悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。

ふまさ

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「これ以上学園をお休みしたくないので、早く済ませるとしましょう──パーシー」

「な、なんだい?」

 ただ事ではない空気に、パーシーがぴんと姿勢を正す。カーラは、何の迷いもなく、するりと口火を切った。

「あなたとの婚約は、破棄させてもらいます」

「──は? え?」

 まぬけに口を半開きにするパーシーにかまうことなく、カーラは続けた。

「お父様とおじさま──ペトロフ伯爵にはもう、全てを伝え、婚約破棄も了承してもらっています。正式な書類も、もう作成してもらいました。両家の署名も済ませています」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! どうして突然そんなこと……っ」

「それで、ですね。あなたにも、署名してもらいたいものがありまして」

 カーラが目配せすると、カーラ付きの侍女が一枚の紙をパーシーの目の前のテーブルに置いた。

「どうぞ、内容のご確認を。それに署名してもらえれば、わたしはこれで失礼します」

 パーシーは紙には目もくれず、カーラに詰め寄った。

「婚約破棄だなんて、悪い冗談はやめてくれ!」

「冗談などではないですよ」

「嘘だ! だってぼくは、きみを愛している。きみも、ぼくを愛している。婚約を破棄する理由がない!!」

 パーシーが必死に訴えるも、カーラは無表情だ。

「──心当たりはないと?」

「……ない! あるとすれば、アデル先輩しかないけど……あれはいわば、慈善活動だ。ペトロフ伯爵家だけでなく、きみの家の評判もきっとあがる。だからぼくは……っ」

「そんなことにはなりせんよ。どころか、おそらくは逆でしょう」

「それは、探偵が調べたというあれのことか? あんなこと、あり得るわけがない!」

 カーラは、呆れたように一つ、ため息をついた。

「……パーシー。わたしは、あなたが不貞行為を行ったあのときにはすでに、あなたへの愛情はなくなっていたのですよ」

 カーラの言葉に、パーシーは目を見張った。

「そ、そんなわけない。だってきみは、ぼくを許すと言ってくれたっ」

「それはですね。ペトロフ伯爵たちが──あなたのお父様とお母様が、わたしのような小娘に、頭を下げてくださったからですよ。どうか、パーシーを見捨てないでやってほしい。息子には、きみのような頼りになる女性と一緒になってほしいと」

 パーシーは「……父上、たちが?」と、ペトロフ伯爵にゆっくりと顔を向けた。ペトロフ伯爵は右手で顔を覆い「──この馬鹿息子がっ」と吐き捨てた。

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