あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。

ふまさ

文字の大きさ
22 / 35

22

 あれから、数日が経った。コスタ伯爵の元に向かった執事はまだ帰ってきておらず、家からの連絡もない。落ち着かなくて、待っていられなくて。執事を追いたいと願い出たが、使用人たちは聞く耳を持ってくれず。オーブリーはただ、待つことしかできずにいた。

 従者から話を聞いた使用人たちとは、必要最低限の会話しかしていない。できないのだ。オーブリーがいつも通りに話そうとしても、使用人たちが取り合わなくなってしまった。

 きっと。執事と同じく、みんなもミラベルが好きだったから。

 屋敷でも学園でも孤立し、唯一ともいえる話し相手は、マルヴィナだけ。そのマルヴィナとの会話は、気を使うし、常に見下してくるから気分も悪いし、正直、心が疲れ切っていた。

(……こんなはずじゃなかった)

 何度思ったことだろう。そもそも、マルヴィナの提案を受け入れたのは、相手の望むかたちが、愛人だったから。ミラベルと別れずに、美しい人を手元に置いておけると思ったから。なのに、つい流れで、婚約者として付き合うことになってしまった。

(……やっぱりあのとき、もっとよく考えて行動すればよかったな)

 金遣いが荒く、わがままなマルヴィナ。街ではたまに、マルヴィナの美しさに振り返る男たちがいる。そういうときは誇らしい気持ちにもなるし、付き合えてよかったと、一瞬は思える。でも、学園では誰もマルヴィナの美しさに見惚れない。どころか、距離をとられるしまつ。

「男好きで、性格も難がある、かあ……」

 誰にも聞こえないよう、廊下を歩きながらぽつりと呟いてみる。俯くオーブリーの耳に、複数の笑い声が響いてきた。

 顔を上げると、ミラベルが数人の学友と笑いながら、ちょうど曲がり角を曲がってくるのが、オーブリーの視界の先に入った。

(笑ってると、そこまで不細工じゃないんだな……)

 無意識に。そんな身勝手なことを思いながら、気付いてくれと、じっと視線を送ってみる。

 すると。

「──あ」

 こちらに気付いたのか。ミラベルが、オーブリーの方に顔を向け、薄く頬を赤く染めた。

あなたにおすすめの小説

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。 「さっさと死んでくれ」 フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。 愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。 嘘つきな貴方なんて、要らない。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 11/27HOTランキング5位ありがとうございます。 ※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。 1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。 完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

もう演じなくて結構です

梨丸
恋愛
侯爵令嬢セリーヌは最愛の婚約者が自分のことを愛していないことに気づく。 愛しの婚約者様、もう婚約者を演じなくて結構です。 11/5HOTランキング入りしました。ありがとうございます。   感想などいただけると、嬉しいです。 11/14 完結いたしました。 11/16 完結小説ランキング総合8位、恋愛部門4位ありがとうございます。

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

【完結】あなた方が後悔しても私にはどうでもいいことです

風見ゆうみ
恋愛
チャルブッレ辺境伯家の次女である私――リファーラは幼い頃から家族に嫌われ、森の奥で一人で暮らしていた。 私を目の敵にする姉は、私の婚約者や家族と結託して、大勢の前で婚約を破棄を宣言し私を笑いものにしようとした。 しかし、姉たちの考えなどお見通しである。 婚約の破棄は大歓迎。ですが、恥ずかしい思いをするのは、私ではありませんので。 ※アナグラムが気になる可能性がありますのでお気をつけくださいませ。

彼女は彼の運命の人

豆狸
恋愛
「デホタに謝ってくれ、エマ」 「なにをでしょう?」 「この数ヶ月、デホタに嫌がらせをしていたことだ」 「謝ってくだされば、アタシは恨んだりしません」 「デホタは優しいな」 「私がデホタ様に嫌がらせをしてたんですって。あなた、知っていた?」 「存じませんでしたが、それは不可能でしょう」

あなたに未練などありません

風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」 初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。 わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。 数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。 そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。