惚れた弱みにも、限度がありました。

ふまさ

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「この扱いはなんですか? いくらなんでも酷すぎます!」

 頭をあげたパスカルが、ゴンザレス子爵に抗議するが、ゴンザレス子爵の「──死にたいのか」との冷たい声色に、ぴたっと反射的に動きを止めた。

「お前はもう、貴族令息ではない。ただの平民だ。そのお前が、子爵である私に怒鳴り、あげく己に非があるにもかかわらず伯爵令嬢のマーシアに謝罪をしろなどと、自害に等しい」

「? ぼくは父上の息子ですよ?」

「つい先日まではそうだったさ。だが、お前の除籍手続きはすでに完了している。だからもう、お前は私の息子ではない」

 理解が追いつかないのか「除籍? ゴンザレス家からってことですか?」と、パスカルが頭に大量の疑問符を浮かべる。

「そうだ。それぐらいは理解できたようで、よかったよ」

「理解? 理解なんてなにもできていませんよ。きちんと説明してください」

 ゴンザレス子爵はこめかみをぴくりと動かし、苛立ちをおさえるように腕を組んだ。

「──パスカル。お前はマーシアを裏切り、婚約中の身でありながら、他の女と不貞行為をし、その現場を他でもない、マーシアに目撃された。使用人たちの証言もとれている。これはもう、疑いようのない事実だ」

「……それで除籍? 息子のぼくの言い分を、なにも聞きもしないで?」

「言っておくが、これはマーシアの温情だ。マケラ伯爵は、もっと重い──私たちゴンザレス家にも罰をと憤慨していたが、マーシアがそれを止めてくれた。責任を追うのは、お前だけでよいと」

 婚約破棄に、除籍。唐突に付けつけられても、パスカルはいまいち、実感がわいていなかった。

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