どうやら、我慢する必要はなかったみたいです。

ふまさ

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 ──一方。

 すっかり男性不信になってしまったクラリッサは、将来への不安を抱えていた。貴族令嬢として、いずれ結婚しなくてはいけないことは頭では理解しているが、心が怯える。

 それでも両親から、次からは、なにかあったらすぐに相談しなさいとの言葉に励まされ、モンテス伯爵に紹介された、とある伯爵令息とのお付き合いをはじめる。

 吐かれる言葉はすべて嘘ではないのか。疑い、目も合わせられないクラリッサに、両親からあらかじめなにか聞かされていたのか、相手の伯爵令息は、辛抱強く、優しく、クラリッサが少しずつ心を開いてくれるのを待ってくれた。

 かわいいね。優しいね。頑張ったね。

 ベイジルのときとは違い、新しい恋人の伯爵令息は、クラリッサを肯定し、褒めてくれた。

 それでも。ベイジルも最初は優しかったから、疑った。そんな自分が嫌になったけど、少しずつでいいよと笑ってくれたので、泣きそうになった。



 ──五年後。

 本日、クラリッサは結婚する。毎月振り込まれる慰謝料という名のベイジルの給金は、持参金の足しにした。五年経ったいまも、ベイジルは変わらず、使用人として働いているらしい。

 ベイジルには二度と会いたくない。でも、少しだけ、現在の自分の姿を見てほしいという気持ちもあった。

「綺麗だよ、クラリッサ」

 愛しい婚約者が、言葉をくれる。クラリッサはもう、それを疑うことはない。

「ありがとうございます」

 綺麗に微笑むクラリッサを、ベイジルが見たらどんな反応をするのだろう。相変わらず魅力がないと、蔑むのだろうか。
 
 くすり。
 過去を振り返っても、笑えるまでになった。そんな自分が、誇らしい。

(ごめんなさい、ベイジル。わたし、幸せになりますね)

 窓から澄んだ空を見上げてから、クラリッサは純白のドレスを翻し、大好きな婚約者の唇に、そっと自身の唇を重ねた。

                         
           
             ─おわり─

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