママに怒られたんだよ? お兄ちゃんは、なにも悪くないのに」
女の子が傷付いた表情をしたのを見て、ジェマは、ちょっと、と声を挟んだ。
「こんな小さな子に、そんな言い方しなくたってっ」
「この男の子も、小さいよ」
「悪いのは、この子たちの親でしょう?!」
「そうだね。だからと言って、その女の子になにも責任がないわけじゃない。きちんと教えて、叱るべきときは叱らないと、ろくな大人にならないんじゃないかな」
「……冷たいわね」
二人の雰囲気を察したように、男の子が、あの、と声を挟んだ。
「もう、だいじょうぶ。おにいちゃん、はなしきいてくれてありがとう」
おいで。男の子が、女の子を呼んだ。女の子が、嬉しそうに男の子に駆け寄る。
「……いいの?」
静かに問うエディに、男の子は、うん、と答えた。
「いもうとのこと、きらいなわけじゃないんだ」
「……きみは、すごいな」
「すごい?」
「すごいよ。大人より、よほどえらい」
へへ。男の子が「ほめられたの、はじめてだ」と、小さく笑う。その様子を見ていた女の子は、おにいちゃん、と呼びかけた。
「あのね、これから、ちゃんとパパとママにいうね。おこられるのこわくて、ないちゃって、なにもいえなくて、ごめんね」
男の子は目を丸くしてから、うん、と表情を緩ませた。
「……かえろっか」
それから男の子と女の子は、手を繋いで、その場を後にした。
腰を落とし、同じ目線になりながら、エディは男の子に話しかけた。男の子は、目をぱちくりさせていた。
「……ぼくのはなし、きいてくれるの?」
「聞くよ。だって、聞かないと、きみが妹に来てほしくない理由がわからないからね」
「……パパもママも、はなしきかずに、いつも、ぼくがわるいっていうよ」
「それはつらいね」
「……うん。きのぼりしたらあぶないってぼく、ちゃんといったのに、ぼくのまねして、いもうとはけがした。そしたら、すごくしかられた。ごはん、たべさせてもらえなかった」
ジェマが背後で、息を詰まらせるのがわかった。
「いまも、いっぱいおてつだいしてやっとかってもらえたおもちゃ、こわされたんだ。おこったら、こんどはぼくが、ママにしかられた。いっぱいたたかれて……いもうとは、それみて、ないた」
「──そっか」
エディは、五つか、六つぐらいの女の子に視線を移した。
「きみは、お兄ちゃんが好き?」
女の子が、こくんと頷く。
「でも、きみのせいで、お兄ちゃんはパパとママに怒られたんだよ? お兄ちゃんは、なにも悪くないのに」
女の子が傷付いた表情をしたのを見て、ジェマは、ちょっと、と声を挟んだ。
「こんな小さな子に、そんな言い方しなくたってっ」
「この男の子も、小さいよ」
「悪いのは、この子たちの親でしょう?!」
「そうだね。だからと言って、その女の子になにも責任がないわけじゃない。きちんと教えて、叱るべきときは叱らないと、ろくな大人にならないんじゃないかな」
「……冷たいわね」
二人の雰囲気を察したように、男の子が、あの、と声を挟んだ。
「もう、だいじょうぶ。おにいちゃん、はなしきいてくれてありがとう」
おいで。男の子が、女の子を呼んだ。女の子が、嬉しそうに男の子に駆け寄る。
「……いいの?」
静かに問うエディに、男の子は、うん、と答えた。
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「……きみは、すごいな」
「すごい?」
「すごいよ。大人より、よほどえらい」
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「あのね、これから、ちゃんとパパとママにいうね。おこられるのこわくて、ないちゃって、なにもいえなくて、ごめんね」
男の子は目を丸くしてから、うん、と表情を緩ませた。
「……かえろっか」
それから男の子と女の子は、手を繋いで、その場を後にした。
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